ボリビアの奥アマゾン河上流の僻地には、今なお日本名の地名や姓をもった人たちがいる。ペルー移民のアマゾン・ゴムブームを目指したアンデス下りの日本人の末裔たちだが、現地の女性と結婚して出来た二世、三世には日本語はもとより日本文化・慣習の痕跡はほとんどない。ペルーには日系二世の闘牛士がいるが、当時のペルー社会の排日気運の残りから日本人の血が入っていることは恥ずかしかったという。ブラジルでは勝ち組テロの記憶、在日ブラジル人若者の社会問題、アマゾン移民の現実、邦字紙記者仲間を取り上げているが、そこに共通するのは移住者が常に直視させられる「同化」か「非同化」という自問である。 ブラジルの勝ち組・負け組抗争にしても、負け組が現実を認識してブラジル社会への同化で生きていかなければと考えたのに対し、勝ち組みは日本民族の独自性を維持していこうという考えだったのだが、それは現在それぞれの文化の違いを認め合いつつ共存していこうというグローバリゼーションの流れに通じるものがあると解するなど、日本も移民労働者の大量移入が真剣に考えねばならなくなっていきている現在、興味深い事例が多く一読に値する。 〔桜井 敏浩〕 〔『ラテンアメリカ時報』2008年秋号(No.1384)掲載
(社)ラテン・アメリカ協会発行〕
世界の食料庫となってきたブラジルの農畜産、チリのワインや養殖鮭の対日輸出の苦労、日本市場の見えざる非関税障壁に阻まれるアルゼンチンの農牧産品、パナマ運河拡張の一大プロジェクト、世界が注目する地下資源を持つチリ、バイオエタノールの輸出国ブラジル、風力発電や自動車用水素燃料を進めるアルゼンチン、石油の国家管理を強化するベネズエラ、カストロ後のキューバなど、商社マンならではのビジネス最前線での動きが紹介されている。しかし、かつて新自由主義の実験場だったチリ、初の先住民大統領を選んだボリビア、テロとの闘いに注力したペルー、コロンビアなど、政治や社会の変化にも目を配っている。ブラジルの知られざる先端産業―航空機製造、金融や税務面で優れたブラジルのIT、情報通信産業への参画経験は、中国や南アフリカなどの新興国で活かせるはずであり、グローバル展開に繋がるとしている。 商社マンが見た資源、エネルギー、食糧の宝庫であるラテンアメリカが、いま経済成長、民主化のパワーによって大きく躍進しようとしている姿を読者に生き生きと垣間見せてくれる。 〔桜井 敏浩〕
著者はニューヨーク大学で中米史、ラテンアメリカ史を講じる優れた歴史家だが、米国の外交政策とその意思決定の背後で、政治家、政府・軍事関係者だけでなくキリスト教のニューライトや市場経済主義者なども大いに影響を及ぼしていることを、チリのピノチェト政権の分析で明らかにしている。 現代ラテンアメリカの新しい世代の桃カ翼柏ュ権には、例えばベネズエラのチャベスとチリのバチェレの如く多くの相違がある。しかし、それぞれの政治スタイルや政策は異なっていても、「米国の裏庭」状態を弱めるために地域統合を前進させ、投資資源を米国以外に多角化し、成長だけでなく公平さを促進する経済政策などは共通していると見られることの背景を知るに、本書の緻密な分析は極めて重要な示唆を与えてくれる。 〔桜井 敏浩〕 『夢の彼方への旅』
ロンドンの寄宿学校で暮らす少女マイアは、考古学者の両親を事故で亡くし、マナウス郊外で天然ゴム事業を経営する遠縁に預けられるべく、家庭教師のミントン先生とともにブラジルへ向かう。ゴム景気でアマゾン河中流のジャングルを切り開いたマナウスは、ヨーロッパ文明を持ち込んだ美しい町だが、養親一家はマイアのために送られてくる養育費目当てで引き受けたであり、双子の姉妹がことある毎に意地悪をする。しかし、ミントン先生や博物館長の理解もあって、マイアは次第にアマゾンの自然と人、生活に魅せられ、調査中に事故死したイギリス人博物学者の遺児フィンと知り合い、先住民とも馴染むようになる。 フィンの亡き父は貴族の次男で、長男が落馬死で跡取りがなくなった祖父が、血筋の続く後継者を求め連れ帰るべく探偵を雇ってマナウスまで探索の手を伸ばしてきた。その情報提供者への懸賞金に双子の姉妹は色めきだちマイアの行動を探り、ついにその居場所を突き止め通報するが、実はそれはフィンが旅芸人一座から抜け出したクロヴィス少年を身代わりに立てて、マイアと博物館長の協力を得て仕組んだことだった。 イギリスへ帰り貴族家の孫の演技をするクロヴィス。他方亡きインジオの母の郷里のシャンティ族の地に向かうフィンとマイン、それを追うミントン先生と彼女に好意をもつようになった博物館長。 彼らはシャンティ族に迎えられ、その仲間として扱われて幸せなひとときを過ごすが、"救出"に来た河川警察に連れ戻される。マインとミントン先生はこの行動で遺産管理人から帰国を命じられ、クロヴィスの告白によって祖父が倒れたとの急報に責任を感じたフィンとともにイギリスに戻るが、最後は3人は再びアマゾンに戻ることができるようになる。 マイアやフィンの数奇な出自とそれから生じるミントン先生やクロヴィス、養親一家などを巻き込んだドラマを、アマゾンに暮らす先住民の自然との共生生活、マナウスの社交界、20世紀初めのゴム採集業などを背景において、ストーリー展開は飽きさせず児童書ながら大人にも一気に読ませる。 〔桜井
