ブラジル関係図書紹介


   桜井 敏浩


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2011年
2016年文献 

 
ラテンアメリカの中小企業 2015/11
ラテンアメリカ 21世紀の社会と女性  2015/11
ブラジル日系人経営者・50人の素顔 A Verdadeira Face dos 50 Empresários Nipo-Brasileiros 上巻 2015/10
ボッサ・ノーヴァな建築考 -住宅から都市デザインへ 2015/5
ASEAN/アフリカ/中南米 「最新」海外進出ビジュアルデータブック2015/10
高齢期の所得保障  -ブラジル・チリの法制度と日本 2015/8
日系移民社会における言語接触のダイナミズム -ブラジル・ボリビアの子供移民と沖縄系移民 2015/8
わたしの土地から大地へ 2015/7
アメリカ・カナダ・メキシコ・ブラジル 駐在員の選任・赴任から帰任まで完全ガイド  2015/8
笠戸丸移民 未来へ継ぐ裔孫 2014/10
第四の大陸 -人類と世界地図の二千年史 2015/8
福祉レジーム 2015/11
探検と冒険の歴史大図鑑2015/5
ブラジル この興味あふれる国2015/7
ブラジル知的財産法概説 2015/8
アフロ・ブラジル文化 カポエイラの世界 2015/4
生きるためのサッカー ブラジル、札幌、神戸 転がるボールを追いかけて2014/6
ブラジル万華鏡 -南米大国の素顔と未来 2015/7
アマゾン 森の貌 2015/3
アマゾニア 上・下 2015/3
ブラジルの我が家 2015/3
ブラジル国家の形成 -その歴史・民族・政治 2015/3
改訂・ラテンアメリカの書棚から -640冊の書籍を紹介 2014/10
創造するコミュニティ -ラテンアメリカの社会関係資本 2014/12
神戸移住センターから見た日本とブラジル 2014/11
南米につながる子どもたちと教育 -複数文化を「力」に変えていくために2014/8
ブラジルからコンニチワ! 2014/11
一粒の米もし死なずば 2014/
図説ブラジルの歴史 2014/10
ラテン・アメリカ社会科学ハンドブック 2014/11
ラテンアメリカの教育戦略 2014/12
アマゾンがこわれる AMAZON -CRISIS OF MEGA-BIODIVERSITY IN AMAZON 2014/10
ジャンガダ 2013/08
ブラジル人の処世術 -ジェイチーニョの秘密 2014/6
イッペーの花 -小説・ブラジル日本移民の「勝ち組」事件 2014/7
音楽でたどるブラジル 2014/5
ブラジルの環境都市を創った日本人 -中村ひとし物語 2014/3
マラカナンの悲劇 ― 世界サッカー史上最大の敗北 2014/5
ブラジル・ポルトガル語ビジネス会話フレーズ辞典 2014/6
川と川は人と人を結ぶ Los rios nos unen-Integracion fluvial suramerica2014/5
ブラジル、住んでみたらんでみたらこんなとこでした!-ようこそ!おいしい食と可愛い雑貨の国へ 2014/5
ブラジルのことがマンガで3時間でわかる本 改訂版 2014/5
遠い眼差し -郷愁のブラジルとポルトガル 松井正子写真集 2014/4
ワールドカップが100倍楽しくなるブラジル・ジンガ必勝法
 -ブラジルから学ぶ人生をとことん楽しむ秘訣!
 
2014/6
踊る!ブラジル -私たちの知らなかった本当の姿 2014/3
ブーゲンビリア 遙かなる大地 上・中・下  2011/12
「日系人」活用戦略論 -ブラジル事業展開における「バウンダリー・スパナー」としての可能性] 2013/12
上塚司のアマゾン開拓事業 2013/11
南米への移民 コレクション・モダン都市文化 93 2013/12
社会自由主義国家 ブラジルの「第三の道」 2014/3
驚きのアマゾン -連鎖する生命の神秘 2013/12
さがし絵で発見! 世界の国々 12 ブラジル 2013/12
ドン・カズムッホ 2014/2
躍動するブラジル -新しい変容と挑戦 2013/11
世界地誌シリーズ 6 ブラジル2013/10
南・北アメリカの比較史的研究 -南・北アメリカ社会の相違の歴史的根源2013/10
スペシャリテ2013 別冊専門料理 SPECIALITES -南米ガストロミーの衝撃 2013/9
ビジネス用語集 Glossário de Termos de Negósios 
日本語/
EnglishPortuguês 』 『Doing Deals in Brazil
(日本語版)
2013

新興国家の世界水準大学戦略 -世界水準をめざすアジア・中南米と日本2013/5
るるぶ情報板 C ⑨ ブラジル・アルゼンチン 2014/1
国際理解に役立つ 世界のお金図鑑 ③北米・中南米・アフリカ2013/10
世界のともだち 03 ブラジル -陽気なカリオカ ミゲル2013/12
AMAZON DOLPHIN アマゾンのピンクドルフィン 2013/11
旅の深層 - 行き着くところが、行きたいところ アフリカ、ブラジル、ダバオ回遊- 2013/10
Vovô Ostra e Shiguebo(カキじいさんとしげぼう) 2013/6
ブラジル日本移民百年史 2010 - 2013
共生の大地 アリアンサ -ブラジルに協同の夢を求めた日本人 2013/8
ラテンアメリカ鉄道の旅 -情熱の地を走る列車に乗って  2013/7
アマゾン 日本人移住八十周年 2012/8
移民画家 半田知雄 -その生涯 2013/5
マリアナ先生の多文化共生レッスン -ブラジルに生まれ、日本で育った少女の物語り 2013/7
天使見た街 A sedução dos anjos (写真集)2013/8
文化資本としてのデザイン活動 -ラテンアメリカ諸国の新潮流2013/7
ブラジル略語集 ポ日両語 - 2013 年度版 2013/3
ボサノヴァの真実 -その知られざるエピソード 2013/2
日系ブラジル移民文学 Ⅱ -日本語の長い旅 [評論] 2013/2
ラテン・クラシックの情熱 スペイン・中南米・ギタ ー・リュート 2013/5
旅立つ理由 2013/3
世界の絶景アルバム101 南米・カリブの旅 2013/3
ブラジルにおける公教育の民主化 -参加をめぐる学校とコミュニティの関係 2012/12
[新版]ラテンアメリカを知る事典 2013/3
地球時代の日本の多文化共生政策-南北アメリカ日系社会との連携を目指して 2013/3
進化する政治経済学 -途上国経済研究ノート 2013/3
実業家とブラジル移住 2012/8
千鳥足の弁証法 -マシャード文学から読み解くブラジル世界 2013/3
日系ブラジル移民文学 Ⅰ -日本語の長い旅 [歴史] 2012/12
日本からブラジルへ-移住100年の歩み 2012/12
ブラジルの日本人 日本のブラジル人 2012/8
アマゾンばか 2013/2
大きな音が聞こえるか 2012/11
世界の作家32人によるワールドカップ教室
言葉図鑑 にほんご・えいご・ポルトガルご・スペインご 2013/3
ピダハン -「言語本能」を超える文化と世界観 2012/3
ブラジル・カルチャー図鑑 -ファッションから食文化をめぐる旅 2012/3
遠い声 -ブラジル日本人作家 松井太郎小説選・続 2012/7
トランスナショナルな「日系人」の教育・言語・文化 -過去から未来に向かって 2012/6
日本のエスニック・ビジネス 2012/11
「移民列島」ニッポン -多文化共存社会に生きる 2012/110
カンタ・エン・エスパニョール! -現代イベロアメリカ音楽の綺羅星たち 2012/10
ブラジル 跳躍の軌跡  2012/8
地球時代の「ソフトパワー」一 内発力と平和のための知恵 2012/3
VIVA O BRASIL! -アミーゴからの贈り物  2011/9
楽々サンパウロ 2011/2012 2011/12
ドゥラードスの記憶 -ブラジル・南マット・グロッソ州 ドゥラードス市滞在記 2012/5
ラテンアメリカ・オセアニア 世界政治叢書6 2012/4
ブラジルの不毛の大地「セラード」開発の奇跡 -日伯国際協力で実現した農業革命の記録 2012/7
南米日系人と多文化共生 -移民100年・・・その子孫たちと現代社会への提言  2010/5
次なる経済大国 -世界経済を繁栄させるのは BRICsだけではない2012/2
ブラジルの民族系民間企業 -経済成長下、力をつける企業アクター2011/3
ブラジル経済の基礎知識 第2版 2011/7
グローバル化の中で生きるとは 日系ブラジル人のトランスナショナルな暮らし  2011/7
バイオエネルギー大国ブラジルの挑戦 2012/1
パンタナール -南米大湿原の豊穣と脆弱 2011/9
写真は語る 南アメリカ・ブラジル・アマゾンの魅力  2012/4
ラテンアメリカにおける従属と発展 -グローバライゼーションの歴史社会学  2012/4
ブラジル文学序説 -文学を通して見えてくる この国のかたちと国民心理 2011/6
アマゾン、シングーへ続く森の道 2012/3
開高健とオーパ!を歩く 2012/2
ブラジルに流れる「日本人の心の大河」 2011/12
ブラジルを識る100キーワード  “100 palavras para conhecer melhor o Brasil 2011
日本小百科 ブラジル語版 “JAPAO MINI ENCICLOPEDIA DO JAPAO”2011/3
大アマゾンを翔る 2011/6
現代ラテンアメリカ経済論 2011/4
ブラジル日本人移民百年史 第三巻 生活と文化編(1)2010/12
ブラジルにおける経済自由化の実証研究   2011/3
ブラジル人生徒と日本人教員の異文化コミュニケーション
南アメリカの街角にて -青春随想録 2010/10
ポ日英医学用語辞典 2011/1
ブラジルの人種的不平等 -多人種国家における偏見と差別の構造2011/1
ブラジルの流儀 -なぜ「21世紀の主役」なのか2011/2


 


ラテンアメリカの中小企業』 
 

清水 達也、二宮 康史、星野妙子 アジア経済研究所(アジ研選書) 201511月 166頁 2,100円+税 ISBN-978-4-258-29041-3


グローバル化にともなう産業構造転換にともない、成長の担い手として従前の大企業主導型に代わるものとして中小企業の重要性が認識されるようになり期待が集まっている。中小企業には企業規模の不均一性、生産性格差、インフォーマル経済の存在などの課題がある。本書ではまずラテンアメリカでの中小企業の位置付け、
4つの産業クラスターの事例を挙げ、その発展はネットワークを築いてグローバルバリューチェーンに参加し、生産性や付加価値を高めることの必要性を論じ、ラテンアメリカ特有の企業文化の影響を検討、各国の中小企業政策の意義、経緯、課題を指摘、最後にラテンアメリカで成長している中小企業像を製造業やサービス業の7例によって紹介し、それらの成長に重要であった要素を挙げている。

ラテンアメリカの大企業や大規模同族企業について解説・分析した出版物は少なからずあるが、中小企業についての考察はほとんど無かった。今後日本から中小企業のラテンアメリカへの進出が増加すると見込まれているところ、そのパートナーとなる中小企業についてコンパクトながらよく整理された情報を提供する有用な論考集。〔桜井 敏浩〕


