原子力発電とユーカリ
- 21世紀の日伯関係構築の可能性 -
森田 左京
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20世紀の日伯関係は、1908年の笠戸丸に始まる農業移民中心の移住が戦後まで続いたが、60年代からはナショナルプロジェクトや民間の企業進出により、その経済関係は最盛期を迎えた。しかし70年代の石油危機への対応を誤ったブラジル経済が、債務危機に陥り、外資の撤退が続いた80年代はブラジルにとっては「失われた10年」だった。さらに、90年代はバブル後遺症に悩む日本の「失われた10年」となり、合計20年のブランクが生じた。この間、日本の関心が身近なアジアに向けられたことは無理もないことだった。
94年に始まったレアル計画によりインフレは収束し、ブラジルにおける投資機会を認めた欧米諸国は、政府系企業の民営化に積極的に参加し、金融・電力・輸送などの分野における陣取りははぼ終わった。企業進出も盛んで、南米の旧宗主国であったスペインとポルトガルの投資は、コロンブス以来の「ラテンアメリカ再発見」とまで言われている。
日本もようやく重い腰を上げたようである。経団連が作成した『「21世紀に向けたアライアンス」構築のための日本側提言』を読む機会があったが、これは今年11月にブラジルで開催される日伯合同経済委員会でCNI(ブラジル工業連盟)側の提案と擦りあわせて共同提言とし、両国政府に提出されるとのことである。読後の感想としては、正直なところ少しがっかりしている。本誌先月号の編集余録に、「これではブラジルと日本の将来は真っ暗といったことでしょうか」というブラジルに詳しい日本の経済記者のコメントが紹介されていたが、日本側は最初から腰が引けているような感じ受けた。
1992年リオで開催された地球環境サミットから8年が過ぎた。1997年には京都でCOP3が開催され、日本が議長国をつとめて、最大の山場ともいえる京都議定書が採択された。今年11月には、オランダのハーグでCOP6が開催され、CDM(クリーン開発メカニズム)などの細部の取り決めが行われることになっている。リオ・京都・2000年と地球環境問題との関連からも、経団連の提言には地球環境について触れられているのではないかと期待したが、環境という言葉は「事業環境の整備」にしか使われていなかった。とくに抵抗を感じたのは「治安の改善は日本企業の進出の前提として必須である」という部分である。必須とは「必ずなくてはならないこと」である。ブラジルに住んでいるものの実感として、現在ブラジルでの治安の悪さはまさに日々の生活の上で最大の問題であり、心から改善を望んでいるものの、当分状況の好転は期待できそうもないことも覚悟している。治安の問題は日本人や日本企業を狙い打ちするわけではなく、欧米企業にとっても事故が発生する確率は同じである。「進出の前提として必須」ということは、進出しないということの裏返しではないだろうか。
日伯関係を考えるとき、当然のことながら1位と2位の連合などというものではなく、双方が利益を得る補完関係でなければならない。日本とブラジルの間で補完できるものを見つけることが先決である。私はブラジルが持つ圧倒的なメリットは「土地・太陽・水」だと思っている。日本と比較すれば、国土は23倍、赤道を跨いで熱帯・亜熱帯・温帯に広がっていることは太陽のエネルギーをたっぷり受けていることになる。水に関しては日本も瑞穂の国と称したように、水稲が実るのに十分な水に恵まれてはいるが、所詮は面積が小さい。世界地図をみれば容易に分かることだが、降水量が1,000ミリ以上の地域は地球上でそれほど多くはない。赤道アフリカの西部、東南アジア、米国の東南部などに限られているが、ブラジルは東北地方の一部を除いて、アマゾン河、トカンチンス河、パラナ河流域はすべて1,000ミリ以上、場所によっては2,000ミリを越える降雨がある。この降水量と面積の積である水量(Annual Renewable Water Resources)は年間7兆トンと世界一で、以下ロシア(4.5兆トン)、カナダ(2.9)、インドネシア(2.84)、中国(2.83)、米国(2.5)が続いている。因みに日本は0.43兆トンである。これだけ広い土地に恵まれ、気温と水の条件が揃えば、植物の成長に適しているのは当然であり、本稿の題であるブラジルの「ユーカリ」との関係が浮かんでくる。