敏浩〕 〔(社)ラテン・アメリカ協会 Webサイト「掲示板」→「図書案内」に収録〕 『サンパウロ市生まれの二世たちの眼差し ―ブラジル社会への同化』 横田パウロ "O Olhar dos Nisseis Paulistanos" Paulo Yokota
単なる自伝ではなく、例えば農業協同組合を含めた日系コミュニティの企業、日本からの進出企業がなぜ成功例が少ないか? 日本とブラジルの交流、グローバリゼーションが進む中でのブラジルとアジアの関係などについて、エコノミストとしてかつ政府内部関係者としての立場にいたことがある筆者の識見が随所に窺え、植木茂彬元鉱山動力大臣や、日系初の弁護士の一人である芳我貞一氏へのインタビューも収められていて、日本ブラジル関係を知る上でも有用な資料になっている。日葡語二カ国語。 (サンタクルス病院への寄付者に贈呈されているが、特別注文での取り寄せについてはJBコミュニケーション東京支店 電話 03-5685-6891 天野営業部長へ) 〔桜井 敏浩〕 〔(社)ラテン・アメリカ協会 Webサイト「掲示板」→「図書案内」に収録〕 『ブラジルの歴史』
歴史叙述に力点を置いているが、ブラジル史の中心的なテーマ、例えば奴隷制の性格、独立後にブラジルが分裂しなかった事由、権威主義体制から民主主義への移行の特徴などの議論と著者の見解を組み合わせている。 ブラジル史はともすれば、進化の過程であると捉える視点と、政治や社会に対する国家優位から起きる様々な問題が時代を通じて繰り返されてきたという「惰性」を強調する見方が多いが、著者はこれらとは反対に、時代を追って叙述することにより、同じ状況が続き現状追認がなされながら、政治、社会・経済は変化することを示そうとしている。 巻末には、部分的に異論があることを指摘した訳者解説、参考文献リスト、年表が付いている。同じ訳者・出版社による高校教科書訳『ブラジルの歴史』(2003年)という良書が出ているが、より深くブラジル史を知りたいという読者には本書とあわせ一読を薦める。 〔桜井 敏浩〕 〔『ラテンアメリカ時報』 2008年夏号掲載 (社)ラテン・アメリカ協会発行〕 『比較政治―中南米』
本書はラテンアメリカ政治の第一人者である著者(政策研究大学院大学教授)が、中南米の政治を比較政治学、政治体制論によって20カ国を全体として比較し、また政治変動という点で典型的なパターンを示している5カ国を事例に取り上げ解説したものである。 まず、中南米の経済、社会、政治状況の現状を概観して、本書の焦点を明らかにし、比較政治学の中での中南米の軍事政権型、個人独裁型の権威主義体制論、民主化論、ポピュリズム体制の起源、展開、挫折、ポピュリズムという"ガス抜き"を持たなかった小国での内戦と革命、中南米での民主化の進展などを概観している。 その後アルゼンチン、ブラジル、メキシコ、ペルー、ニカラグアについて、それぞれ異なる政治的背景、推移を述べ、最後に現代中南米政治で最も目立った現象である、民主主義の持続、先住民の政治的復権、"左派"の復活を考察する。
比較政治学の精緻な理論を知ろうという放送大学の教材だが、一般読者にも理解しやすい説明になっている。 〔桜井
敏浩〕 〔『ラテンアメリカ時報』 2008年夏号掲載 (社)ラテン・アメリカ協会発行〕
1950年代から今日に至るブラジル経済の変化を概観した後、ハイパーインフレと対外債務問題を克服して真の大国への道を歩み始め、鉄鉱石のほかにも無尽蔵な地下資源、石油自給、世界の食料供給図を塗り替えるアグロ・インダストリー、世界を動かすバイオエタノールといった巨大なポテンシャリティを持ち、主要外資が相次いで参入する第三次ブラジル進出ブームの実情、これらを受けて国際的にも展開する産業界、一方で中国製品の流入ラッシュといった、かつてと大きく変容したブラジルを紹介している。 しかし、税制、金利、大きな政府、為替の過大評価等の経済の問題点、構造改革の必要性が依然としてある一方で、様々な分野に豊富なビジネス・チャンスが存在し、カントリーリスクが著しく改善し、政治は極めて安定度が高いことを指摘している。 終章で真の経済大国に向かう今後の展望と、進出を志す日本企業への具体的なアドバイスとして、事前調査をきちんと行うこと、ブラジルを経営の世界戦略の中で位置づけを明確にし、投資規模は「小さく産んで大きく育てる」日本方式を改める、本社の直接管理をやめ人の問題を含め現地化を図ることなどを強調しているのは至言である。〔桜井 敏浩〕
〔『ラテンアメリカ時報』 2008年夏号掲載 (社)ラテン・アメリカ協会発行〕
まずブラジルの労使関係を、雇用と労使関係、労働法制、貧困と治安、企業の社会責任、日本人派遣者の心得7カ条で概説し、次いで雇用、労務管理、労使関係、マネジメント、異文化理解と摩擦、派遣者の日常生活を、それぞれ豊富な事例で解説している。 資料編として近年の個別労働法制改革の内容、現地労働事情と現地駐在に関するアンケート、ブラジル関係情報・資料などを付けている。ブラジル企業問題に詳しい小池洋一立命館大学教授を主査に、日伯紙パルプ、本田技研、丸紅、YKKなどの企業や経団連、日本労働組合総連合会国際局、在外企業協会の実務家が参加した委員会で取りまとめた。 ブラジルでの社会慣行・文化の違いや労使双方の理解不足から、派遣者が経験する恐れのあるトラブルの豊富なケーススタディは大いに参考になる。 〔桜井 敏浩〕