〔『ラテンアメリカ時報』2015/16年冬号(No.1413)より〕

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ラテンアメリカ 21世紀の社会と女性
 

国本 伊代編 新評論 201511月 416頁 3,800円+税 ISBN978-4-7948-1024-3


15
年毎にラテンアメリカの社会の変容と女性のおかれた環境変化を、同じ編者が検証してきたシリーズの3冊目。

序章で地域全体の女性が活躍する21世紀のラテンアメリカ社会、女性をとりまく社会・経済状況、女性の政界進出を、日本との比較データを示しつつ概観し、次いで20世紀の遺産を相続しているアルゼンチン、激変する体制下のボリビア、ジェンダー格差克服に挑戦するブラジル、女性大統領を誕生させたチリ、女性の地位を向上させているコスタリカ、階層を超えて平和を求めるコロンビア、平等主義と自由化の間で生きるキューバ、女性を軸に国づくりをするドミニカ共和国、多民族国家として歩むエクアドル、女性の権利主張が生命への危険があるエルサルバドル、民族階層を超えようとしているグアテマラ、ジェンダー格差克服を目指すホンジュラス、連携により女性が活躍するジャマイカ、男女平等社会を目指すメキシコ、左派政権が復活し保守化した中で生き残りを図らねばならないニカラグア、運河に左右される経済の中でのパナマ、政治の民主化の中で社会参画が始まったパラグアイ、教育水準の向上で女性の社会進出が変貌したペルー、女性の政治参加が進展しているウルグアイ、ボリバル革命下での女性政策をみたベネズエラと、20カ国の現在の社会での女性を取り巻く環境をそれぞれの研究者が考察している。
〔桜井
敏浩〕


〔『ラテンアメリカ時報』2015/16年冬号(No.1413)より〕
 

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 ブラジル日系人経営者・50人の素顔 A Verdadeira Face dos 50 Empresários
 Nipo-Brasileiros
上巻
』 

 

菅野 英明 サンパウロ新聞・Kanno Agency共同制作 サンパウロ新聞社発行 201510月 日本語177頁・ポルトガル語257


サンパウロ新聞に
20142月から152月までの間に連載された、在ブラジル日系人経営者40人、在日日系人10名を取材した論考を集大成したもので、日本語とポルトガル語との両語立てになっている。今後さらにブラジル全土に取材範囲を拡げ、続編を連載し単行本に纏めたいとして、本書はあえて「上巻」としている。

同紙はこれまで日本人移住者の取材を重ねてきたが、日系社会という枠を超えてブラジル社会で、あるいはブラジルから日本に移り住んで活躍している日系人経営者を紹介し、その経営理念などを明らかにすることで、本書はこれまでの日本人ブラジル移住史では手つかずだった切り口からの有用な資料になっている。

ブラジル各地で日本の「正直」「勤勉」「努力」などの日本の伝統的な価値観をもちつつ、再三の経済危機・混乱を耐え抜いた経営者たち、ブラジルから出稼ぎ等で日本に移り住んで徒手空拳から起業した人たちの業種は多岐にわたっているが、ここで取り上げた経営者に共通している魅力は、胆力と体力、先見性と決断力、不動心と情熱、変化への対応力、そしてアミーゴ文化で鍛えあげた経営能力と人間力だという執筆者の指摘は説得力がある。〔桜井 敏浩〕

                                


日本での入手は、サンパウロ新聞社東京
支社電話
(03) 5633-7596
spshimbun@tokyo.email.ne.jp

5,000円+送料)
 


〔『ラテンアメリカ時報』
2015/16年冬号(No.1413)より〕
 

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ボッサ・ノーヴァな建築考 -住宅から都市デザインへ
 

南條 洋雄 コム・ブレイン  20155月 222頁 1,600円+税 ISBN-978-4-9901689-5-7

  
大学で都市工学を専攻し卒業後建築事務所に就職したが、海外志向から
5年で退職し、197527歳の時に思い切ってブラジルへ渡航、サンパウロで名高い建築家の事務所を皮切りに設計事務所、コンサルタント会社で信頼を得て、公共建造物やニュータウンの設計の実績を挙げていく傍ら、仕事も家族も趣味も充実した日々を送り、文字どおりボッサ(隆起)・ノーヴァ(新しい)経験を得ることができたが、ブラジル生活が10年経ったところで帰国、東京の青山で設計事務所を開設し都市デザインと建築設計分野で幾多の実績を挙げている著者の半生記。

ほぼ半分は、ブラジルでの設計事務所等で働いた経緯とチームでの仕事の仕方、デザインの基本を考え豊富な人脈を駆使して営業活動を行うエリートの建築家と、その下で専門分野毎に働く建築士・エンジニアとの分担の仕分けなど、日本との仕事のやり方の違いが述べられていて興味深いが、巻末に収録された「遷都50周年ブラジリアの都市計画と建築」(本誌2010年夏号に寄稿したものに一部修正)は、遷都が実行者クビチェック大統領の思いつきではなく長い歴史的関心事の結果であったこと、首都という目的のために造られ、道路や街区設計、土地利用や用途規制などのアイディアが試みられ、優れた計画都市であること、ニーマイヤー設計の建物も地下を活用するなど気候条件をよく考えられており、人と自動車の区分がきちんとなされているなど、住み易さを追求していることなどが世界で最も若い文化遺産と認定された所以であると、これまでブラジリアについて多かった事実誤認を正している。「クリティーバのマスタープランから学ぶもの」は、1964年のコンペで採用された都市構造提案が基本となって、自動車より便利なバスシステムでの道路通行体系、公園や歴史的建造物保全を取り込んだ街並み、塵処理や市民の環境共生教育など、クリティーバから学ぶものを紹介するとともに、ブラジリアと違って日本の都市は部分でしか景観美を考えずマクロでの都市景観の視点を欠いていると指摘している。〔桜井 敏浩〕                               

  
〔『ラテンアメリカ時報』
2015/16年冬号(No.1413)より〕
 

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ASEAN/アフリカ/中南米 「最新」海外進出ビジュアルデータブック
 

中島教雄・片岡万枝 ディスカヴァー 201510月 1,800円+税 ISBN978-4-79931775-4


世界的な会計事務所・ビジネスコンサルタントであるプライスウォーターハウスクーパースで、アセアン、中南米、アフリカのビジネス環境調査・コンサルティングを行っている編著者がまとめた、新興諸国でのビジネス展開に資する基礎データ集。「もっと日本が世界を見るべき5つの理由」「海外市場の魅力が分かる10のデータ」から始まり、ASEAN、アフリカ、中南米各地域に「進出すべき10の理由」を挙げ、「各国名鑑」としてそれぞれ10カ国を1頁で進出意志決定ための要点を簡潔に図示している。

各市場の魅力、可能性、進出判断の基礎となる要項が一目で分かるよう、よく工夫されたビジュアル化データを多用している。ラテンアメリカに進出すべき理由としては、日系人の多さ、消費市場規模や今後の成長余力、中間所得層の拡大、女性の購買力の高まり、富裕層の成長、サプライチェーン確立の機が熟しつつあり、日系企業の成功例があること、経済成長に勢いがあって、産業構造が日本と補完関係にあることを挙げている。各国編ではアルゼンチン、ベネズエラ、ブラジル、チリ、コロンビア、キューバ、メキシコ、パラグアイ、ペルーおよびウルグアイが取り上げられている。〔桜井 敏浩〕

                                
〔『ラテンアメリカ時報』2015/16年冬号(No.1413)より〕

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高齢期の所得保障  -ブラジル・チリの法制度と日本』 
 

島村 暁代 東京大学出版会 201510月 頁 7,200円+税 ISBN978-4-1303-6147-7


高齢期の社会保障の中核である公的年金制度は、それを単独で云々するのではなく、雇用・企業年金や公的扶助等と総合的に見なければならないが、それぞれの国の事情、歴史的経緯などから、実態はかなり異なっている。本書は比較法の観点から、国家主導で現役世代への賦課で高齢者年金を支えるブラジルと、民営化された制度の下で積み立てに拠る個人主義のチリを比較・考察したものだが、それによって日本の制度改革に資するものにしたいという意図もある。

日本とははるかに現役時代の所得格差が大きい両国では、高齢期においてもその格差が引き継がれているが、これを無理に縮小させることの是非、年齢自体は要件としていないブラジルの状況から年齢が就労能力との関係でも年金制度設計上重要であること、積み立て方式をすでに30年間維持しているチリの経験など、わが国のこれからの制度を考えていく上で大いに参考になる問題提起を行っており、有益な示唆を得られる労作である。〔桜井 敏浩〕
  

〔『ラテンアメリカ時報』2015/16年冬号(No.1413)より〕
 

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日系移民社会における言語接触のダイナミズム -ブラジル・ボリビアの子供移民と
  沖縄系移民

 

工藤 真由美・森幸一 大阪大学出版会 20158 318頁 6,500円+税 ISBN978-4- 87259-512-3


日本人移民の現地での言語接触と言語移行についての研究書は少なくないが、本書は戦前のブラジル移民の半数近くを占めた子供と、ブラジルやボリビアで多い沖縄からの移民を取り上げ、長期にわたる現地での言語生活と談話の録音調査、文献の掘り起こしの集成に基づき分析したものである。

子供移民は日本語・ポルトガル語という二つの言語文化にあって、一世大人とも現地生まれの二世とも異なる自らのアイデンティティを模索してきた。沖縄系移民については、日本人(沖縄県人)、ブラジルの日本人(コロニア人)、ブラジルのウチナーンチュ、さらには「汎ウチナーンチュ」になるというエスニックアイデンティティの変遷を経てきたことを、沖縄方言も含めて彼らの言語接触の経験を考察している。

資料編にはボリビアの沖縄系移民コミュニティにおける談話録音調査の一部をDVD-ROMで聞くことが出来るようになっており、近年の日本への長期デカセギと日本での子弟教育、現地での高学歴化(大学進学)という変化までも追っていて、これまでの北米の日系移民研究成果を持ち込んでの南米調査・分析と一線を画した研究になっている。〔桜井 敏浩〕


〔『ラテンアメリカ時報』2015/16年冬号(No.1413)より〕
 

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 わたしの土地から大地へ』 
 

セバスチャン・サルガド、イザベル・フランク 中野 勉訳 河出書房新社 20157月 236頁 2,400円+税 ISBN978-4-309-27612-0


ブラジルのミナスジェライス州リオ・ドセ河岸に生まれで世界的な写真家のサルガドにフランスのジャーナリストがインタビューして纏めた聞き書き。

ブラジル内陸の野生の風景に原点をもち、北東部セルジッペ州やパラナ州でのMST(土地無き農村労働者の運動)に軍政下の1969年に妻とともにフランスに逃れ写真に開眼、国際コーヒー機関のエコノミストの職を捨て、アフリカやラテンアメリカ各地の写真を撮り写真集『別のアメリカ』を刊行する。79年に恩赦によってブラジルへも戻れるようになり、写真家集団のマグナムにも加入し、レーガン米大統領暗殺未遂現場に居合わせ決定的な瞬間を撮影した。世界各地での労働と労働者、例えばブラジル北部パラ州のヴァーレ社金鉱やインドのビハール州等の鉱山労働の姿を『人間の手』で、その移動にともなう都市貧困者のスラム、災害被災者や移民、内戦や民族間虐殺を逃れ国境を越えるモザンビークやルワンダの難民などをルポした経験から『EXODUS』、酷寒と灼熱の地、さらにアマゾン奥地の土着民の部族を訪ね、北極圏からエチオピア高原、アマゾン河流域に至る世界の環境破壊と保護の実態を捉えた『GENESIS』など、多くの優れた「人間の大地」を撮り続けた写真家の実像を、巻末の今福龍太(文化人理学者)の詳しい解説とともに知ることが出来る。〔桜井 敏浩〕


