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サンパウロのイピランガ公園の前で。今年のブラジル出張は、日本経団連とCNI(ブラジル全国工業連盟)による第10回日本ブラジル経済合同委員会への出席を兼ねた。(同会議の模様は
URL:http://www.bizpoint.com.br/
に収録)

今年のブラジル出張の際に、例によって休日に付き合ってくれる商社マン(東京での中南米情報交換会で仲間だった)と、サンパウロのフェジョアーダ専門レストランRubaiyatで。

ブラジルのルーラ現大統領が最も信頼する側近の一人、日系ブラジル人のルイス・グシケン(右から2人目)と。
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冷静なブラジル大好き人間 - 桜井敏浩さん
取材:アンジェロ・イシ
本サイトでブラきち、すなわちブラジル狂の日本人を紹介しようと考えた時、友人に「桜井敏浩というブラジル大好きな人がいるよ」と言われ、会ってみることにした。「どこかで聞いた名前だなあ」と思っていたら、なるほど、彼はインターネット上
http://www.bizpoint.com.br/
というサンパウロにあるサイトの中で充実した「ブラジル関係図書紹介」を連載している貴重なブラジル広報マンなのである(ちなみにありがたいことに、筆者が書いた『ブラジルを知る55章』も以前そこで紹介された)。
会ってみてびっくりしたのだが、彼は「まずお断りしておきたいのですが、自分はブラジルは何度も訪れてはいるが、一度も住んだことはないんです」と切り出す。そればかりか、ブラジル狂として扱われることにも多少の抵抗を示すのである!
ところが話を聞けば聞くほど、皮肉にもこの人こそが「模範的なブラきち」という呼称にふさわしいという結論に達したのであった。
海外経済協力基金(OECF)で中南米向け等のODA
借款業務に従事した桜井氏はOECF
ラテンアメリカ事務所長としてペルーのリマ等に住んだ後、ミナス・ジェライス州で植林・紙パルプ合弁事業CENIBRAを営む日伯紙パルプ取締役を経て、現在はベレン近郊でアルミ製錬の合弁事業
ALBRAS
の投資会社、日本アマゾンアルミニウム常勤監査役を務める。拓殖大学でもラテンアメリカ経済論を教え、評論も多数執筆している(そのいくつかは、上記サイトで見ることができる)。
今回のインタビューでは、自称ブラきちの人々や、この「ブラジル・サイト」の関係者に耳の痛い話もあるが、それについては本サイトで開始した筆者のコラム(「サンバが踊れないブラジル人の本音」)の第2話を読んでいただくことにしたい。
ブラジル・サイト(以下「ブ」):桜井さんは「ブラジル好き」とレッテルづけられることが不本意だとおっしゃいましたね。
桜井敏浩(以下「桜井」):ブラきちと呼ばれたくないんです。私はブラジルだけでなく、ラテンアメリカ全般にとても魅力を感じます。それが
40年来の私のラテンアメリカとの関わりを支えてきました。それに、例えば私がブラジルの政経見通しを楽観的に評価した場合、「彼はブラジルびいきだから」と割り引いて読まれたら、いくら私なりの分析によっての楽観論であっても話が発展しないからです。日本でブラジルを売り込みたい人は、より客観的に説得力をもつ形で、ブラジルの良さを分かってもらわねばならないと、日頃自戒しています。
ブ :ブラジルの日本への売り込み具合はいかがですか?
桜井:貿易に関して言えば、あいかわらずブラジルが日本に鉄鉱石、アルミ、パルプなど、資源を供給し、日本が機械設備等の完成品を輸出するという構図が主流です。ガソリン混合用にブラジル産エタノール(砂糖キビから作る)を爆発的に輸入するようにならない限り、このままだと日本経済の成長率低下もあって貿易量が増える見込みはあまりないと見ます。日本とアジア諸国との貿易は増えていますが、日本がブラジルから工業製品を買うところまではなかなかいかないでしょう。
ブ :ブラジル側の売り込みが悪いのか? 日本側が無関心すぎるのか? 両方ですか?