〔(社)ラテン・アメリカ協会 Webサイト「ラテンアメリカ参考図書案内」に収録〕
広大なブラジルの多様な社会、経済、政治、文化を網羅的に取り上げ、全体としてブラジルの実像と未来像を見ようと試みたものだが、多岐にわたるテーマはそれぞれに興味深い。
「ブラジル民族文化研究センター( http://www.centro-do-brasil.com/ )」は、ブラジル文学を日本に精力的に紹介している田所 清克京都外国語大学教授が主幹となって1988年に創設された関西のブラジル文学、地域研究を勉強する人たちの集まりである。 日本ブラジル交流年・ブラジル日本人移住100周年とセンターの30周年への各界からの祝辞、毎日新聞社が所蔵する日本人ブラジル移住の貴重な写真の紹介、移民、社会・資源、文化交流、企業での経験、文学、音楽、教育など多岐にわたる分野を、延べ50人余が寄稿している。巻末には、「当センター推薦 ブラジルを知るための100点」という様々な分野の参考図書リストも載せられている。 ブラジル好き、ブラジル研究に情熱をもつ人たちの熱気が随所に感じられる構成、文章ばかりである。〔桜井 敏浩〕
〔(社)ラテン・アメリカ協会 Webサイト「ラテンアメリカ参考図書案内」に収録〕 『目で見るブラジル日本移民の百年
−ブラジル日本移民百年史別巻』
笠戸丸移民以前の先駆者、第1回の笠戸丸移民とその頃のコロノ(コーヒー農園の契約労働者)時代、日本人移住者の独立を目指しての開拓、教育、文化活動を含む日伯関係の幕開けから、戦時中と戦後のナショナリズムの狭間の排日運動、勝ち組・負け組騒動や祖国帰還を謳った詐欺事件などの困苦、在留から永住への変化と戦後移民の到着、二世の台頭と一世の成熟による日系社会の安定と発展、農業、日本企業進出と地場産業の拡大、スポーツや文化などでのブラジルへの貢献、グローバル化の中のニッケイと、それぞれに写真を集大成し、日本語とポルトガル語で簡単な解説を付けてある。巻末に地図と日本移住史年表も収録されている。 100年に及ぶブラジルでの日本人移民の足跡を物語る、実に貴重な写真が数多く収録されていて、移住の実態を目で理解するためにも有用で一見を薦めたい。 〔桜井 敏浩〕
〔(社)ラテン・アメリカ協会 Webサイト「ラテンアメリカ参考図書案内」に収録〕 『超積乱雲』
そして終戦、サンパウロ州に旅行中だった武司は、勝ち組による敗戦認識者へのテロ抗争に巻き込まれて監獄入りを余儀なくされる。 遙々トメアスから面会に来た登与子と武司は結婚したものの、武司は旅を続け自分を見極めたいとボリビア、ペルーへ向かうが、リマでの勝ち組騒動の後、あらためて登与子への思いを自覚しアマゾンに戻って再会するまでの波乱の家族史を描いたものである。 アマゾン移民や勝ち組・負け組抗争のいきさつなど、現地に長くいる著者ならではの細部にわたる記述は、まさにひとつの移民史である。 〔桜井 敏浩〕
〔『ラテンアメリカ時報』 2008年夏号掲載 (社)ラテン・アメリカ協会発行〕 『ペレ自伝』
1940年にブラジルのミナスジェライス州の田舎町で貧しい黒人サッカー選手を父として生まれたが、膝の故障で挫折を余儀なくされた父の指導もあってフットボールの才能を伸ばし、ブラジル有数の名門クラブの一つサントス FC に入り16歳で公式戦出場、その黄金時代形成に大きく貢献した。4年に一度のワールドカップ大会にブラジル代表として4度出場、3度の優勝に貢献、生涯1363試合に出場、1281得点という前人未踏の記録を打ち立てた、フットボール史上不世出の名選手であることはよく知られている。 そのペレの誕生、幼少期、サントス入団、ブラジル代表としての4度のワールドカップ、サントス退団後に移籍した米国のニューヨーク・コスモスでの活躍、引退、そしてビジネスに手を染め、今日までを細部に至るまで詳細に述べている。 常に「美しさ」を追求したフットボールの克明なゴールの記憶以外に、二度の結婚、家族、なかでも息子の逮捕、ビジネスでの失敗、そして少なからぬ女性とのゴシップなど、私生活についても包み隠さず語っており、純粋で誠実な人柄は、サッカーファンでなくても魅力を感じさせる。
〔(社)ラテン・アメリカ協会 Webサイト「ラテンアメリカ参考図書案内」に収録〕 『世界史史料
7 −南北アメリカ 新住民の世界から一九世紀まで』
マヤ、アステカ、インカ文明に関する記述から始まり、ラス・カサスによるインディアス論争、ジャガイモ、トウモロコシをはじめ旧大陸になかった新しい食物の発見、イエズス会の布教村、植民地社会の形成、ハイチが先鞭を付けた各地域の独立と革命、貿易と大土地所有制、ラテンアメリカにおける国民統合、そしてパナマ運河建設にみられる米国の膨張と米州関係に至るまで、米州の歴史を形成した様々な史料が収められている。それぞれの分野の専門家が原史料から新たに訳し解説を付している。 コロンブス到来前から20世紀初めまでの、それも南北アメリカの長い歴史を凝縮したことから、それぞれの史料抜粋と解説とを合わせても2頁足らずであり、いささか物足りなさを感じさせる部分もあるが、アメリカ大陸の歴史の流れを原資料の一端に触れて読むことができ、是非手元におきたい有用な史料集である。 〔桜井