一方、「原子力発電」であるが、9月中旬のNHKのニュースで、「年間3億トンの二酸化炭素(CO2)を排出する電力業界では、99年度のキロワット時(kWh)当りのCO2排出量が5年振りに前年比10グラム増えて370グラムになった。これは99年7月敦賀原発の大量冷却水漏れで原発を停止し火力発電で補ったため。京都議定書に対応するため300グラムを目標に下げようとしている。しかし原発立地が困難であり2005年には400グラムに達するかもしれない」と伝えていた。地球温暖化に関する情報では、排出量に二酸化炭素(CO2分子量44)と炭素(C原子量12)を使う場合があり、本稿では炭素Cの量に統一する。そのためには、二酸化炭素の重量を3.67(44÷12)で割ればよい。
従って、3億トンは8200万トン−Cであり、370グラム、300グラム、400グラムの二酸化炭素はそれぞれ100グラム−C、82グラム−C、109グラム−Cとなる。
370グラム−Cに対して8200万トン−Cであるから、目標値300グラム−Cでは比例して6640万トンに減らなければならないところ、逆に400グラム−Cとなり、電力業界の炭素排出量は8940万トン−Cと、目標値より2300万トンも増えてしまうということである。
どうして電力業界が炭素の排出が増えることを心配するかというと、空気中に二酸化炭素が増えることにより、地球の温暖化が進むからである。地球の大気には二酸化炭素をはじめメタンや亜酸化窒素などの温室効果ガスが含まれている。温室効果ガスは太陽光線で暖められた地球が遠赤外線として地球の外に放熱するのを妨げる作用がある。もし温室効果ガスがなければ、地表の平均気温はマイナス18℃の氷の世界でとても住めたものではない。ところが、温室効果ガスのおかげで平均気温はプラス15℃となり、人類が生活できることになる。産業革命以前、人間が化石燃料を利用しなかった時代、大気中の二酸化炭素の濃度は280ppmv(1ppmvは容積で100万分の1)で安定していた。しかし現在では360ppmvに達し、さらに増加が続いている。最大の原因は人類が石炭・石油・天然ガスなどをエネルギー源として燃やしたり、開発のため森林を伐採・焼却することで、大気中に二酸化炭素を排出するためである。
現在地球上の人類60億人が、化石燃料を消費して、毎年60億トンの炭素を排出している。一人平均1トン−Cになる。この大気中の二酸化炭素は陸上の生物や海面表層から吸収されるが、30億トン以上が大気中に残って濃度を増加させている。科学者の予測によれば、2100年には平均気温が3.5℃上昇するそうで、北半球でいえば、平均気温1℃の上昇で等温線は150km北に移動するとのことであるから、3.5℃では550km、函館が現在の東京並みになり、東京は種子島程度の気候になるわけである。植物が気候変動に対応できる限度は10年間に0.1℃といわれるから、日本の植生もすっかり変わって、東京の花見は大島桜、染井吉野は北海道ということになるかもしれない。さらに地球上の氷が融けて海面が上昇し消えてなくなる国もでてくる可能性もある。
80年代後半から地球温暖化問題に対する世界的関心の高まりを受けて、92年5月、気候変動枠組条約が採択され、その翌月リオデジャネイロで開催された国連環境開発会議で署名のため開放された。そして同条約は、94年3月に発効した。同条約のもとで開催された温暖化防止京都会議(COP3)は、97年12月11日、京都議定書を採択した。
この概要は目標年次を2008−2012年、基準年を1990年とし、温室効果ガスを先進国全体で基準年より少なくとも5%削減。国別では、日本6%、米国7%、EU8%を削減(90年比)することになっている。植林などの吸収源の増減を目標達成のため勘案することとしたが、詳細取り決めについては、今年のCOP6まで先送りされている。柔軟性については、@先進国間排出権取引の導入。先進国間で数量目的を「排出権」として取引できる仕組み。A先進国間共同実施の導入。先進国で温室効果ガス削減のプロジェクトを行った場合、そのプロジェクトに伴う削減量を譲受できる仕組み。Bクリーン開発メカニズム(CDM)の導入。温室効果ガス削減プロジェクトについて、その削減量と、一定の認証手続きを経て譲受できる仕組み、などが決められた。