〔(社)ラテンアメリカ協会 Webサイト「関連情報」→「図書案内」に収録〕
 

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アメリカ・カナダ・メキシコ・ブラジル 駐在員の選任・赴任から帰任まで完全ガイド
 

 藤井 恵 清文社 20158月 385頁 2,800円+税 ISBN978-4-433-55995-3


わが国からの企業進出が多い米州4か国について、まず駐在に出す前の日本での社会保険や税務上の手続き、海外旅行保険付保、健康診断や引っ越し等の準備、赴任中の社会保険・税務、生活・教育、医療事情に加えて、駐在員の人事評価・権限委譲、帰任時の本社での手続き事項を解説している。次いで駐在員の日本および赴任地での税務、給与設定方法、赴任者規程の作成から出向元と出向先の覚書に至るまでを丁寧に説明している。

本書の特色は、表題から予想されるような国別解説ではなく、項目別に4か国を載せることにより、その内容がある一か国に固有の制度なのか、普遍性のあることなのかが分かるようになっており、比較も出来るところにある。

著者は三菱UFJリサーチ&コンサルティング所属コンサルタントで、アジア・中国についての本シリーズも執筆している。〔桜井 敏浩〕


〔(社)ラテンアメリカ協会 Webサイト「関連情報」→「図書案内」に収録〕
 

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笠戸丸移民 未来へ継ぐ裔孫』 
 

赤嶺 園子 ニッケイ新聞発行 沖縄タイムス社出版部発売 201410月 306頁 2,000円+税 ISBN-978-4-87127-658-0

1908年の第1回笠戸丸移民のうち、沖縄県出身者325名の出身市町村別名簿とその六世に至る子孫から聞き取った調査内容、入手できた本人・家族・移住地や所持していた旅券等の写真を整理し集大成した、移住者リストと子孫家族動向。

著者の住むサンパウロ州のみならず、リオデジャネイロ州、南マットグロッソ州、さらにはアルゼンチン転住者の足跡を追ってアルゼンチンに、帰国者と親類等については沖縄県にも足を運んで、移民の墓碑銘を探し、子孫を見つけ出して聞き取り調査をしている。

当時の旅券には写真がなく、身代わり渡航、農業家族移民のみの許可となっていたため別人を便宜上の家族にするなど家族構成で偽名を使った人、結婚して姓があらたまり、また再婚して姓を変えた人、同姓同名者の存在や死亡年月日不明や正式姓を名乗れなかった先駆者もおり、ブラジル永住者ばかりではなくその後アルゼンチンに転住したり帰国した移民もいるなど、調査は困難を極めたが、ブラジル全土に沖縄、アルゼンチンを含めて墓碑銘で死亡年月日を確認したという。

それらの調査の中から、日系人として初の運転免許を取り、大統領の自家用車運転手になった比嘉秀吉や、アルゼンチンに転じ10年間で“故郷に錦を飾って”帰国を果たしたものの1945年の沖縄戦で命を落とした比嘉嘉那、その孫がアルゼンチンにいることが判明したなど、波瀾万丈の逸話も含まれており、また女性調査者ならではの、これまでとかく男性中心であった移住史とは異なる移民女性の生涯にも目が向けられている。

これらはもはや移民足跡調査の域を超えた著者の慰霊の念が込められていると感じさせる大変な労作である。〔桜井 敏浩〕


〔(社)ラテンアメリカ協会 Webサイト「関連情報」→「図書案内」に収録〕

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 第四の大陸 -人類と世界地図の二千年史』 
 

トビー・レスター 小林力訳 中央公論新社 20158月 488頁 3,700円+税 ISBN978-4-12-00478-0


コロンブスがポルトガル人と逆回りでアジアに到達したと信じた新大陸に到達してから
10年後に、イタリアの航海者アメリゴ・ヴェスプッチがそこがアジアの一部ではなく海に囲まれた新世界であることに気付いてから数年後に、ドイツの地理学者ヴァルトゼーミューラーがアメリゴの手紙を偶然見て、彼に敬意を表してそこを「アメリカ」と名付けた世界地図を1507年に出版した。1000部印刷されたこの大地図の唯一現存したものは米合衆国の議会図書館にあるという導入部から始まる。

人類の2000年の世界地図の歴史の中で、思想家の洞察、マルコ・ポーロの前後に東方に赴いた多くの探検家・旅行者の苦難に満ちた探訪の報告、地図製作者の試行、さらにはコロンブスやアメリゴなど多くの航海者・探検家・征服者たち、新領土や貴重な物資貿易の独占を図る帝国施政者の野望を辿り、最終的にはマゼランの世界一周航海で実証された「第四の大陸」と言われた南北アメリカ大陸が認識されるに至る長い地図作成の歴史を、旧大陸の世界観の変遷という観点から明らかにしている。貴重な約100点の古地図図版も付いており、じっくり読むに値する壮大な大部の歴史読み物である。〔桜井 敏浩〕
 

〔(社)ラテンアメリカ協会 Webサイト「関連情報」→「図書案内」に収録〕

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福祉レジーム(アルゼンチン、ブラジル、メキシコ)
 

新川 敏光編書 福祉+α ⑧ ミネルヴァ書房 201511月 244頁 2,800円+税 ISBN-978-4-623-07388-7


これまでの「社会民主主義」「保守主義」「自由主義」の3類型論を見直して、「家族主義」を加えた4類型を提起し、第二次大戦後の資本主義の下での西欧民主主義諸国の経験を一般化・理念化した「福祉国家論」から、それらの枠から外れた日本など主義・国家形態を超えて社会システムを福祉という観点から特徴づける一般的概念である「福祉レジーム論」へ移行する例として、欧米・アジアとともにラテンアメリカ、東欧の実例で解説している。

ラテンアメリカについては、「保守主義+フォーマルセクターのアルゼンチン福祉レジーム」(宇佐見 耕一-同志社大学教授)、「岐路に立つ「新しいブラジル」の福祉レジーム」(近田 亮平-アジア経済研究所副主任研究員)、「分断化された社会におけるメキシコ福祉レジーム」(畑 恵子-早稲田大学教授)の考察が収録されている。〔桜井 敏浩〕


〔(社)ラテンアメリカ協会
Webサイト「関連情報」→「図書案内」に収録〕

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 探検と冒険の歴史大図鑑』 
 

レイモンド・ジョン・ホージェイゴ監修 樺山紘一監訳 こどもくらぶ訳 丸善出版 20155月 288頁 9,000円+税 ISBN-978-4-621-08873-9


古今東西の世界地図作成の歴史を概観し、紀元前
2300年の古代エジプト時代の上ナイルへの交易・外交ルート開拓、古代ギリシャ時代のフェニキア人等による地中海からアフリカ沿岸への旅、アレクサンドロス大王の中近東・西アジア遠征などから、15世紀の明の鄭和のアフリカ東岸に至る7回の航海、15世紀のコロンブスの“新大陸の発見”と1494年のローマ教皇の調停によりスペイン・ポルトガルで新世界を分け合うドルデシャリス条約の締結、さらに19世紀の近世の大洋州、探検史上最後の最後の領域である北極航路探求、南極点到達競争と内陸調査、広域海洋調査と深海から宇宙飛行に至るまでを網羅し、地図で探検者のルートを詳細に辿り、大判のページを活かして沢山の写真、絵画・イラスト図表で探検・旅行の様子ばかりでなく探検家の移動手段、身支度・装備も図示している。巻末には資料として「100人の探検家たち」の略史、東西世界史の横断的な「探検の対照年表」「総合索引」を付けてある。

 本書の中で北・中南米については、「1500年から1900年代まで」でスペイン人の北米南西部への探検を含む「北アメリカ」、初めて東から太平洋に到達したバルボア、アステカを攻略したコルテス、インカを征服したピサロとアルマグロなどの征服時代、アマゾン河やオリノコ河流域の探検、ホーン岬ルートの確立、フンボルトの科学調査旅行から20世紀のアマゾン・アンデス調査に至るまでが「中央アメリカと南アメリカ」で詳しく解説されていて、楽しい読み物になっている。〔桜井 敏浩〕
 

〔(社)ラテンアメリカ協会 Webサイト「関連情報」→「図書案内」に収録〕

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ブラジル この興味あふれる国』 
 

宮治 誠 文芸社(文庫版) 20157月 214頁 700円+税 ISBN-978-4-286-16309-3


細菌学者で
1985年にブラジルとの共同研究等で何度も訪れ、その間に興味をもったブラジルでの出来事、経験を綴った27編のエッセイ集。

ブラジルの人種間の相性やかつての奴隷貿易、犯罪・治安、邦字新聞、資源大国とファベーラ(貧民窟街)、ハイパーインフレーション、パンタナールや北東部の海岸リゾート、アマゾンの熱帯雨林、サンフランシスコ河やチエテ川の自然と環境、ツキを背負った男ルーラ前大統領と懲りない男コーロル元大統領、義賊ランピオンなどについて、私見を交えた解説をブラジルの専門家ではないが実によく資料を調べて書いている。〔桜井 敏浩〕


〔(社)ラテンアメリカ協会 Webサイト「関連情報」→「図書案内」に収録〕

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ブラジル知的財産法概説

 

ヒサオ・アリタ、二宮 正人 大嶽達哉日本語訳監修 信山社 20158月 
281頁 4,200円+税 
ISBN-978-4-7972-8638-0

日本・ブラジル間の経済・文化関係が緊密の度合いを深めるとともに、知的財産をめぐる紛争や提訴も必然的に増えている。本書は、特許権、意匠、商標、技術移転などの工業所有権、著作権法、コンピューター・プログラム保護法、さらには商号、ドメイン名などのインターネット上の権利・義務、植物種苗育成種の育成者権、集積回路の回路配置に関する知的所有権、営業秘密、Trade Dress(商品・商業施設等の視覚的イメージや包装など特定商品・役務の個性の他競合品との差違)の保護に至るまで新しく重要な保護についても取り上げている。

はじめにブラジルでの知的財産権の法的根拠と歴史的経緯を概説し、上記解説の後半分に資料として工業所有権法、著作権法、コンピューター・プログラム保護法の条文訳文、用語例索引も付けてある。意匠・商標登録出願手続きについてはフローチャートもあり、全体としてブラジル進出日本企業にとっては極めて有用な実務解説書となっている。