敏浩〕 〔(社)ラテン・アメリカ協会 Webサイト「ラテンアメリカ参考図書案内」に収録〕
他方、現在北米で進んでいるアジア系アメリカ人研究の中でしか日系人研究が行われ、北米以外の国に住む日本人、日系人に焦点が当てられない、日系アメリカ人研究ではあっても日系人研究ではない状況になっている。 本書は、アジアの移民先駆者の起源、日本社会から移民が出て行った歴史、日本人移住の事例として満州、フィリピン、ブラジル、カナダ、ペルー、ボリビアでの歴史と現状を考察し、日本に回帰した日系ブラジル人、シンガポールで働く日本人女性を取り上げ、各地域で多様な現実に直面していく中で、新たに創られ変容していく文化的アイデンィティを、17人の研究者が分析している。 〔桜井
敏浩〕 〔(社)ラテン・アメリカ協会 Webサイト「ラテンアメリカ参考図書案内」に収録〕
しかし、この地帯で金を採掘しようとするガリンペイロのならず者が、1993年のある日突然ハシムー村を襲い、16人のヤノマミ族を殺戮し家々に火を放った。ヤノマミの男たちは顔と身体を黒く塗った戦いに臨む姿で、ガリンペイロの侵入に抵抗するべく立ち上がる。 広大なアマゾンに住む他の民族も、再び襲われた時には共に闘うと約束し、部族の違いを超えて力を合わせることになった。1987年から99年にかけて、ヤノマミ族が住む土地に、彼らの人口の5倍にも相当する3〜4万人のガリンペイロが侵入し、1500人もの命を奪っている。 著者はリオデジャネイロ州教育長官を務めるブラジル教育界の第一人者だが、アマゾン河流域等で起こったゴールドラッシュの中で拡大した先住民の大量虐殺を糾弾して本書の筆を取った。エドムンド・ロドリゲスによる挿絵と簡略な文、全文の葡語対訳、訳者による字句の詳細な注釈とブラジルの先住民問題の解説が付されている。 (桜井 敏浩)
本書は著者が選び抜いた35曲のそれぞれにブラジル語歌詞(コード付き)に日本語訳を付け、曲の成り立ち、作詞作曲者についての解説、その曲に関わる思い出や出来事などの補遺・研究を付けてある。 誰でも知っている「イパネマの娘」*やフランス映画『黒いオルフェ』の主題歌「カーニバルの朝」などをはじめとする名曲の対訳と解説は、パラパラと拾い読みしても楽しく、特にポルトガル語を学んでいる人には堪えられないだろう。写真や当時の新聞報道、似顔絵、それに人名索引もあり、日本でも愛好者が少なくないボサ・ノーヴァが、最適の人に紹介されたことは喜ばしい。
〔(社)ラテン・アメリカ協会 Webサイト「ラテンアメリカ参考図書案内」に収録〕
「総説」では、地質・地形、気候、植生、土壌などを地下資源と農牧林産物を中心に見た上で、開発問題の多面性、統計データによる社会の特質を明らかにしている。「中部アメリカ」では、先スペイン期の環境利用と自然観、文化から始まり、植民地時代以降の開発と環境、農村と社会問題、民主化過程、経済成長と貧困、文化的アイデンティティ、アフリカ系文化の影響を取り上げている。「南アメリカ」では、先スペイン期の環境利用とその後の各地での環境と開発、スペイン人の侵略から今日に至るまでの国家と民衆、国際関係を解説している。 大判で大部の本だが、各項目毎に読んでもそれぞれに内容の濃い解説が続いていて、読み応えがある。是非座右に置いて時々紐どきたい有用な一冊だが、個人で購入するには価格が高いのが難である。
〔桜井 敏浩〕
著者はブラジルに、1970年代のいわゆる「日伯蜜月時代」とそれに続く80年代の現地経済混乱による「日伯関係空白の時代」の一時期を、野村貿易のベロオリゾンテ、リオデジャネイロ駐在員として過ごし、退職後2003年から3年間、国際協力機構(JICA)派遣の日系社会ボランティアとして再びブラジルで生活した。その間、故郷の和歌山の地方紙に投稿した報告に加筆修正した、全67編の見聞録である。 歴史と文化とそれを背景にあるブラジル人の生活と性格、日系移民の過去と現在、そしてそのブラジル経済・社会への貢献、農牧業や工業の変化、人種差別の有無、農地改革や縁故主義、最近のブラジルの産業や社会変化のトピックスなど、広範な話題をそれぞれ2乃至4頁の短い文章で紹介している。しかし、多くのこの種の滞在記や見聞録とは異なり、相当ブラジル事情に通暁していなければ書けない、しっかりした裏付けがあることが窺え、内容の濃い、分かりやすい解説書になっている。秋田市にあるこの地方出版社は、これまでも中隅哲郎氏の『ブラジル学入門』、『ブラジル観察学』、『ブラジル日系社会考』はじめ10余点の優れたブラジル関係書を出版している。
〔桜井 敏浩〕 〔『ラテンアメリカ時報』 2008年春号掲載 (社)ラテン・アメリカ協会発行〕
マクロ経済の変化を読み解き、政治・社会情勢も安定して持続的な安定成長軌道に乗ってきた経済を概観し、高いポテンシャルをもった主要産業動向とその成長可能性を、自動車産業、電気・電子産業、大豆、食肉、エタノール、農畜産物、鉱物資源という天然資源を例に取り上げている。また、経済のグローバル化で変貌する企業動向として、欧米企業の投資動向、近年やっとビジネス拡大に動き出した日本企業、想像を超えて国際化が進むブラジル企業を分析し、それらの裏にあるルーラ政権の外交・通商政策、メルコスールと南米統合への険しい課題を解説している。そしてビジネスアプローチに必要な実務知識として、税務・会計、労務、企業設立手続、資金調達と対外送金、貿易システムと知的財産権問題に至るまで、基礎知識を網羅したきわめて有用な解説書。 〔桜井
