ブラジルの初夏の風物
サンパウロ、 伊東宏

ブラジルのお盆は11月2日であるが、例年この頃は暑い季節である。
本当であれば毎日のように夕立が涼しさをもたらす、夏の気候でなければならない。ところ
が、今年は異変で一向に暑くならないどころか、今年、還暦を迎えた老夫婦は電気毛布を
入れて寝るしまつである。不景気が一段と厳しく、それにともない治安も最悪の状態となっ
た。十年ほど前にこの地に墓を買い求め、子孫をこの国に委ねることになんの躊躇もな
く、こよなく愛してきたこのブラジル。渡伯以来初めてこの国に一抹の不安を感じ始めた。
ところが、この薄ら寒い気候と打ち沈んだ心を励ますように、教会の庭に今年初めて「イン
コ芭蕉」が花を付けた。それはいかにも南国的な原色で、見るもの心を明るくする。いくら
眺めていても飽きない。「インコ芭蕉」とは俳句を嗜む方から教わった。この花の正式名は
知らない。歳時記で調べてもないので、ブラジルの俳人が名ずけたものであろう。
しかし、見事な名付け方であると感心した。
「インコ芭蕉 群れ立たんとして五羽六羽 瞳」
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