二宮サンパウロ大学法学部教授は二宮正人法律事務所の代表として法律実務に通暁し、ポルトガル語・日本語での著作、飜訳・通訳に多大な実績を挙げており、アリタ弁護士は元ブラジル国家工業所有権院(INPI)長官で二宮事務所のシニア・パートナー。〔桜井 敏浩〕

                                
〔『ラテンアメリカ時報』 2015年秋号(No.1412)より〕
 

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アフロ・ブラジル文化 カポエイラの世界
 

細谷 洋子 明和出版 20154月 151頁 2,000円+税 ISBN-978-4-901933-33-9

ブラジル北東部の港町サルバドール周辺で生まれたといわれるカポエイラは、アフリカから拉致されてきた奴隷たちが武器を持つことを厳に禁じられた中で、護身術の練習や踊りが基となって創造された、身体を使う格闘・舞踏・芸能性を合わせもった特異な文化といえるが、近年ではほとんどの大学でカポエイラ関連サークルがあるといわれるほど、日本でも同好者が増えている。

本書はスポーツ科学、舞踏学を専攻する若手研究者が、アクロバット・パーフォーマンスにしか見えなかったカポエイラに魅了され、リオデジャネイロで本場の演技を見たことから、文化的固有性をもち、その奥に深い世界観をもったカポエイラを、スポーツ人類学の視点からその歴史・社会的背景を探究した論文である。

2003年に制定された法令によるアフロ・ブラジル文化と歴史の教育義務化に始まり、08年のブラジル国内の無形文化遺産登録などの国民統合政策とカポエイラについての教育内容と期待される社会的役割、カポエイラの競技化にともなう競技大会の開催によるシステム化、それとの文化的固有性創造の関係、さらには劇場でのショーに取り上げられるようになったカポエイラのエンターテイメント化の実例も踏まえて、全体として制度からみるカポエイラの社会的役割と文化的固有性を明らかにしようとしている。〔桜井 敏浩〕

                                
〔『ラテンアメリカ時報』 2015年秋号(No.1412)より〕
 

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生きるためのサッカー ブラジル、札幌、神戸 転がるボールを追いかけて

ネルソン松原 松本 創(取材・構成)・小笠原博毅(取材・解説) サウダージ・ブックス 20146月 239頁 1,800円+税 ISBN978-4-907473-04-4

 

北海道江別から父の代にブラジルへ移民して生まれた二世の著者は、大のサッカー好きだったが母からはプロの道へ進むことを禁じられ、体育大学へ進学し保健所・銀行で働きながら勉学とサッカーに励んでいた。札幌大学が日系人サッカー留学生を募集していること知り応募、大学を休学して日本へ向かう。2年間の留学期間中、札幌大学のサッカーにブラジルスタイルを持ち込み、子供たちに当時は未だ無かったフットサルを教え、その競技規則の日本語訳にも加わった。社会人チームからの誘いを断り、ブラジルの大学に復学、卒業し保健所の同僚の日系人と結婚してスイミングスクールの共同経営者になったが、再び札幌大学の恩師から少年サッカーのコーチにと誘われて北海道へ。以後札幌一高のコーチ、神戸に移って川崎製鉄サッカー部のコーチ兼ブラジル人選手の通訳をしていたが、阪神淡路大震災に遭遇。ヴィッセル神戸のユースチームでのコーチ、監督の後、FC神戸のコーチを経て再びヴィッセル神戸に呼び戻され男女の大人相手にサッカー普及を目指すスクールの仕事や通訳を務めた。2010年に神戸スポーツアカデミーの立ち上げに加わり、大人のサッカー教室とフットサル普及を、また夫人とともに関西ブラジル人コミュニティというNPOを拠点にブラジル人子弟の支援活動を行っている。

日系ブラジル人の目でみた日本人との社会・文化の差違、両国のサッカーの戦術や発想の違い、日本からブラジルへのサッカー留学生の実態、日本で日系人が暮らし、教育を受けることの苦労、自身が経験したサッカークラブ運営や若手選手の育て方の違和感などを随所で率直に語っており、単なるサッカー大好きな日系ブラジル人の半生記に終わっていない。〔桜井 敏浩〕

                                
〔『ラテンアメリカ時報』 2015年秋号(No.1412)より〕
 

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ブラジル万華鏡 -南米大国の素顔と未来
 

日下野 良武 熊本日日新聞社 20157月 253頁 1,400円+税 ISBN978-4-87755-527-6

 

熊本で大学を卒業、上京してブラジルの邦字紙サンパウロ新聞東京支社長を11年間務め、1982年に本社勤務のためサンパウロ市に移住、専務まで働いた後50歳を機に同社を離れてフリージャーナリストとして、日本の地方紙・業界紙などにブラジル関連記事を送り、サンパウロを終焉の地と定めた著者の9冊目のブラジル・エッセイ集。

日本とブラジルとの美人の尺度の違い、準備状況をひやひやして見ていた2014年サッカーワールドカップ、仰天なことばかりのブラジル社会事情、伝統的なコーヒーと日本人移住者が広めた柿とリンゴ、日系社会の今、問題山積のブラジルの問題と前途、ブラジルと日本・中国のそれぞれの関わりや発想の違いなど、38編の書き慣れた随想によりブラジルへの理解を深めることが出来よう。〔桜井 敏浩〕

                              
〔『ラテンアメリカ時報』 2015年秋号(No.1412)より〕

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アマゾン 森の貌
 

高野 潤 新潮社(新書) 20153月 175 1,400円+税  
 
ISBN-987-4-10-301572-7

1973年からペルー、ボリビアはじめアンデスやアマゾンを歩いている写真家による、アマゾンの様々な「貌(かお)」を紹介した写真と文の一冊。

エクアドルの先住民、森の動物たち、生き物、森や川の素顔を、「吹く、投げる、獲る、食べる、騒ぐ」森の人間の生活を、「襲う、吠える、逃げる、落とす、削ぐ」でジャガー、獏、蛇、猿などの動物、「憩う、締める、噛む、渡る、棲む」では川辺に集まる動物を、「釣る、突く、楽しむ、焼く、放す」ではアマゾンに生きる人達の生業を、「鳴く、狂う、怒る、造る、化ける」では植物や虫などを、「働く、怯える、嗅ぐ、震える」は、雨、暑さ、落雷、天候変化、怪音、香り、絞め殺しの木などの凄惨な生存競争などを、全ページにわたりカラー写真に簡単な解説を付けていて一覧に値する。〔桜井
敏浩〕

                  

〔(社)ラテンアメリカ協会 Webサイト「関連情報」→「図書案内」に収録〕

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アマゾニア 上・下
 

ジェ-ムズ・ロリンズ 遠藤宏昭訳 扶桑社 20153月 上447 800円+税、 下391頁 各800円+税 ISBN978-4-594-07220-9/07221-6

ブラジル・アマゾンを舞台にした冒険小説。米政府機関が送り込み全員行方不明になっていたランド博士の調査隊の米軍特殊隊員が辛うじて生還し伝導所で息絶えたのだが、以前失っていた片腕が蘇生していた。さらに彼が逃れて来た道筋の集落や遺体を空輸した米本国の施設で原因も治療法がまったく不明の伝染病が発生する。彼の足跡を辿りその謎を解くべく米CIA、政府機関、軍、FUNAI(ブラジル国立インディオ財団)職員などから成る調査隊を送り込み、ランド博士の息子の熱帯植物学者ネイサンも父の消息を尋ねるべく参加する。ランド博士がアマゾン先住民のシャーマンの病気等治療知識と薬用植物を製薬化する研究をしていたが、同様のフランスの製薬会社も調査隊の成果を奪うべくアマゾンに詳しい生物学者ファーブルに多額の報酬で傭兵をともない後を追わせる。

調査隊は密林地帯で様々な困難に直面するが、やがて巨大な鰐、ピラニアと毒蛙の中間の両生動物やジャガーの集団に襲われ、護衛の軍レンジャー部隊員はじめ隊員が次々に斃れ、しかもファーブルへの内通者がいて、最後に秘境の地で薬効ある樹液や果実のなる巨木を中心に生活するヤノマミ族の一派の集落に到達した。ここでシャーマンや父を知る村人からの示唆を受け、巨木が多くの動物を根瘤で生きながらえさせ培養して、遺伝子を換えたピラニア・毒蛙動物等を創っていること、樹液と果実により多発癌の発生とその抑制作用、傷などの治療・再生で村人を留まらざるをえないようにしていることなどを知る。かの隊員の腕の再生、村からの脱出後に癌の多発で死んだのはそのせいだったし、父も培養動物の一つとして生きていたのである。

冷酷・非情なファーブルの傭兵隊の襲撃で調査隊員の残り一部と村人の多くは殺戮され、ネイサンたちや村人の生き残った者たちも捕らわれ、巨木には時限装置をセットしたナパーム弾とともにファーブル達は樹液のサンプルを手に入れ、調査隊の責任者オブライエンとその姉の女医を拉致して撤収する。この後、ネイサン達の決死の脱出口、傭兵隊との闘い、姉弟の救出、持ち帰る樹液と果実が世界的に拡大している罹病者の治療に間に合うかなど、波乱の結末へ進む。

まだまだアマゾン地帯には、数多い薬効をもった植物等があり、その一部の使用知識をもった先住民シャーマンがいる一方で、これを製薬化することで莫大な利益を得ようと手段を選ばずに入手しようと考える企業がおり、それらの争奪を奇想天外な科学・医学スリラーを交えた冒険スリラーにしている。 〔桜井
敏浩〕

                              
〔(社)ラテンアメリカ協会 Webサイト「関連情報」→「図書案内」に収録〕

 

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ブラジルの我が家』 
 

 日登美 幻冬舎 20153月 255頁 1,400円+税 ISBN978-4-344-02736-7

日本で二女と双子の男児をもつ元モデルでオーガニック料理教室を催しレシピ本の出版などで活躍、3年前に離婚したが日本に留学してきた8歳年下のドイツ人数学者とともに臨月のお腹を抱えて一家は彼の任地のブラジルへ移住、サンパウロの郊外の町での一年半のはちゃめちゃな生活記。料理と食材、出産、乳幼児を含む5人の子育て、学校や旅行、様々な人との出会いなどを綴ったブログ http://hitomis-kuche.com/blog/ を元に纏めたもの。

不便なことが多く、異文化との共存での違和感などもありながらそれらを冷静に観察し、一家で常に前向きに受け止め生活を楽しんでいる姿が好ましい。〔桜井
敏浩〕
                               

〔(社)ラテンアメリカ協会 Webサイト「関連情報」→「図書案内」に収録〕

 

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ブラジル国家の形成 -その歴史・民族・政治
 

伊藤 秋仁・住田 育法・富野 幹雄著 晃洋書房 2015年3月 249頁 3,200円+税 ISBN978-4-7710-2604-9

 2001年にBRICsの一員としてあらためて注目され、中国の旺盛な買い付けに端を発した世界的な資源需要の高まりにより順風満帆に見えたブラジルだが、13年のサッカー ワールドカップ ブラジル大会を目前におきた大規模抗議デモとその後の通貨下落で、今年の経済成長は大きく落ち込んでいる。このように経済の評価は上下しポルトガル植民地時代からの問題を内在している面はあるが、ブラジル社会の本質はほとんど変わっていない。