敏浩〕 〔『ラテンアメリカ時報』 2008年冬号掲載 (社)ラテン・アメリカ協会発行〕
メキシコとブラジルにおいて、弱者のための教育普及に、政府、地方自治体、NGO等が、どのような課題を掲げ、どのように活動してきたかを、両国での就学促進のための家計補助プログラムの評価、批判的検討、オアハカ州ミッヘ族の3つの村を例にメキシコ先住民地域における競争的な教育発展の事例、同じくメキシコでの先住民2言語教育の理想と現実、ブラジルにおける初等教育の地方分権化とサンパウロのファベーラでの住民運動を紹介することによって解説している。 貧困からの脱却には教育の普及が必須といわれながら、実際にその実現に立ち向かうと様々な問題に直面することがよく分かる。 〔桜井 敏浩〕
〔『ラテンアメリカ時報』 2008年冬号掲載 (社)ラテン・アメリカ協会発行〕
「ブラジルに移住した日本人の人生はすべてドラマになっている」 と編者 はいうが、1932年から97年に至る間に移住した、無作為に選ばれた年齢も境遇も異なった6人の女性が書いたという異色の移住史。 10歳の時に移住、インテリの父たち家族と開墾の苦闘の中で妹を失った、執筆者中最高齢の85歳。早い時期から商売に転じた人、アマゾンで農場経営に携わり夫とアマゾンを信じて身を捧げてきた生涯だったという人、1965年に邦字紙の記者として2年間のつもりでブラジルに渡ったが、「日本にないモノがあって楽しくて」ブラジルに留まったという現代女性など、6人の 執筆者はまったくの素人であるが、それぞれの苦楽の生き様は読む者に深い感銘を与える。〔桜井 敏浩〕 〔『ラテンアメリカ時報』 2008年冬号掲載 (社)ラテン・アメリカ協会発行〕
これら5章の音楽の発祥、歴史的な変遷、偉大な作詞家、作曲家、演奏家たちやエピソードなど、著者の長年のラテン音楽との深い関わりで蓄積した"雑学"が楽しく、ふんだんに盛られている。それぞれの章の終わりに、その音楽を味わいたいならこの2枚と、著者推薦のCDも挙げられている。 〔桜井 敏浩〕 〔(社)ラテン・アメリカ協会 Webサイト「ラテンアメリカ参考図書案内」 に収録〕
1961年から操業開始までの3年間、「地球の裏側に溶鉱炉をぶっ建てる」という未曾有の合弁大プロジェクトであるウジミナス製鉄に現地で関わった著者は、「その土地を愛し、その人を愛し、その仕事を愛する」ことが海外技術協力には必要という。仕事の合間には時には柔道を通して現地の人たちとの触れ合いもあり、日本の鉄鋼業が海外に進出した先駆者の苦労と働きがい、喜びを綴っている。 〔桜井 敏浩〕 〔(社)ラテン・アメリカ協会 Webサイト「ラテンアメリカ参考図書案内」に収録〕
第一部は著者がサンバの世界に出会った経緯、第二部はブラジル人とサンバ、そして名高いサンバ学校「マンゲイラ」の歴史、第三部はリオのカーニバルの歴史、参加するサンバ学校、パレードの構成とその審査の詳細、カーニバルの舞台裏というべき諸作業とそれらを支える裏方の人たち、それら作業と練習を一年中見せるサンバ・シティといった構成で、サンバの楽しさ、面白さ、奥の深さを知ることができる、実に楽しい一冊。 〔桜井 敏浩〕 〔(社)ラテン・アメリカ協会 Webサイト「ラテンアメリカ参考図書案内」に収録〕
第2部では、移民集住地での行政や NPO の取り組みを通じての「多文化共生」を紹介しているが、オランダのアムステルダム市の事例以外は、東海地方から三重県にかけての日系デカセギ労働者集住地域を中心に、自治体の外国籍住民施策、定住化が進む日系ブラジル人家族の生活史、NPOによるネットワーク形成、ブラジル人学校に通う日系青少年の社会文化的適応と、日本の公立学校における日系南米人の統合、同じく日系南米人の医療問題などを取り上げている。 グローバル化が進むにしたがい、民間レベルでの人の移動とそれにともなう共生について、いろいろな切り口から分析していて実情を知るうえで興味深い。 〔桜井 敏浩〕 〔(社)ラテン・アメリカ協会 Webサイト「ラテンアメリカ参考図書案内」に収録〕
米国におけるアフリカ系市民、黒人が多数を占める南アフリカにおける人種や国民的・階級的アイデンティティを考察した著者は、ブラジルにおける類似の人種不平等が必ずしも問題にされていないことに気がつく。ブラジルの歴史・文化的遺産、すなわち植民地政策、奴隷制度、人種混淆まで遡り、1822年のペドロ一世による帝国としての独立、奴隷制の廃止、共和制移行を経て、強固な国民国家建設がなされたが、米国や南アフリカのように地域間対立も人種間紛争も経験しなかった分、公の人種支配はなかったのである。黒人の移民流入は禁止されたが、国内においては、アフリカ系であることや皮膚の色による制約の公式法制化は否定されてきたことにより、”人種天国”であると米国の黒人からもみられていた。