<出稼ぎ高齢者の見た日本>一世13人に1人就労 - 少なくとも7千人訪日 (4) 10月20日(土)付けニッケイ新聞より転載 この健康診断は、通常のそれと違って、就労先の日本企業からの要請でデカセギ希望者が受診する。医者に「数年間の労働に耐えられる程度の健康状態であるかどうか」を証明してもらう、という性質のものだ。 一九九〇年の統計では、受診者約一万人中の九%が一世だ。年毎に比率は六〜九%の間で変動する。二・三世の半分は他の病院で受診しているので、最小値六%の半分、三%を一世の全体比率と仮定した。 つまり、訪日するデカセギの九七%がブラジル国籍者の二・三世で、三%が日本国籍の一世ということになる。この比率を日本に滞在するデカセギに当てはめてみよう。 法務省入国管理局の平成十三年付け統計資料によれば、一九九九年の在日ブラジル国籍者数は約二二万五千人だ。ブラジル国籍者と日本国籍者(一世)の比率は九七:三なので、九七%=二二万五千人とすると、三%は七千人になる。入国管理局の把握するブラジル国籍者二二万五千人に加えて、実は、七千人の一世デカセギが就労しているわけだ。 では、この七千人は、ブラジルの移民社会の何%に相当するのだろうか。 『平成十二年版海外在留邦人数調査統計』(外務大臣官房領事移住部領事移住政策課)によれば、同年のブラジル在留永住者数は七万六七四七人だ。これは総領事館に届け出している人だけの数字なので、実態とは少し異なる。少なくもその数字の一割以上は届け出してないと思われるので、一割増しして八万四四〇〇人とする。これが移民社会の推定実数人口だ。 ということは、八万四四〇〇人のうちの、七千人がデカセギしていることになる。これは八%に当たる。十三人に一人だ。その一年間だけで、少なめに見積もって、それだけの割合の一世がデカセギしている。 少々乱暴な計算だが、目安にはなるだろう。 サンパウロ人文科学研究所の宮尾進・所長は、この数字を見て「まあ、妥当な数字だろう。ずいぶん控えめな感じだが」とし「少なくとも一万人は行っていると思っていた」と付け加えた。 もちろん、年毎に入れ替わりがあることを考えれば、「少なくとも、十三人に一人以上はデカセギに行っている」と言えるのではないだろうか。 同援協の具志堅茂信・事務局次長によれば、デカセギ・ブーム最盛期の九〇年代初頭、六十歳以上の一世の男女比率は「四対六ぐらいだったという印象がある」という。それが徐々に女性の割合が上がり、九〇年代終盤には「一対九ぐらいの印象」になったそうだ。とすれば、一世女性のデカセギ比率は十三人に一人どころではなく、その倍ぐらいに上る可能性もある。 つまり、一世にとってデカセギというのは他人事ではなく、実に一般的な現象だということだ。 職種としては、女性は付き添い婦を中心にホテルの仲居など、男性は警備員が圧倒的に多くて若干がホテルの雑役夫などだ。 「九〇年代始めには、最高七十八歳の男性が受診に来たことがあります」と具志堅さんは補足する。それほど日本の労働者需要が逼迫(ひっぱく)していた。むしろ現在は一世の高齢化や日本の不況もあって、受診者総数が激減している。 実際、派遣業関係筋の話では「今の日本は人余り。男性なら三十八歳までじゃなきゃ仕事はない」と断言する。女性も五十歳代半ばまでなら、ヘルパーの求人はまだかなりある。でも「ヘルパー制度になっちゃったから、資格を取らなきゃいけないし、付き添い婦のような高収入は望めない」ことが、受診者総数が激減した背景のようだ。 今現在こそ激減しているけれども、九〇年代中盤ぐらいまでは求人も多かった。その時代の大半が女性であり、その圧倒的多数が「付き添い婦」に従事していた。一世デカセギを語る時、付き添い婦は欠かせない重要なキーワードだ。次回からは、それについて報告したい。 出稼ぎ高齢者の見た日本(5)>> |