本書はブラジルの社会や経済動向を正確に理解するために、「第Ⅰ部歴史編」ではポルトガル人の到達から植民地時代、帝政時代、1889年以降1930年までの共和制時代を通じての国家の形成過程、欧州・日本からの外国移民それぞれの背景と歴史を、「第Ⅱ部現代編」ではヴァルガス大統領登場から軍事政権を経て現代に至る政治の流れとブラジルの人種問題研究の足跡、人種と所得格差の関係を、ブラジル史と地域研究を長年続けてきた3人の研究者が概説している。  〔桜井 敏浩〕
 

〔『ラテンアメリカ時報』2015年春号(No.1410)より〕

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改訂・ラテンアメリカの書棚から -640冊の書籍を紹介
 

寿里順平監修  山本和彦著 上島善之編集 ラテンアメリカクラブ発行 2014年10月 141頁。  頒価 1,000円(税込み)+送料)

  
2001年に発行した初版の改訂版。概説、地理・風土、通史の「総合」から始まり、時代と地域別を組み合わせた「歴史」、「政治・経済」、「社会」、「民族・人権」、「文化・宗教」、紀行、文芸評論、芸術、エッセイ・写真、語学、料理・食生活の「一般」、時代別とコロンブス関係の「史料」の8項目に分類し、これに書名索引を付け、ラテンアメリカ地域全体の邦文図書を紹介した大変な労作。

各紹介書には、基本的な書籍情報にISBNコード、内容構成の概略がそれぞれ掲載されていて、参考文献を捜すのに良い手引きとなっている。 〔桜井 敏浩〕


入手・問い合わせ先

ラテンアメリカクラブ代表 上島善之
FZC03465@nifty.ne.jp Fax 042-365-2616

 

〔『ラテンアメリカ時報』2015年春号(No.1410)より〕

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創造するコミュニティ -ラテンアメリカの社会関係資本
 

石黒 馨・初谷 譲次編著 晃洋書房 2014年12月 208頁 2,500円+税 
ISBN 978-4-7710-2586-8


資本のグローバリゼーションの進展、市場原理主義、ネオリベラリズムによる経済改革の下で、労働市場から排除され職場や地域の社会集団での繋がりや社会参加の機会を失うという深刻な問題が起きている。国家はこの「社会的排除」の問題に十分対処出来ないばかりか、救済の責任を放棄している。そこで社会的に排除された人々をコミュニティによって包摂することが重要になることから、ラテンアメリカ各地の事例を「脱伝統的コミュニティ」としてメキシコのチアパスのサパティスタ運動、在日ブラジル人の宗教コミュニティ、「都市型」としてベネズエラの都市貧困コミュニティとメキシコのチョルラの都市祭礼コミュニティ、「農村型」としてメキシコ南部のマヤ教会の農村コミュニティとメキシコ植民地期の先住民コミュニティの三つに分類して、関西を中心にした7人の研究者が分析した論集。 〔桜井 敏浩〕
 

〔『ラテンアメリカ時報』2015年春号(No.1410)より〕

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神戸移住センターから見た日本とブラジル
 

黒田 公男 神戸新聞総合出版センター 2014年11月 221頁 2,500円+税 
ISBN 978-4-343-00815-2)

関東大震災の2年後1925年に海外移住が国策とされ、28年に神戸に移住者保護のための施設「国立移民収容所」が開設された。海外への移住者はここで1週間余滞在しオリエンテーリング、健康検査や予防接種などの出発前の準備を行った。この収容所は後に名称を変えて大戦が始まった41年にいったん閉鎖されたが戦後の移住開始で52年に再開され64年に現在の名称になった。71年に神戸港から最後の移民船が出て93年には国策としての海外移住は終わったが、神戸市に払い下げられたセンターを海外移住の歴史を遺すべく2009年に改装が終わって「神戸市立海外移住と文化の交流センター」として開館、中に「海外移住ミュージアム」も設けられ、運営は一般財団法人日伯協会が行っている。

本書は、ブラジル移住の黎明期から、1926年神戸に日伯協会が誕生し最初の大事業として移民収容所建設を行ったことから、戦前の同所の使われ方、ブラジル移住を描いた石川達三の小説『蒼氓』の背景、戦後のブラジル移住再開の舞台裏を明かし、ブラジルでの日本移民の受け入れ、移民船の歴史、ブラジルでの日本人移住者の活躍や移住ミュージアムの意図など、神戸新聞勤務時代から移民研究を続けてきて、長く移住センターに関わってきた著者(日伯協会理事)ならではの記録である。 〔桜井 敏浩〕

〔『ラテンアメリカ時報』2015年春号(No.1410)より〕

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南米につながる子どもたちと教育 -複数文化を「力」に変えていくために
 

牛田 千鶴編 行路社 2014年8月 261頁 2,600円+税 ISBN 978-4-87534-300-4)


日本に暮らす外国人の公立小・中・高校生等は7万人超、うちポルトガル語とスペイン語話者が約46%を占めるといわれる。本書はこれら南米につながる子供たちを取り巻く教育環境を探り、日本各地に出現した複数文化の保持が本人たちにとってはもとより地域社会にとっても有益であるとの視点から、教育への行政・学校・支援団体の取り組みを日本語および母国語教育を含めてその課題を論じ、また日本で育ち学んだ南米系の子供たちの体験を語らせることにより、困難を乗り越え次の段階に進もうとする後に続く子供たちへの前向きなメッセージを伝えようとするものである。

第一部「言語文化と教育をめぐるエンパワメントの取り組みと課題」では、多様化する子どもたちと学校教育の現場、言語環境、言語教育と学習支援体制、多文化共生、日本の学校に行っていない子どもたちへの支援、多文化アクターを目指すブラジル・ペルー人学校とそこでの日本語教育、コラムでブラジルならびにペルーと日本の教育事情比較を紹介し、第二部「日本で育った南米につながる若者たち」では子ども時代を振り返った7人の南米系若者が体験と軌跡を述べている。  〔桜井 敏浩〕
 

〔『ラテンアメリカ時報』2015年春号(No.1410)より〕

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ブラジルからコンニチワ!
 

 いまい はるみ 東京図書出版発行 リフレ出版発売 2014年11月 271頁 1,500円+税
 ISBN978-4-86223-804-7)

  
略歴が載っておらず、自己紹介もないのだが、津軽出身でブラジルで生活した経験のある父母と20歳代まで日本にいて、ブラジルに移住し50年超、サンパウロ中心から今は近郊の町(CTA-ブラジル空軍航空宇宙技術センター)があり、パナソニック、日立、ホンダ、マツダ、トヨタも出ている、おそらくサンジョゼ・ドス・カンポスに住むと思われる著者が、ツイッター風に各1頁ないし1頁半程度で、身辺の生活を綴ったエッセィ集。

ブラジル人の楽観的で人生を楽しむ生き方、性格から気候、65歳以上は無料になる市内バス・地下鉄等の乗り物、ブラジルに住む日本人、生き物、果物、花など、日頃の観察に海外旅行の印象も加えて、さらっと書き溜めたた200編近い身辺雑記集。 〔桜井 敏浩〕

〔(社)ラテンアメリカ協会 Webサイト「関連情報」→「図書案内」に収録〕

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一粒の米もし死なずば』  
 

深沢 正雪 - 無明舎出版 2014年月 219頁 1,900円+税


1908年に日本からの最初の組織的なブラジル移民が笠戸丸で入ってから5年後に、食糧が不足していた日本に米を供給することを夢見たイグアッペ植民地が拓かれた。サンパウロ市南西約200kmに設けられたこのレジストロ地方の植民地建設には、桂 太郎はじめ明治時代の政治家や実業界の大物も関わった国策でもあったのである。だが、試行錯誤した米作はうまくいかず、34年にセイロン島からこっそり持ち込まれた紅茶により戦後ブラジルでの「紅茶の都」といわれるまでに至ったものの、20世紀末から今世紀に入って為替の変動により国際競争力が衰え、現在では一貫生産茶家は天谷製茶だけになったという、波瀾万丈の歴史があるのだが、なぜか公式日本移民史ではこれまであまり言及されてこなかった。

本書はサンパウロの邦字紙『ニッケイ新聞』の編集長が、日本移民のレジストロ地方入植100周年を迎えたのを機に、100超の文献資料に目を通し現地に足繁に通って、同紙に9か月間にわたって連載したルポルタージュ127本を集大成した、波乱万丈の苦闘の歴史とその百年後の到達点までの気骨ある明治の日本人南米移民史の舞台裏にせまる労作。  〔桜井 敏浩〕


〔『ラテンアメリカ時報』2014/15年冬号(No.1409)より〕

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図説ブラジルの歴史』 
 

金七 紀男 - 河出書房新社 2014年10月 127頁 1,850円+税

   
大航海時代の1500年にインドに向かうポルトガル船団に「発見」され、300年の植民地時代を経て1822年に独立し、日本とも移民、投資、貿易等で関係の深いブラジル通史を多くの図版、地図、写真、さらには風刺画も加えてビジュアルに分かりやすく解説している。

植民地期、独立後のコーヒー経済に支えられた近代、1930年から20年間統治したヴァルガス政権、64年から21年間続いた軍事政権と民政復帰後の新生共和制の現代までの解説に加えて、キロンボ(逃亡奴隷の共同体)、カヌードス戦争(宗教的指導者に率いられた農民主体の民衆運動)、大土地所有制に対抗する土地無し民運動、江戸時代に最初に立ち寄った日本人、ブラジルサッカーを支えた黒人と移民などのコラム、海図や宗教画以外の図絵に関心が薄かったポルトガル人に替わって貴重な図版を残したのは、17世紀に一時北東部を占領したオランダ人や欧州からの調査来訪者だと指摘した著者のあとがきに至るまで、ブラジルの歴史を知るうえで面白く読める。    〔桜井 敏浩〕
 

〔『ラテンアメリカ時報』2014/15年冬号(No.1409)より〕

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ラテン・アメリカ社会科学ハンドブック 
 

ラテン・アメリカ政経学会編 - 新評論 2014年11月 293頁 2,700円+税

    
ラテンアメリカの政治・経済・社会分野の研究者によるラテン・アメリカ政経学会(JSLA-現在会員数約150人)が創立50周年を迎えたのを機に企画された包括的な概説書。26人の執筆者がそれぞれの専門を活かして 1.マクロ経済の安定と成長、2.経済開発の戦略と持続性、3.社会的公正、4.国際関係、5.民主主義の諸相、6.社会的排除と包摂、7.市民社会と社会運動、8.人の移動の8章24項目について、それぞれの章毎に文献リストを、また巻末にインターネットでアクセス出来るラテンアメリカ研究ソースのガイドと簡単な人名・事項索引を付けている。

ラテンアメリカの基礎知識を網羅するとともに、この地域の最近の政治、経済、社会に生じている新たな変化の重要なトピックスを分かりやすく解説していて、ラテンアメリカへの理解を助けるまとまった手引きになっている。  〔桜井 敏浩〕
 