しかし、奴隷制が非常にゆっくりと進行したため、人種秩序が揺るぐことなく、読み書きできない者には選挙権が与えられないことなどによって、黒人が不利益を被り、非公式な人種差別は明白に存在し続けたのだが、共和制国家の下で国民を結束させるため、ナショナリズムと人種民主主義が提唱され、そのイメージが一致したおかげで社会的・人種的秩序は紛争なしに、国民国家としてのブラジル国が確立したのである。 1970年代以降、ブラジルの人種関係について、それまでの楽観的な見方を修正する学術報告が次第に増え、また経済的、社会的にアフリカ系人が圧倒的に不平等な状態に置かれていることが統計などで明らかにされ、人種的抗議行動も起きてきていて、米国や南アフリカに比べればブラジルの人種的寛容度は高いというものの、現実に不平等がないということを意味しない事実を、本書は歴史的背景と経緯によって明らかにしている。 〔桜井 敏浩〕 〔(社)ラテン・アメリカ協会 Webサイト http://www.latin-america.jp/ 「掲示板 ラテンアメリカ参考図書案内」に収録〕
強盗犯の少年やその恋人、勤め先の社長、ブラジル人の子供たちのために学校を運営する夫婦たちの協力を得ながら、ジト伍長の行方を追うエルザだが、デカセギで貯めた金を持って帰国した直後に一家で惨殺された日系人の事件も関わって、意外に身近なところにジト伍長がおり、また警察の強盗犯の少年の現場検証の無神経なやり方に、日頃味わらされている差別感の鬱積を爆発させたブラジル人の騒動の中で、信頼し交流していた人の素顔が明らかになるというどんでん返しの結末にむかう。 言葉、文化、価値観や発想の異なるブラジル人と周囲の日本人の間の取り持ちをさせられる”担当者”兼司法通訳という立場のエリザを中心に、犯罪サスペンスながら日本でのブラジル人社会の諸相がよく描かれている。 〔桜井
敏浩〕 〔(社)ラテン・アメリカ協会 Webサイト http://www.latin-america.jp/ 「掲示板 ラテンアメリカ参考図書案内」に収録〕
1970年代はじめに、日本の業界は国内製錬に見切りをつけ、アルミ資源を海外に求め業界共同プロジェクトが志向された。幹事会社は輪番制で、住友電工がインドネシアのアサハン計画を、三井アルミがアルミナ部門を担当する日本軽金属とともにアマゾン計画を主導した。アマゾン河中流域の豊富なボーキサイト鉱と廉価なツクルイダムの水力発電を利用し、河口のベレーン市近郊に、ブラジルのリオ・ドセ社との合弁でアルブラス(アルミ製錬)とアルノルテ(アルミナ製造)事業を立ち上げようというもので、1976年にガイゼル大統領の訪日を機に、海外経済協力基金の出資、日本輸出入銀行と国際協力事業団からの特利融資を行う"ナショナル・プロジェクト"として行うことで、両国政府間合意、日本政府閣議了解が得られ着手された。 しかし、その後ブラジルのインフレ、為替の大幅変動等、日本側の円高の進行、アルミ業界を取り巻く環境の悪化、それらに起因するアルノルテ計画への参加大幅縮小など、実に多くの問題に遭遇したが、現在は日本のアルミ新地金の1割近くを安定供給するまでになり、アルブラスも業績好調で配当を行うまでになっている。 〔桜井
敏浩〕 〔(社)ラテン・アメリカ協会 Webサイト「ラテンアメリカ参考図書案内」に収録〕
本書は、自身もブラジルでの日本語普及等文化活動に努め、人文研の理事である著者による渾身の伝記であり、経済的成功に背を向けブラジルと日本を文化で結ぼうと、日本人を代表する如き気迫を持って行動した鬼才の生涯を詳細に伝えている。 (本書は、"ブラジル日本人移民百周年記念「人文研研究叢書」 第6号"として発行されたもので、市販はしていないが、サンパウロの人文研 centro-nipo@terra.com.br もしくはブラジル日本商工会議所事務局 secretaria@camaradojapao.org.br が受託頒布している。本代 50レアル) 〔桜井 敏浩〕
ラテンアメリカは、トウモロコシ、ジャガイモ、サツマイモ、ピーナッツ、トウガラシ、トマト、カボチャなどの穀類、野菜、香辛料、カカオ、パイナップル、パパイヤ等の果実類や嗜好品のタバコ、コカなど、実に多くの原産地であることは知られている。この広大な地域に、先住民、欧州からの征服者、植民者やアフリカから連れてこられた奴隷、東欧、中東、アジアを含む世界各地からの移民など、様々な文化が融合して多彩な食文化が展開しているのだが、日本では部分的にしか知られていない。 まずは、トウモロコシ、ジャガイモ、マニオク(マンジョカ/ユカ)という三大主食、コロンブス到達以前と以後の食文化の変化、戦前の農村部を中心にしたブラジル日系人家庭の食生活を解説しているが、大きな部分を占めるのは、17カ国20地域の食文化と酒の紹介である。ラテンアメリカの主要国(ペルーやアマゾンは、さらに地域を区分している)はもとより、中米やカリブの島嶼国の知られざる食文化、醸造・蒸留以前の製法で作った酒、メキシコのテキーラや同じサトウキビを原料としながら製法に違いがあるラムとブラジルのピンガ、移住者が持ち込んだワインに至るまで、現地で長く生活した24人の広範な分野の人たちによる解説は、それぞれが読み物としても興味深い。 〔桜井
敏浩〕