桜井:そういうレベルの話だけではないと思います。両国の経済構造の問題、輸送コストを割高にする距離、日本からアジアへの製造工場のシフトの問題もあります。ただ部分的に見れば、例えばブラジル側から日本の農牧産品輸入の障壁が多すぎるという話はよく出て来るけれど、どこの国でもそういった品目の輸入は厳しくブラジル側も相手のせいだけにせず、努力すべきことがいくらでもあるはずです。
ブ :例えばどのような工夫を?
桜井:東京にあるラテンアメリカ諸国の大使館の中で、いちばん日本への売り込みが熱心なのはチリとメキシコといわれています。大使からしてセールスに尽力していて、長年かかって日本の規制をクリアーし、ニーズに合わせた水産物や野菜などがどんどん入ってくるようになりました。チリなどのセミナーなどに行くと、終わり頃にはチリワインとエンパナーダス(おつまみ)などが用意されていて、とにかく1杯飲んでみて下さいと、機会あれば売り込むことを忘れませんが、残念ながらブラジル関係では、こういった熱心な宣伝はほとんど見たことがありません。市場経済では「日本はブラジル商品をもっと買うべきだ」といっただけではダメです。
ブ :ブラジルに毎年行かれてるとのことですが、どのように情報収集なさるのですか?
桜井:できるだけ多くの人に会って、意見交換をすることにしています。この10年間は年に一度、半月くらいは行っています。例えば飛行機で朝、リオかサンパウロに着き、ホテルでシャワー浴びて、さっそく昼食を取りながら誰かに会います。そして毎日、午前にアポイントメントを2つ、ランチ、午後2つ、そして夕食でまた1つという具合に埋めていきますが、時には朝飯時間も使います。あと土曜日や日曜日は、休日でも付き合ってくれる親しい人にお願いします。こうすれば、だいたい50、60人には会える勘定になりますね。もっとも近年は交通渋滞で、移動に時間がかかりますが。
ブ :どういう人に会うのですか?
桜井:できるだけいろいろな立場の人と会い、自分で考えた仮説や推論をぶつけて意見交換します。商社、金融、メーカー、研究者やコンサルタントなど。事業の報告をかねて、ブラジリアの大使館、リオ、サンパウロ、ベレンの総領事館にも寄ります。
ブ :普段、日本にいらっしゃる時はどのように情報収集を?
桜井:一般論として日本企業の多くは情報収集にはあまり熱心ではなく、まして情報収集には金を惜しむ傾向があります。また官庁や金融機関、シンクタンク、大企業のように、権限で情報が入るとか、潤沢な経費が使えて資料を購入できるという立場ではないので、私は長年かかって築いた個人的な人脈を駆使し、ギブアンドテイクで情報交換をしています。そのためには、こちらも差し上げられるものを持っていなければなりませんから、こまめにレポートなどをまとめるよう努めています。それらの積み重ねによって、やっと各種の情報源から毎日かなりの情報が入ってくるようになりました。
ブ :日本のマスコミでのブラジルの取り上げ方についてご不満は?
桜井:確かに取り上げる回数が少ない、そして悪い情報を取り上げることが多すぎますね。分析が浅く、表面的なものが大部分です。典型的なのが、昨年の大統領選挙の報道です。ルーラ=左翼=ポプリズム=債務踏み倒しという単純なトーンばかりでしたが、少し勉強すれば分かるはずの、ルーラ・PTの変容、ブラジルでどこまで左翼的政策が国会で通るかなどについては、分析がされていませんでした。
ただ、これは本社の編集デスク側の責任がより大きいように思います。こういった外国報道の問題はラテンアメリカに限ることではなく、全般について言えることですが。
ブ :桜井さんにとって、ブラジルとの仕事の魅力は何でしょうか?