〔『ラテンアメリカ時報』2014/15年冬号(No.1409)より〕

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ラテンアメリカの教育戦略』 
 

アンドレス・オッペンハイマ- - 渡邉尚人訳 時事通信社出版局 2014年12月 355頁 2,800円+税              〔渡邉 尚人-訳者、在ウルグアイ日本大使館参事官〕

 
本書は、今や米州で最も人気と発信力のあるジャーナリストにしてオピニオンリーダーの『マイアミヘラルド』紙名物コラムニスト、オッペンハイマー氏の第二弾である。第一弾の『米州救出』(2011年 筆者訳 時事通信社)では、経済発展に焦点をあてたが、本書では、教育に焦点をあて、世界の新興国とラテンアメリカを比較し、ラテンアメリカが採るべき教育戦略につき実に興味深い示唆を与えている。

同氏は、急成長する世界の新興国を取材し、多くの要人インタビューを行い、その進歩と発展の秘密が教育にあることを幅広い観点から明らかにしてゆく。ひたすら教育投資を行い国際競争力でトップとなったフィンランド、母国語の代わりに英語を第一公用語としてグローバル化したシンガポール、高等技術教育を最優先して世界の情報サービス国となったインド、大学教育を外国に開放し発展する共産主義中国、凄まじい教育熱の韓国、知られざるスタートアップの国イスラエル、継続的な技術革新国チリ、教育革新国ウルグアイ等が紹介され、これら新興国の教育、研究投資の驚くべき実態が明らかにされる。

そして、イデオロギーや主義に固執し、天然資源への依存を続け、知識経済の時代に遅れをとっているラテンアメリカに対し、進歩のための12の鍵を提案するのである。本年夏の安倍総理大臣の歴訪で俄然注目が集まっているラテンアメリカを深く知るために極めて有益な図書といえよう。 〔桜井 敏浩〕


〔『ラテンアメリカ時報』2014/15年冬号(No.1409)より〕

 

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アマゾンがこわれる AMAZON -CRISIS OF MEGA-BIODIVERSITY IN AMAZON』 

  

藤原 幸一写真・文 ポプラ社 2014年10月 79頁 1,800円+税

    
『ガラパゴスがこわれる』(2007年)も出している野生生物の生態や地球環境問題を追う生物ジャーナリストが、エクアドル領ナポ川支流域を中心にアマゾン河上流域で撮ったピューマ、ジャガー、カイマン(鰐)、猿などの動物、オオハシやハチドリ、インコ等の鳥類、魚、昆虫、花や樹木、大自然の光景の写真に、アマゾン河で生きる人々の生活、石油開発や農牧業のための土地開発で急速にかつ大規模に破壊される原生林の姿を紹介、「人間はいったい、どこに向かっているのだろう?」と提起している。巻末に各写真の英文説明も付されている。〔桜井 敏浩〕
                        

〔(社)ラテンアメリカ協会 Webサイト「関連情報」→「図書案内」に収録〕

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ジャンガダ

 ジュール・ヴェルヌ 安東次男訳 文遊社 2013年8月 471頁 2,800円+税


「ジャンガダ」とはアマゾン河を下る筏のこと。アマゾン上流ペルーのイキトスにひっそりと暮らす大農場主ホアン・グラールは、娘ミンハがベレン出身の医学生マノエルと結婚することになったことから彼の地で結婚式を挙げさせるため、特産品の販売も兼ねて巨大な筏を建造して、妻や息子ベニート、リナほか大勢の使用人を乗せて河を下る。途中上陸した密林で拾い上げた旅の理容師フラゴッソを同道させる。さらにホアンにつきまとう謎の男トレスを乗せたことから、ホアンは過去にミナスジェライス州のダイヤモンド輸送隊が襲われた事件で極秘の輸送スケジュールを強盗団に漏らした無実の嫌疑をかけれ死刑執行直前に脱走したブラジル人である過去を強請られるが、無実を信じて弁護してくれ今はマナウス判事を頼って秘めた過去と決別するために自首し再審を求める決意をしていたホアンは、これを拒否したことからマナウスの警察に密告され逮捕され、また判事が直前に病死し、頑なな性格のハリケス判事が職務を継いだことを知る。

罪をなすりつけた悔恨から書いた真犯人の覚書は死の直前に同僚だったトレスに託されたのだが、暗号で書かれていたその文書と暗号の解読鍵を自分の欲を達成するために使ったトレスはベニートとの決闘で刺殺され、屍体は文書とともにアマゾン河の底に沈む。ホアンには無実を主張する物的証拠が無くなったため再審は行われず死刑執行命令がリオデジャネイロ裁判所から戻って来るまでにと、ベニート達は潜水具を使って必死にトレスの屍体を捜し、ついに文書の入った鞄を回収するが、肝心の文書の暗号は鍵がないため今はホアンの無実を信じるようになったパズル好きのハリケス判事をもってしても解読出来ないまま、ついに死刑執行命令が届いてしまう。しかし、フラゴッソがかつてのトレスとの出会いの記憶を呼び起こしトレスが属していた上司を訪れ、真犯人の名を聞き出してハリケス判事に伝えたことから暗号解読の鍵が見つかり、刑執行の直前に無実が明らかになり汚名は濯がれた。ジャンガダはイキトスから4か月半の航海の後やっと目的地ベレンの到着、船上でマノエルとミンハ、フラゴッサとリナの結婚式が行われ、筏の木材を含めた物品販売も済ませたホアン一家と2組の新婚カップルは、定期船でイキトスに戻る。

さまざまな事件の遭遇と手に汗を握らせる冒険、さらに暗号解読の展開を、原作の挿絵84点とともに、アマゾン河航行の詳しい描写や密林の内部の様子、ジャンガダの組み立てと航海の模様などを詳細に描写しているが、ヴェルヌ自身は一度もアマゾン地域を訪れたことはなく、文献と現地を知る人たちからの聴取で書き上げたという。〔桜井 敏浩〕

〔(社)ラテンアメリカ協会 Webサイト「関連情報」→「図書案内」に収録〕
 

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ブラジル人の処世術 -ジェイチーニョの秘密』 

武田 千香 平凡社(新書)20146月 211頁 760円+税

   
jeito
(方法、手段、便宜)の縮小形jeitinhoは簡単にいえば決められたルールに触れても要領よく臨機応変に対応してちゃっかりと目的を達することを指す。日本人の多くがもつ順法精神や几帳面さからみればブラジル人はずるいとか規則にルーズと見えることも少なくないが、ジェイチーニョこそブラジルらしさであり、ブラジルで生活していくために欠かせない流儀で、いわばブラジル人のアイデンティティにもなっているという。

社会の「規律・秩序」と個人をまず考えその「都合・必要性」との間のグレーゾーンとして、社会認知されているこのジェイチーニョの事例や小説での取り上げ方、パウリスタ(サンパウロっ子)とカリオカ(リオデジャネイロっ子)の感覚の比較、それらの背景にある歴史構造、ブラジル文化の根底を流れるサッカー、カポエイラ、サンバ、ボサノバでのリズムのずらし効果など、多面的に論じていて、ブラジル人、ブラジル社会を本当に理解する上で面白い解説書。〔桜井 敏浩〕
  

〔『ラテンアメリカ時報』2014年秋号(No.1408)より〕

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イッペーの花 -小説・ブラジル日本移民の「勝ち組」事件 

 

紺谷 充彦 無明舎出版 20147月 230頁 1,700円+税

   
太平洋戦争直後のブラジルで、ブラジル政府の規制の中で本国との情報を遮断された日系人社会で、敗戦を連合国の謀略だと負けたことを信じたくない人達の「勝ち組」による敗戦を認識した「負け組」の人達へのテロ、「勝ち組」の素朴な移民たちの帰国願望や皇室への畏敬の念につけ込んだ偽宮様への寄進や日本からの迎えの船で帰るための船賃などの口実で金品を巻き上げる詐欺師たちが横行した。

現代の日本でその日暮らし的に堕情な生活をする主人公に、ブラジル移住から戻った祖母の遺品の手紙の束と2万円が渡され、自分の血筋にも関係がありそうだとブラジルへ渡った主人公は手紙の差出人を探し老人ホームで祖母と親しかった老人に会い、彼が「勝ち組」のテロに荷担し偽宮様に欺され自分の農場を売ってその信奉者の農場運営に努め、許嫁と内心思っていた祖母を奪われた過去を知る。

実際の当時の日本人同士の凄惨な抗争と詐欺事件を題材に小説化したもので、著者はブラジルに渡りサンパウロで邦字紙の記者を務め帰国した。〔桜井 敏浩〕

                                   

〔『ラテンアメリカ時報』2014年秋号(No.1408)より〕

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音楽でたどるブラジル 

Willie Whopper  彩流社 20145月 87頁 1,900円+税

 
ブラジルにはサンバ、ボサノヴァだけでなく多くの「ご当地ソング」がある。ブラジルの北から南の721曲を選んで、曲の紹介やエピソ-ド、ゆかりの場所とそこでの名所、名物料理など、その歌が収録されているCDとともに紹介している。沢山のカラー写真とそれぞれの町での歌の解説を通じて、楽しくブラジルを理解する一助になる。〔桜井 敏浩〕

                                

〔『ラテンアメリカ時報』2014年秋号(No.1408)より〕

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ブラジルの環境都市を創った日本人 -中村ひとし物語

服部 圭郞 未來社 2014年3月 258頁 2,800円+税

  
ブラジル南部のパラナ州都クリチバ市は、1966年に制定した都市構造改革マスタープランにより一貫した都市計画を実現し、土地利用・住宅のゾーニング、歴史景観の保存、放射状と環状道路の整備と公共バス網の整備、緑地・公園の整備などからゴミの分別収集、子供たちへの環境教育の充実など、ブラジルのみならず世界的にも環境都市、都市計画の成功例と高い評価を受けてきた。ここに至るまで、特に72年から市長を92年の間に3期延べ12年市長を務めた都市計画の専門家であるレルネル市長(後にパラナ州知事に)の手腕に依るところが大きいが、その影に日本で農学部造園科の大学院まで出てブラジルに移住した中村 矗(ひとし)という一人の日本人ブラジル帰化技師がいた。

本書はクリチバの都市造りを紹介した著者の『人間都市クリチバ ― 環境・交通・福祉・土地利用を統合したまちづくり』(学芸出版社 2004年4月)に続く、同市の公園部長、環境局長、後にレルネル知事に誘われパラナ州環境局長に就いた中村ひとしの物語である。

その生い立ちからブラジル渡航、クリチバ市職員として街路樹・公園整備の実績が認められ、自然生態的な動物園や環境市民大学の建設、スラム街でのゴミ収集を促すための市周辺農家からの余剰農産物を

買い上げて分別したゴミと交換する緑との交換プログラムなど、様々なアイディアと行動力があったこと、実行することを何よりも優先した、海外で日本人の勤勉さと自然・環境との調和をブラジルで活かせた都市計画に大きな実績を挙げた姿を紹介している。 〔桜井 敏浩〕