ロサンジェルスの全米日系人博物館の企画による、国際日系研究プロジェクトの成果の一つ。グローバル化が日系人のアイデンティティに及ぼした影響について、第1部「グローバル化と日系人アイデンティティの形成」は、南北アメリカにおける移住と日系人の文化や社会の成立に関する歴史的考察、第2部「日系人アイデンティティの形成」は、ラテンアメリカではペルー、ボリビア、パラグアイ等を事例に、日系人コミュニティの形成と相互のつながりを、社会的慣行、家族、宗教、教育、政治、経済の面におけるアイデンティティを分析している。 第3部「日系人アイデンティティの形成阻害」は、ペルー、ブラジル、アルゼンチン等でのジェンダー、日系映画制作者の作品に見る人種やエスニシティ、日本への"デカセギ"現象の経済学的視点からの考察と、その就労問題と子女の教育、日系であっても"外国人"視される中での日本での多文化共生の可能性、ラテンアメリカへの移住者の中で多い沖縄出身者と本州出身の日本人とのアイデンティティを含む諸問題を取り上げている。第4部「回顧と展望」は、3人の在米編者がこれらの論考を分析している。 7ヶ国18人の研究者による20の充実した事例研究中心の考察は、近年の日系社会、在外・滞日日系人の変化を知るうえで有益な資料である。 〔桜井
敏浩〕 〔『ラテンアメリカ時報』 2007年夏号掲載 (社)ラテン・アメリカ協会発行〕 『はまの大きな菩提樹 A FRONDOSA ÁRVORE DE HAMA』
サンパウロ州の奥深くに日本人が多く入植したアリアンサ移住地があり、そこに共同で農業生産活動を営みながらバレー団を持っていることでも知られる弓場農場がある。創設者の弓場
勇さんの夫人であり、著者勝重さんの母であるはまさんは、父が行きたがっていたブラジルに、医師の養女となって16歳でアリアンサ移住地に入り、そこで弓場
勇氏と知り合う。
本書は北東部社会の文明史と風土的特性、ブラジル地方主義についての概説の後に、偉大な4人の作家の代表作を取り上げ、それぞれの作品について背景、意義、社会性などを読み解いている。長年にわたって特に北東部出身の作家の著作を研究し、日本での紹介に努めてきた著者は、これらの文学を通じてブラジル人の思考や行動様式、国民性、ひいては感性と美学を知ることを期待している。 〔桜井
敏浩〕 〔『ラテンアメリカ時報』 2007年春号掲載 (社)ラテン・アメリカ協会発行〕
第1部「グローバリゼーションと米州国際関係」では米国外交とそのラテンアメリカの位置づけ、南米南部の非核化を通じての信頼醸成と地域統合の進展を、第2部「南北アメリカ社会の変容」では北米での人種問題の歴史的展望、米国最大のエスニック・マイノリティ集団であるラティーノの存在、南北アメリカを結ぶ麻薬ネットワークを概観し、第3部「南北アメリカと日本」ではNAFTA、メルコスール以後の諸国の状況から、日本とメキシコ間のFTAのあり方を、またIDBグループと日本との開発面での協力を、最後に1990年の日本の入管法改正以降のデカセギ日系人激増による南北アメリカの日系社会への影響、日本社会に多文化を形成しつつある動きを紹介している。〔桜井 敏浩〕 〔『ラテンアメリカ時報』 2007年春号掲載 (社)ラテン・アメリカ協会発行〕 『講座 世界の先住民族 ―ファースト・ピープルズの現在 ― 08 中米・カリブ海、南米』
第1部中米・カリブ海ではメキシコのウィチュルなど7族、グアテマラではキチュなど 2族、ドミニカのカリブ、第2部の南米ではチリのマプーチェと都市のインディオであるチョロ、ボリビアのアイマラ、パラグァイのグアラニー、ペルー・アンデス東斜面のアシャニンカ、ブラジルのパノ系先住民、そしてベネズエラのヒビという、この地域の13カ国・地域に居住する17民族を、17人の文化人類学者が取り上げ解説している。 メキシコ以南のラテンアメリカ、カリブには、現在3,000〜4,000万人の先住民が居住するといわれているが、それぞれが多くの共同体を形成し、それぞれの地域で異なる歴史をたどり、その結果として現在の姿も大きく異なっている。また、近年はボリビアにおける先住民出身のモラエス大統領の出現に見られるように、先住民運動を指導してグローバリズムと対峙するなど、あらためて先住民族の動向が注目されるようになった。 異なる地域を専攻し様々な研究テーマをもつ研究者が、それぞれの民族の生き様を活写しており、編者の丁寧な解説も付いているので、大部な本であるが特に予備知識がなくても関心をもった項を拾い読みすれば、それなりに興味深い読み物になっている。〔桜井 敏浩〕 〔『ラテンアメリカ時報』 2007年春号掲載
(社)ラテン ・アメリカ協会発行〕
日本ではブラジル憲法についてはこれまで断片的な解説と日本語訳はあったが、憲法学としての本格的な研究成果はほとんど目にしない。本書は違憲審査制の実態についての、気鋭のイベロアメリカ法学者の労作である。独特の形態をもつブラジルの意見審査制が、広大な領土を統治しなければならず、潜在的に拡大を狙っている州権力が相手の連邦制の体制維持機能、憲法に書き込まれた制度を支持する憲法体制維持機能、その憲法下で統治する政府の政策支持機能、憲法で保障される経済的利益、非経済的自由権といった権利が下位の規範に侵害された場合を救済する権利保障機能をも持つという指摘は興味深い。ブラジルは、50万人もが弁護士資格をもつといわれ、連邦最高裁が受理する事件は年間約10万件もある訴訟大国だが、違憲審査制を通じてブラジルの法曹界の思考様式を知ることは、ビジネス紛争の予防、発生した紛争処理のためにも参考になろう。 〔桜井 敏浩〕