桜井:広大な変化に富んだ国土と人間がもつ奥深さと、近年の著しい変化、それらが与えてくれる尽きぬ面白さといえますね。私とブラジルとの本格的な関わりは、11年前に
CENIBRA
の仕事に就いた時からです。当時生産設備倍増に着工することになったのですが、厳しいハイパーインフレ、コーロル大統領の弾劾をめぐる政治的混乱の中で、これだけの大工事が無事行えるかという株主の不安に応えるべく、必要性に迫られて、ブラジルの政経情勢を真剣に勉強し始めた時からです。幸い工事は順調に竣工できたのですが、その後もレアル・プランの実施、経済危機がおさまったと思ったら、すぐ合弁パートナーのリオドーセ社(Vale
do Rio Doce)の民営化の話が出てきました。そしてアジアやロシア通貨危機とIMF
の支援取り付け、レアル貨の切り下げ。そしてカルドーゾ政権の後に野党のルーラが登場など、次から次へと何かが起き、退屈することはまったくありませんでした。
ブ :じゃあ、あまり嬉しいことではないけれど、不安定さゆえに話題が尽きないのですね
桜井:不安定さばかりではありません。リオドーセ社のウォッチをしていると、ブラジルの大企業がグローバライゼーションの中でどういう戦略で立ち向かおうとしているかなど、ブラジルだけでなく世界の動きがじつによく見えてきます。
ブ :ルーラ政権については楽観していますか? 悲観していますか?
桜井:どちらとも言えません。去年の選挙戦中、ルーラの当選が確実になるにつれて、レアルが下がってみんなブラジルは売りだという行動に走りましたが、私はあの時からルーラを怖がることはない、ルーラが当選してもどのくらい振れるかは予想可能範囲内と言ってきました。
ブ :なぜですか?
桜井:彼とPTが左派から中道左派に変容しつつあるということもあったのですが、思想はともかくとしても、議会勢力は少数与党、経済自由化や市場経済主義はすでに後戻りの出来ないところまで進んでいるため、当選してもドラスティックな政策転換はできない、だから心配することはないと考えたのです。ただ、このところ、逆にルーラ政権に対する評価にはほめ過ぎの傾向があると思います。
ブ :「ほめ殺し」ですか?
桜井:「ブラジルを売れ」と騒いでいた人が、今度は「ブラジルを買え」と言って、また儲けようとしているのではないでしょうか。当選後の経済閣僚などの顔ぶれと言動から、レアルの為替や株価が高くなっていますが、これは過大評価だと思います。ルーラ大統領も与党PTも行政経験がなく、人材の数が足りないことが、これから足を引っ張ることになると懸念しています。現政権の指名で、重要なポストに就いた人たちには、行政やビジネスが分かっているのか心配が多いようです。いくらトップが方針を示しても、能力が不足すれば実行できません。
ブ :フォーメ・ゼーロ(Fome Zero、「飢餓ゼロ計画」)も、実務の面で手こずっていますね。
桜井:そのとおりです。配布の基準作り、実施計画の詰め、ロジスティックスなど、すべてがうまくかみ合わないと機能しませんが、それには中堅に人材の層がなければなりません。結論として、ルーラ政権によってブラジルはそうは悪くはならないと思いますが、だからといってそんなに良くなることも期待できないと思います。
ブ :先ほどおっしゃったブラジルの魅力は必ずしもポジティブなものとはいえない面もありましたが、何かいい意味での魅力はありませんか?
桜井:常に感じるのは、ブラジルの大きな将来性、尽きぬ可能性、そして人間性豊かな人々の存在です。
ブ :それはいつまで経っても「未来の国」という悪い意味ではなく?
桜井:もちろん、探せばまだまだあるビジネスチャンスを含めていい意味で言っています。私のラテンの人たちについての見方は、おそらく普通の日本人とは違います。
ブ :
と言いますと?
桜井:もしこの世に人間動物園のようなものがあったとして、そこには世界中の民族のサンプルが集められていると仮定します。彼らの価値観や文化観、人間性などを分析して分類した結果、おのずから人類のスタンダードはこのあたりといえるようになったとすれば、かならずやラテンアメリカの人々のほうが、
日本人よりも世界のスタンダードに近いように思います。楽天的な性格をいい加減というように、とかく日本ではラテン気質ブラジル的というと、良い意味で使わない人がいますが、家族や友人との交わりなどを見ると、どちらがより人間性にあふれているか明らかです。だから日本人の尺度で(そして欧米人の物差しで)相手の価値を判断してはならないと思うのです。
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