京都議定書はまだ各国により批准されておらず、発効にに至っていないが、日本の炭素排出削減を、ブラジルで植林することで実施する可能性を検討することは無駄ではないと思う。最初に日本が必要とする削減量を見てみよう。
年度
二酸化炭素排出量(炭素換算) 90年比増加率
(1)
1990年度実績 3.07 億トン
(2)
1995年度実績 3.32 億トン
8%
(3)
2010年度推定 3.69 億トン
20%
(4) 2010年時点目標値 2.89 億トン
−6%
(5) 2010年削減量推定 0.80 億トン
特に手を打たない場合、2010年までに (3)−(4)の8,000万トンも炭素の排出量が増えてしまう可能性もあるわけで、日本はこの目標を達成するために、省エネ、新エネルギー、原子力発電の推進、また国土の3分の2を占める森林による炭素の吸収などを予定しているが、いずれにしても多大な努力を求められることは明らかである。
今年2月中部電力が三重県に建設を予定していた芦浜原発(2×135万キロワット)の計画を断念した。中部電力としては270万キロワットの発電所を建設するために、代りの原発予定地が見つかればよいが、原発反対の声が強ければ、火力発電を選択しなければならない。その場合二酸化炭素の排出がもっとも少ない天然ガスを燃料とすると、270万kWの設備で稼働率90%とすると年間発電量は213億kWhとなり、kWh当りの炭素排出量に電気事業連合会のデータから、138グラム−C/kWhをかけると、294万トンの炭素を排出することが分る。燃料に石油を使うと炭素の排出量はさらに36%、石炭であれば78%も増えることになる。電力会社としては、原子力は炭素排出の問題はないが立地が難しく、化石燃料を使うと炭素排出の問題が出てくるという悩みを抱えている。
ブラジルでユーカリを植林した場合、どの程度の炭素が固定できるかの実績を示す。1ヘクタール当り年間の成長は35−55層積m3(層積m3は丸太を積み上げたときの容積)で、低い方の数値35層積m3を使うとこれは20ソリッドm3となる。これの絶対乾燥重量(BDT)が10トン、さらにこの中に固定されている炭素の重量は5トンとなる。次に炭素固定のコストを試算してみる。ブラジルのユーカリ植林のローテーションは
植林 − (7年間) − 伐採/萌芽更新 − (7年間) − 伐採/改植
の繰り返しである。投資額は先ず土地取得に1,000ドル、最初の植林に1,000ドル、さらに14年間にわたって保育コストとして年100ドルとすると、投資合計は3,400ドルである。土地および当初植林の2,000ドルを金利年5%で14年間に割り振ると、年間202ドルとなる。これに保育の100ドルを加えると302ドル。これで5トンの炭素が固定できるので、炭素の固定コストはトン当り60ドルとなる。5トンはユーカリの成長実績の低い数値を採ったが、7トンであれば固定コストは43ドルとなる。14年目以降は土地は償却済みとなっているので、固定コストは当然下がってくる。ヘクタール当り
5トンの場合40ドル、7トンだと29ドルとなる。さらに、伐採した木材は、建材、パルプ原料あるいはバイオマス燃料として売却すれば、その収入が期待でき、上記のコストはさらに下がることとなる。
私は地球温暖化対策の本命は、省エネや風力・太陽光発電などCO2を排出しないのがベストであり、それでも削減目標に達しない場合は植林によるCO2の吸収・固定に頼るべきだと考えているが、このほかに地中貯留と海洋処理という方法もある。地中貯留とは、もともと石油や天然ガスが地中にあったとき地下トラップ(封塞構造)に閉じ込められていた。トラップとは間隙率が高く浸透性の良い貯留岩の上方をキャップロック(帽岩)が覆っていて、地下水よりも比重の軽いガスや油は逃げられない地質構造になっている。ここに二酸化炭素を分離して閉じ込める方法である。海洋処理は二酸化炭素が常温でも約70気圧で液化するので、低温・高圧で海洋の中深層に押し込んで海水中に閉じ込めようとするものである。「二酸化炭素と地球環境 利用と処理の可能性」(大前巌著・中公新書)によれば、天然ガス複合発電でCO2を回収して地中貯留または海洋処理した場合、回収処理しないベースケースの発電コストに対し、処理コストは3.4−4.4円/kWhの上乗せになっている。ブラジルにおけるユーカリ植林での炭素吸収に比べると、かなり高価な処理システムとなる。