〔『ラテンアメリカ時報』 2007年冬号掲載 (社)ラテン・ アメリカ協会発行〕
移民に関わる膨大な資料を目を通すことは出来ないので、インターネットで得た資料を含め入手し得たものだけを利用したというが、ラテンアメリカや日本人移住史の専門家ではないこともあって、記述が正確でない点が散見されるが、網羅的に概説した労作である。 〔桜井 敏浩〕 〔(社)ラテン・アメリカ協会 Webサイト「ラテンアメリカ参考図書案内」に収録〕
編著者は、サンパウロ大学法学部教授、弁護士でサンパウロにある日系ブラジル人支援のための「国外就労者情報援護センター」理事長。市販本ではないが、協会に申し込めば(電話
043-276-7280 メール piy@ovta.or.jp)入手できる。
〔桜井 敏浩〕
〔(社)ラテン・アメリカ協会 Webサイト「ラテンアメリカ参考図書案内」に収録〕
日系人の体験だけではなく、日本のサッカーのレベルアップに貢献してきた5人の名選手、平成の世になって、ブラジルで夢を追うべく渡った自由渡航の若者たち、マンガ・アニメやカラオケなど越境する日本文化なども紹介されていて、まさにブラジルは「日本人が世界中の異なる民族が集う社会への適応・順応するための壮大な歴史的実験の場」(同紙深田正雪編集長の序文)であり、「2つの国の間で日本人が果たしてきた役割の重要性、両国民の絆の深さを感じて」欲しいというメッセージを実感させる興味深いエピソード集となっている。 〔桜井 敏浩〕 〔(社)ラテン・アメリカ協会 Webサイト「ラテンアメリカ参考図書案内」に収録〕
著者は気鋭のブラジル研究者で、横浜国立大学経済学部教授。 ”高校生向けの経済学入門本”として書いたというが、本書は市場万能主義の是非や途上国経済への取り組みという現代の経済学の課題と、具体的なブラジル経済の変化を、産業立地のサンパウロやリオデジャネイロへの集中の度合いの減少、製靴と自動車産業を例にしての工場の地方移転、セアラ州の零細・中小企業に見る「内発的発展」の可能性、”大きな政府”でも”小さな政府”でもない”良い政府”を作る一手段としての住民「参加型予算」のポルトアレグレでの試行などの実例を詳述しながら、問題点をよく整理して分かり易く解説している。 高校生や大学新入生のみならず、ビジネスマンでももう一度経済学という見地からブラジル経済を通じて幅広く開発経済学を理解する上で格好の概説書であるが、芯には副題の示すように、新自由主義経済万能論への批判的な見方が論理的に示されている。コラム、経済学の用語やキーワードのミニ解説、ラテンアメリカやアジア、南アフリカ等の筆者の訪れた土地の風景素描など、様々な工夫が凝らされ、読みやすい。〔桜井 敏浩〕 〔『ラテンアメリカ時報』 2006年夏号掲載 (社)ラテン・アメリカ協会発行〕
ブラジルの政治や社会などを分析していると、統計や資料だけでは解明できない、欧米で発達した分析手法や視点では説明しきれない部分があるように思えてならないことがある。本書はまさしくブラジルの国民性の背後にあるものを、その成立の過程から論じているもので、ブラジル史とポルトガル語に通暁した訳者によるこの労作は、丁寧かつ詳細な注記、解説もあって、現代においてもブラジルをより理解するうえで多くの示唆を与えてくれる。 〔桜井 敏浩〕 〔『ラテン・アメリカ時報』 2006年4月号掲載 (社)ラテン・アメリカ協会発行〕
大航海時代にポルトガル領となった、リスボン西方1,500qの大西洋上にあるアソレス諸島の人びとは、18世紀に人口増大や火山の噴火などから食糧不足に陥り、政府の植民地ブラジルへの移住奨励策によって、南部のサンタカタリーナに入植した。夫婦、家族を主体とした移住は1748年に始まり、4回で計約6,000人の島民を現在の州都フロリアノポリスの向かいにあるサンタカタリーナ島ならびに最南部リオグランデドスルに送り込んだが、それはスペインの脅威に対抗するための軍事力補強の目的もあり、入植者たちはしばしば軍務に就くことを余儀なくされた。 その後、南部はドイツや東欧からの移住者を加え、現在のサンタカタリーナ州はブラジルの中でも経済、文化、教育などの面で進んだ地域になっているが、それらの礎を造ったアソレス島民の移住を、ポルトガルやブラジル植民地時代の公文書を丹念に検証した、これまでのラテン・アメリカ史に見られなかった切り口からの歴史解説である。 〔桜井 敏浩〕 〔『ラテン・アメリカ時報』
2006年4月号掲載 (社)ラテン・アメリカ協会発行〕
〔『ラテン・アメリカ時報』
2006年2月号掲載 (社)ラテン・アメリカ協会発行〕 『白いインディオの想い出 ― ヴィラ・ロボスの生涯と作品』 〔『ラテン・アメリカ時報』 2005年11月号掲載 (社)ラテン・アメリカ協会発行〕
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