〔『ラテンアメリカ時報』2014年夏号(No.1407)より〕

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マラカナンの悲劇 ― 世界サッカー史上最大の敗北
 

沢田 啓明 新潮社 2014年5月 304頁 

2014年7月8日、ブラジルが招致したワールドカップ大会準決勝で、主催国ブラジルはサッカー王国として最優勝候補に挙げられながらベロオリゾンテでドイツに歴史的大敗を喫した。この屈辱は、ブラジルが初めて招致した1950年ワールドカップでの敗戦-「マラカナンの悲劇」をあらためて思い起こさせた。

その時7月16日、新設のリオデジャネイロの20万人が入るマラカラン・スタジアムでの決勝戦でウルグアイと対峙した。引き分けても優勝だったが、ブラジルの勝利を信じていた大観衆はまさかの逆転負けに慟哭した。ブラジル人の脳裏に今も深く刻まれた悲劇を、ブラジル在住のサッカージャーナリストによる迫真のノンフィクション。

10年に及ぶ取材により、南米サッカーの発展史、各国サッカーの特色、この悲劇の背景とその後の関わった選手達の哀しき人生に至るまでを描いており、南米サッカー史や各国サッカーの違いも分かる時宜を得た解説でもある。〔桜井 敏浩〕
 

〔『ラテンアメリカ時報』2014年夏号(No.1407)より〕
 

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ブラジル・ポルトガル語ビジネス会話フレーズ辞典
 

川上 直久+イスパニカ 三修社 2014年6月 512頁 3,000円+税

  
ブラジルで長年商社の第一線で様々なビジネスの場で活躍してきた著者による実際的な手引き書。17の「場面別会話」2,200のフレーズを日本語・ブラジル語(片仮名併記)・英語で、「ビジネス文書」は定型表現、用件、挨拶・案内状、慶弔・見舞い・礼状、ファックスや履歴書、見積書、請求書や招待状のひな形を、「資料編」では略語、業種や組織・役職名等に必要最小限のブラジル語文法、和葡・葡和ミニ辞典まで、ブラジル・ポルトガル語圏でのビジネスで必要な基本的な解説がコンパクトに収録されている。

同じく『スペイン語ビジネス会話フレーズ辞典』イスパニカ(三修社 2013年12月 )とともに、ラテンアメリカでビジネスに関わる際に手元におきたい有用な辞典。  〔桜井 敏浩〕

〔『ラテンアメリカ時報』2014年夏号(No.1407)より〕
 

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川と川は人と人を結ぶ Los rios nos unen-Integracion f
luvial suramerica

Corporacion Andes de Fomento 竹内洋市訳 2014年5月 上巻103頁、中巻89頁、下巻86頁 非売品

       
CAF(アンデス開発公社)が纏めた 南米の3大河川であるオリノコ、アマゾン、ラプラタ河の舟運の現状を詳細に調査したレポート(非市販本 1998年)の飜訳。

訳者は、建設省OBで元JICAのベネズエラ環境・天然資源省派遣専門家。日本語訳(図表入り。上・中・下の3部構成)はCD版で、訳者が関係者に配布しているが、このほど大町利勝氏により2014年6月12日付で国際建設技術協会のデーターベース「River-ML Data Base Service」に収録され、公開された。

訳者によれば、原本“Los rios nos unen”は、インターネット上で公開されており、以下の手順で閲覧することが出来る。

(1)インターネットで Google 検索エンジンから、「Los rios nos unen 」と記入し検索。
(2)〔PDF〕INTEGRACION FLUVIAL SURAMERICA を選択。
(3) Los rios nos unen
- INTEGRACION FLUVIAL SURAMERICA のpdf (全242頁)が開く。

原書が書かれてから15年が経過しているが、南米の3大河川の周航状況についての詳細なレポートであり有用な資料。 〔桜井 敏浩〕
 

〔(社)ラテンアメリカ協会 Webサイト「関連情報」→「図書案内」に収録〕

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ブラジル、住んでみたらんでみたらこんなとこでした!-ようこそ!おいしい食と可愛い雑貨の国へ

岡山 裕子文・写真 清流出版 2014年5月 150頁 1,500円+税


2010年から夫君の赴任でサンパウロに住む元TVアナウンサー・キャスターによる、ブラジルの姿、実用的な情報を、著者が撮った沢山の写真とともに楽しく紹介した一冊。

ブラジルで出産も経験した日本の主婦が、「食」事情、ファッションと雑貨、住まい、交通事情、サンパウロ・リオデジャネイロ・イグアス・サルバドール観光の見所、サンパウロのお薦めスポット、ブラジル人の生き方などを多数のカラーとともに解説、さらにサッカー観戦プチガイドや、ポルトガル語のプチレッスンも収録している。  〔桜井 敏浩〕

〔(社)ラテンアメリカ協会 Webサイト「関連情報」→「図書案内」に収録〕

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ブラジルのことがマンガで3時間でわかる本 改訂版』 

吉野 亨文・マンガ 飛鳥 幸子 明日香出版社 210頁  2014年5月1,600円+税


ブラジルに商社マンとして6年間駐在した、2013年からサンパウロに在住し物流事業に邁進している著者が。この10年のブラジル経済の発展と深海油田等の資源、地下水源もある農業生産からインターネット普及に至るまでの大国の可能性を、世界とブラジル、社会、経済、企業、政治・法律、文化、生活の6章66項目もの解説を行いイラストと漫画を付けたもの。

2006年に出した初版 http://latin-america.jp/archives/5547 に、世界経済の中で存在感が増してきたこと、ブラジルの課題である将来の人口構成と年金、教育、インフラ整備、税制簡素化と税負担軽減を挙げ、企業紹介では鉱業コングロマリットのバーレ、石油公社ペトロブラス、食品のサジア、航空機のエンブラエール、化粧品のナチュラ、菓子のガロートに加えネット販売のブスカペを加えている。「生活」は住んでいての危機管理の具体的な対策に力点を置いて解説している。

「マンガでわかる」と謳わないでも、タイトルから受ける印象よりは内容のあるブラジル入門書である。
[桜井 敏浩]

〔(社)ラテンアメリカ協会 Webサイト「関連情報」→「図書案内」に収録〕

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遠い眼差し -郷愁のブラジルとポルトガル 松井正子写真集

松井 正子 窓社 2014年4月 64頁 2,600円+税

 

これまでポルトガル、モザンビーク・アンゴラの写真展を開いている写真家の作品集。ポルトガル編に31、ブラジル編にはリオデジャネイロ、レシーフェ、サルバドール、サンパウロ、オーロプレート、フォスドイグアス各地の21の写真が載せられている。副題の「郷愁」に「サウダージ」と振り仮名を付けてあるように、すべてモノクロの写真は、師匠だった写真家の荒木経惟氏の影響を思わせ、なにか懐かしい社会、家族、知人たちや想い描く故郷を感じさせる。 〔桜井 敏浩〕
 

〔(社)ラテンアメリカ協会 Webサイト「関連情報」→「図書案内」に収録〕

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ワールドカップが100倍楽しくなるブラジル・ジンガ必勝法
 -ブラジルから学ぶ人生をとことん楽しむ秘訣!

ユキーナ・富塚・サントス セルバ出版発行 創英社/三省堂書店発売  2014年6月 191頁 1,500円+税


“ジンガ”とは、ブラジル・サッカー選手の巧みな足捌きなどの身体能力、格闘技カポエイラなら基本のステップのことだが、それ以外にも人生の困難をうまく躱し、楽しみながら創造するといった意味合いもある。
日本の選手も応援する人たちもこれを取り入れれば、実力を発揮して勝ち上がることも可能になると、ジンガを通じてブラジルの文化や社会、ブラジル人の巧みな人生哲学を学ぼうと説く。

サルバドール生まれのバイアーノ(バイア州人)と結婚して10年近くになる筆者のブラジル見聞と東京等でのブラジル人との生活を通じて、ブラジル人の考え方や姿を伝える。ハプニングを「問題」と捉えずに「チャンス」と見る、それをいかに「躱す」かのテクニック、これを楽しんで開発する勇気と知恵こそジンガ魂との指摘は、ブラジル・サッカーのみならずブラジル人の生き方を端的に表現している。 〔桜井 敏浩〕
             

〔(社)ラテンアメリカ協会 Webサイト「掲示板」→ 「図書案内」に収録〕
 

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踊る!ブラジル -私たちの知らなかった本当の姿
 

田中 克佳 小学館  2014年3月 143頁 1,500円+税


蔑まれてきたアフロ・ブラジル音楽が1930年代のヴァルガス政権により国威発揚の思惑から持ち上げられ、国民の熱狂の対象になったというサンバの奇跡。美しいビーチで男も女も美しく日焼けした肌を大胆に露出する人たち。白い金ともいわれる砂糖や鉄鉱石、「赤いダイヤ」コーヒーなど資源に恵まれているが、いずれも搾取構造下にある労働者。カーニバルの大掛かりなパレードは世界一のプロデュース術によって披露され素晴らしい美学となる。何かが変わるとの予感を感じさせたルーラ大統領の出現。日系人を含む様々な人種と文化を受け入れて多人種の一大複合国家を形成「化学反応」を起こす国家。かつてのミナスジェライス州でのゴールドラッシュが生んだ「文化の街道」の痕跡。自動車、ファッション、航空機産業とエタノール生産などで近未来に世界の舞台に立てるかなど、ブラジルの魅力を実に美しいカラー写真で綴っている。〔桜井 敏浩〕
                            

〔(社)ラテンアメリカ協会 Webサイト「掲示板」→ 「図書案内」に収録〕
 

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ブーゲンビリア 遙かなる大地 上・中・下

中島 宏 文藝春秋企画出版部発行 文藝春秋発売 201112月・20127月・20132月 559頁・427頁・483頁 1,800円・1,700円・1,700円+税

1909年に28歳で商社員としてリオデジャネイロへ渡った出口峯一郎は、出口商会を興して日本雑貨の輸入販売を中心に事業を拡大していく。第一次世界大戦へ向かう激動の時代に事業に励む中で、ベルギー公使の子どもの子守兼家庭教師をしているドイツ系のマリエッタとの9年越しの恋を実らせて結婚するが、状況の大きな変化の下での商社経営を工夫し、大病を克服したにみえたところで、結核療養所に入っているマリエッタに22年に突然峯一郎の急死の知らせが届く。その後のマリエッタと一族の現在に至る姿を、実在する移民の記録に著者の想像を交えて描いた長編伝記小説。

著者自身も父親の企業移民とともにブラジルに渡り、畜産その他の事業を手広く展開しているサンパウロ在住の企業家である。 〔桜井 敏浩〕

〔『ラテンアメリカ時報』 2014年春号掲載 ()ラテン・アメリカ協会発行〕

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「日系人」活用戦略論 -ブラジル事業展開における「バウンダリー・スパナー」としての可能性]