植林で炭素を吸収・固定した場合、kWh当りの固定コストの試算を表にしたものを示す。これは、天然ガス火力発電で、稼働率が90%、ヘクタール当りの固定コストは前述の数字、為替レートは110円/ドルを使った。
固定コスト
円/kWh
1−14年
15−28年
5トン/ヘクタール
0.92
0.61
7トン/ヘクタール
0.66
0.44
地中貯留・海中処理
3.4
− 4.4
仮に、ガス火力の発電コストが 3ー 6円/kWh、原子力が 9−
11円/kWhとすると、もっとも高いガス火力ともっとも安い原子力の発電コストの差は
3円である。日本でのガス火力発電と、それにより排出される炭素をブラジルのユーカリ植林で吸収・固定する組合わせの場合、コストとしては原子力より経済的であることが分る。100万キロワットの火力発電所を運転すると、年間約100万トンの炭素を排出することになる。これを植林で吸収・固定するために、ブラジルのユーカリを使うと、1ヘクタール当り年間で5トンの炭素を固定できるので、20万ヘクタール(2000平方キロ)の植林が必要となる。2000平方キロはほぼ東京都、大阪府や沖縄県の面積であるから、日本でこのような植林をして炭素を吸収することが不可能なことは明らかである。今年ブラジルはポルトガルによって発見されてから500年を迎えるが、世界自然保護基金(WWF)によれば、この間に当時の自然環境の37%を失ったとのことで、砂糖きび・コーヒーなどのプランテーションや牧場の造成などのために広大な森林を伐採し、その面積は275万km2に達するとしている。ブラジルで10万km2(1千万ヘクタール)の植林を実施しても、かって伐採した森林の4%足らずをもとの状態にもどすに過ぎない。笠戸丸以来の日本移民も開拓と称して原生林を伐採してきたが、地球環境問題に直面してその方向が変わったといえよう。1千万ヘクタールのユーカリ植林で、少なくとも年間5千万トンの炭素を吸収・固定でき、絶対乾燥重量で1億トンの木材が得られる。前に述べたように、日本が2010年までに必要とする削減量は年間8千万トンに達するケースも考えられるが、その対応策としてブラジルでの植林は真剣に検討するに値する計画だと考える。
以上は日本側からみたユーカリ植林による炭素固定の可能性を述べたものであるが、一方のブラジルのとってのメリットは何だろうか。経団連の提案にも述べられているように、現在ブラジルにとってもっとも懸念される社会問題は治安である。とくに機械化など農業の近代化により農村で職を失った農民が「土地なし組織」となって都市に流入し、不法占拠を繰り返し、これに対して政府は陸軍を出動させることを含む暫定措置令を公示するなど対立が高まっている。1975年から95年までの20年間に、農村人口は4000万人から3600万人に減っている。一方、都市人口は6800万人から1億2600万人へと5800万人も増大した。都市のインフラ整備も間に合わず、失業者・浮浪者・貧民窟があふれ、犯罪が多発してきている。政府は農村においては土地を与えているが、土地だけでは食べてはいけない。安定した雇用に対する展望がなければ、この問題が片付かないのは当然である。土地なし農民の多くが未熟練労働者であり、都市では簡単に仕事にありつけない。これらの土地なし農民を植林事業に振り向けられると、かなりの雇用機会が生まれてくる。仮に20ヘクタールの植林地につき、その保育のために一人の雇用が創出できるとすれば、1千万ヘクタールでは50万人に職を与えられる。家族を含めれば200万人以上が定住できることになる。定住できなければ子女の教育問題も解決できず、将来に禍根を残すことになる。現在ブラジルには年間約200億ドルの海外からの直接投資が行われいるが、その多くが金融、通信、電力などの分野で、その雇用に対する影響は底辺層にまで及んでいないのが事実である。大規模な植林事業はブラジル政府にとって社会問題解決のための大きな救いとなることは疑う余地もない。もともと、ユーカリはオーストラリアから英国人により蒸気機関車の燃料を目的として持ち込まれたが、それ以降、製鉄における利用を経て、現在ではパルプ産業用としてのユーカリ植林事業はブラジルに定着しており、この確立された技術を活用すべきことは当然である。
