「感想」 「サンパウロ 8月」

    伊東宏

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例年は9月に咲く「憩いの園」の沖縄桜は、暖冬のせいか今>年は7月に咲いてしまった。

今は車椅子の「散歩鋪道」に植えられている沖縄桜は若葉で覆われ、その間に青い、小さ

なさくらんぼうが顔をのぞかしている。
          

教会のポランティアの方々と、この間を車椅

子を押して散歩し、決まった場所で止まって

は童謡を歌っている。昭和初期にブラジルに

移住された老人が多く、共通に歌える歌は

童謡である。約60人の要介護者寮「シャロ

ーム寮」の半数は痴呆性老人であるが、日

頃、表情もなく、話すこともない車椅子の老
      
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婦人が、童謡を皆で歌うとかすかに口を動かされたり、のべつ幕なし、わけの分からない

言葉をブツブツ言っておられる方がブツブツを止められ、手で拍子をとられた時など、感

動で思わず涙が出る。痴呆がはじめると、決まって童謡を皆と一緒に歌えなく、一人でドン

ドン先を歌ってしまわれる事に気がついた。全く無表情の痴呆の方の耳元で大きな声で表

情を確かめながら歌う。話し掛ける肉親もなく、老人ホームの従業員は修女さんたちを除

き、全員がブラジル人である為、日本語で話し掛けられる機会も少なく、痴呆が進む具合

が早いように素人考えで思う。逆に、体は不自由ではあるが、頭はしっかりしている方の話

を聞くのは正直つらい。      
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それぞれが背負いきれない過去を背負って

おられ、愚痴を聞いていると思わずこちらま

でが落ち込んでしまう。先月の七夕の日、竹

につるされた短冊には次のような事が書か

れていた。

「おすしが食べたい」「元のように歩けるよう

になりますように」 「なにもないよ」
               

「ただ感謝」 「息子の健康を祈ります」 「思い出に生きるホームの夕暮れは、いつも寂しい

風吹き抜ける」


「憩いの園」

社団法人「ドン・ジョゼ・ガスパール」によって運営される、サンパウロ最大の日系老人ホーム。
現在、約113名の日系老人が郊外の広い敷地に暮らしておられる。
この内、73名が要介護者。
入園者の園費負担に関しては100%負担されている方は全体の15%ぐらいに過ぎず、58%の方々は園費の10%前後を負担されているに過ぎない。全く支払っておられない方も、9%おられる。

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