地球環境問題に関連してCDMを使ってでも炭素固定を実施せざるをえない国は多い。京都議定書で削減義務を負っていないアジア諸国でも、その急速な経済成長により1997年の人口一人当りの炭素排出量は日本を上回っている国もある。いずれも1988年から1997年の9年間に2倍以上の炭素を排出し、その増加量は韓国が6300万トン、台湾が3200万トン、シンガポールが
1100万トンである。この3ヶ国の合計で1億トンを超えている。韓国はすでにOECDのメンバーであり、他の二国も一人当たりGDPでは韓国を凌いでいる。これらの国もフリーライダーを決め込むわけにはいかず、その国土も狭隘であり、いずれ植林による炭素固定に頼ることになれば、ブラジルへのアプローチも始まるのではないだろうか。後述するセニブラでの経験を活用すれば、日本がリーダーシップをとる環境外交も期待できよう。
1950年代から70年代にかけて、日本の対ブラジル投資は極めて積極的であり、ウジミナス(製鉄)、リオドセ社の対日鉄鉱石輸出、アルブラス(アルミ精錬)、セニブラ(パルプ),ツバロン製鉄、セラード農業開発などの大型プロジェクトが次々と実現していった。その結果、1990年末の対伯投資残高は米国、ドイツに次いで3位を占めていた。90年代になって欧米の対伯投資が再開されたが、日本のプレゼンスは影の薄いものとなり、今ではスペイン、オランダ、ポルトガルなどのEU諸国にも追い越されてしまっている。最近、日伯経済関係の再活性化を図ろうという声が聞かれるようになったが、以前のような冷戦時代の開発投資の時代に戻るとは思えない。かって戦略物資と考えられていたものも、現在はコモディティーになってしまった。このような状況では、21世紀の人類にとって最大の課題である地球環境問題に関する案件が、日伯関係再活性化の鍵となるのではないだろうか。とくに炭素固定では、気体が拡散する性質により、事業結果の輸送コストはゼロであるから、日本とブラジルの関係で地理的に不利であった距離の問題がなくなる。大規模な植林事業により今後日本とブラジルの真の相互補完的関係が生まれるものと考える。
日本のパルプ業界はセニブラを通してブラジルにおけるユーカリ植林に確固とした実績を持っている。同社は1973年に日伯紙パルプ資源開発(株)とブラジルのリオドセ公社(当時)の合弁として設立され、株主構成は日本側48.5%、ブラジル側51.5%となっている。現在11万ヘクタールの植林地で年間1.5万ヘクタールの植林をおこない、年産80万トンのパルプを生産している。もしも日本がCDMの一環としてブラジルでユーカリ植林による炭素固定事業に取組むなら、セニブラの持っている技術・経験は極めて貴重なものとなる。1997年にリオドセ公社は民営化されたが、最近の当地の新聞によると、リオドセ社はセニブラの持株を売却する意向で、すでに国内3社と海外8社に買収プロポーザルの提出を求めたと伝えられている。同社の資産総額は13億ドルと評価されているから、半分で約700億円となるが、地球温暖化問題に関して日本が大規模な植林事業を推進するのであれば、是非残りの株を取得して100%日本の企業として橋頭堡を残してもらいたいものである。この小論で説明したように炭素固定を目的とする場合、その植林面積は、パルプ原料確保を目的とする企業の植林面積と比べると一桁も二桁も規模が大きくなる。従ってパルプ業界にだけ任せる問題ではなく、国としての戦略的な方針を確立した上でブラジルとの交渉に臨むべきだと考える。
以上
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