古沢 昌之  白桃書房 201312月 268頁 3,500円+税

国際経営論・国際人的資源管理論を専攻し、グローバル化時代の企業経営を研究する著者が、日本企業による現地事業への「海外派遣」と「現地化」をめぐる問題から、人材カテゴリーとしての「日系人」に着目してブラジルでの日系人社会の状況、デカセギの状況と成果を指摘し、さらに日本企業のブラジル投資と現地経営のレビュー、それらの人的管理の実証分析を行い、副題にある在日日系人のブラジル事業展開における「バンダリー・スパナー」としての可能性を分析し、さらにサンパウロ大学の日系人学生の外国語能力や生活状況・意識を調査し、ブラジルと日本各地の日系人集住地でのヒアリングを行った上で、日本企業がブラジルでの事業展開における競争で優位に立つための貴重な人的資源となりうる日系人の活用策を理論と実証で論述している。  〔桜井 敏浩〕
 

〔『ラテンアメリカ時報』 2014年春号掲載 ()ラテン・アメリカ協会発行〕

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上塚司のアマゾン開拓事業

上塚 芳郎・中野 順夫 天園 201311月 288頁 非売品


アマゾン河流域に日本人が入植した経緯、彼らの拓植教育施設設置、植民地運営の曲折、ジュート(黄麻)栽培、アマゾニア産業会社の清算に至るまでを、アマゾン開拓の中心になっ
奮闘した上塚 司の事績を中心に、丹念に多くの資料に当たり関係者からの聴取を行って纏めた壮大な日本人アマゾン開拓通史。

上塚の生い立ち、植民思想と、ヴィラ・アマゾニア建設、アンディラー模範植民地、アマゾニア産業株式会社、ジュート産業など、戦前の日本人アマゾン移民史を補う貴重な資料。編者の芳郎氏は司の孫で、本書は上塚家の自家出版。中野氏は北海道出身、ブラジルで農業を営み、『コチアの解散』などを纏めている。〔桜井 敏浩〕                             


(入手は上塚芳郎氏 Fax 03-5269-7445
メール
Mail: muetuka@hij.twmu.ac.jp へ、
頒布価格13,000円+送料340円)
 

〔『ラテンアメリカ時報』 2014年春号掲載 ()ラテン・アメリカ協会発行〕

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南米への移民 コレクション・モダン都市文化 93

細川 周平 ゆまに書房 201312月 684頁 18,000円+税

 

大正から昭和初期に花開いたモダン都市文化の様々な記録を再録し、モダニズム研究の総合資料集全100巻の一冊として「移民」を取り上げ、3点の文献を復刻し、編者による解説と詳細な年表を付したもの。日本の近代化は、ハワイへの移民に見られるように、組織を通した大規模で中長期的な労働人口移動である海外移民と背中合わせであった。農村部から都市部への移住だけでは吸収できない人口が、国策として国が直接・間接に関与して行われ、その宣伝のために数少ない成功談を紹介する移民奨励本も多く出版された。

本書では、永田 稠(しげし)日本力行会会長による南米視察巡回写真集である『南米日本人写真帖』(1921年発行、日本力行会)、短期間に農園経営で成功して帰国した古澤清外の『ブラジル移民としての五年間』(29年刊の海外興業(株))、メキシコに留学した後外務省に入り、25年間を中南米で過ごした外務省きっての中南米通であった甘利造次の『コロンビヤ国事情』(30年、植民同志会刊)をそれぞれ写真復刻し全編収録している。 

永田は開拓精神をもった海外発展を推進した日本力行会の会長を長く務め、北米、南米等での拡大を目指し、1920年に文部省の命で北米とともにブラジル、アルゼンチン、チリ、ペルー、パナマへ在外子弟教育調査のために3ヶ月回った視察を写真で綴った記録である。

古澤は1922年に一家でブラジルに渡った移民だが、英語ができポルトガル語も習得して、1年間の契約農生活後自立して農園経営に成功し、5年の滞在で長女夫婦を残して帰国した模範的成功者で、より多くの移民希望者をと意図する移民業界大手企業が刊行したものである。甘利が記述したコロンビアは、1908年に外交関係が出來、移民も29年以降戦前には約200名しか渡航していないが、有望移民先としては注目され、農業のみならず商業や貿易の可能性についても触れ、当時外務省の中南米通が農、鉱、工業、貿易にいたる実務環境、移民の生活訓に至るまで記述している。

異なる3つの視点から記述した移民関係刊行物の再刻と解説、整理された年表は、移民史の貴重な記録である。  〔桜井 敏浩〕
                         

〔『ラテンアメリカ時報』 2014年春号掲載 ()ラテン・アメリカ協会発行〕



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社会自由主義国家 ブラジルの「第三の道」

小池 洋一 新評論 20143238頁 2,800円+税

不完全な市場であったこともあるが、政府と市場のいずれをも社会によって規制し、社会に適正に埋め込むための開発モデルとして、イノベーションを通じて経済をグローバルな市場に統合する一方で、教育や社会保障などの社会政策、科学技術政策を国家が担う経済体制、1990年以降模索されてきた国家・市場・市民社会からなる多元的な制度としての「社会自由主義国家」を追求しているブラジルの挑戦を探ろうというもの。

ブラジルの開発政策の変遷と「社会自由主義国家」の枠組みを議論し、それを支える参加型予算、連帯経済、CSR(企業の社会的責任)といった制度、その経済的基盤となり、持続的成長を左右する産業政策、科学技術・労働政策を持続的で公正な成長という観点から論じ、成功例といわれるクリチバ市の都市政策の虚実と社会包摂の観点からブラジルの都市政策を検証している。このブラジルで進められている国家改革への挑戦は、日本の改革に生かすべき教訓を学ぶことが出来ると著者は主張している。
〔桜井
敏浩〕


〔『ラテンアメリカ時報』 2014年春号掲載 ()ラテン・アメリカ協会発行〕


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驚きのアマゾン -連鎖する生命の神秘
 1973年からアマゾン、アンデスへ撮影に通っている写真家のアマゾン紀行。
     

高野 潤 平凡社(新書) 2013年12月 231頁 800円+税

初期のアマゾン紀行で多くの現地のガイド等に導かれ、経験不足からの失敗の中から次第にアマゾン生活のコツを体得していくことから始まり、雨期・乾期でまったく異なる自然と動植物の様相を、川・湖、樹木と森、土と地表の世界の各章で紹介し、さらには危険な臭気や大雨の前兆が感じられるようになった空気と、鳥や動物が見せる人との距離やアマゾン独特の気配など、長年の撮影行での体験をペルーアマゾンを中心に綴っている。  〔桜井 敏浩〕
 

〔(社)ラテンアメリカ協会 Webサイト「掲示板」→ 「図書案内」に収録〕

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さがし絵で発見! 世界の国々 12 ブラジル
 

稲葉 茂勝 乙牧 三喜子絵 多田 孝志監修 あすなろ書房 2013年12月 32頁 
2,800円+税

     
国が違えば文化も人々の考え方もまったく異なるが互いに理解しあうために、本書ではブラジルについて様々な視点から学ぶため、最初に「さがし絵」でブラジルと日本の「ちがいとおなじ」を見つけることから入り、ブラジルの予備知識、ブラジルってどんな国、大都市、世界中からやって来た人々、熱帯雨林から乾燥地帯まで多彩な土地、人々の日常生活、食生活、芸術・文化、教育、ポルトガル語、日系人を通じての日本との深いつながり、農牧・工業・資源・エネルギーに至るまでを、子供向きに易しく解説した児童書。 
  〔桜井 敏浩〕

〔(社)ラテンアメリカ協会 Webサイト「掲示板」→ 「図書案内」に収録〕

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ドン・カズムッホ 

マシャード・ジ・アシス著  武田千香訳(光文社 古典新訳文庫 
2014年2月 556頁 1,400円+税)


語り手の男ベント・サンチアーゴが亡妻カピトゥと親友エスコバールの不義を確信して、ついには妻子ともどもスイスに追いやるまでの経緯を綴った、恋と疑惑の物語。ブラジルの文豪の『ブラス・クーバスの死後の回想』』(武田訳 光文社古典新訳文庫 2012年)とならぶ代表作の初訳。

まだ奴隷制が続いていたブラジルで支配階級に生まれたサンチアーゴが身分の違う褐色肌のカピトゥと結婚したものの、サンチアーゴは家長としての能力がないことの裏返しで横暴にふるまい、妻へも嫉妬と疑念を懐き、親友との関係を疑うのだが、はたして妻は姦通をはたらいたのか、それとも語り手の嫉妬と
妄想からくる冤罪なのか、偏屈卿(ドン・カズムッホ)と呼ばれたサンチアーゴの自伝の形をとり物語が展開する。カピトゥは不義をはたらいていたのか、サンチアーゴは無実の妻を追い出した卑怯者なのか?は長く読者・研究者の間で論争が繰り広げられてきたが、彼女が無罪か有罪かがこの小説の問題ではな
く、そのどちらにも解釈出来る両義性こそが、この作品の画期的な文学的技法の面白さであると評価されているが、訳者は解説でその謎を解く鍵はサンチアーゴの「記憶」にあると指摘している。

訳者による『千鳥足の弁証法 マシャード文学から読み解くブラジル世界』 と合わせ読むと、一層マシャード文学の世界の理解が深まる。 〔桜井 敏浩〕


〔(社)ラテンアメリカ協会 Webサイト「掲示板」→ 「図書案内」に収録〕

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躍動するブラジル -新しい変容と挑戦
 

近田 亮平編 JETROアジア経済研究所 201311月 211頁 2,600円+税


2012
年にアジア経済研究所で立ち上げた「新しいブラジル」研究会での成果に、136月の民衆抗議デモの勃発による情勢急変を可能な限り取り入れて、社会科学系のブラジル専門家7人がそれぞれの専門分野から分析した最新のブラジル解説。編者(アジア経済研究所副主任研究員)による序章-近代国家誕生からの軌跡、終章-各章の総括と躍動するブラジルの「新しさ」のほか、第1章の民主化と現在進行形の政治改革(堀坂浩太郎上智大学名誉教授)では3権と中央・州・ムニシピオ間のパワーシェアリングなどを、第2章の経済の新しい秩序と進歩(浜口伸明神戸大学教授、河合沙織神戸大学大学院)はインフレとの闘いと経済成長を、第3章の環境変化に応じての新たな企業の三脚構造の関係(二宮康史アジア経済研究所副主任研究員)は市場開放政策にともなう企業環境変遷とルーラ政権以降の政府の役割の見直しを、第4章では社会保障の整備と選別主義の試み(編者)は近年の社会変化と社会保障の普遍化を、第5章は外交におけるグローバル・プレーヤーへの道(子安昭子神田外国語大学准教授)でカルドーゾ、ルーラ、ルセフ三代の政権の外交を比較し、第6章の開発と持続可能性(小池洋一立命館大学教授)は、農業とアグリビジネス、バイオエネルギーと持続的開発を取り上げている。

いずれもこの十数年のブラジルの著しい変容の実態とその背景、課題と今後の展望を知る上で極めて示唆に富む分析である。〔桜井 敏浩〕
                     

〔『ラテンアメリカ時報』 2013/14年冬号掲載 ()ラテン・アメリカ協会発行〕


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世界地誌シリーズ
6 ブラジル
 

丸山 浩明編 朝倉書店 201310月 176頁 3,400円+税

 

多様性に満ち、急速に変わりゆくブラジルを正確に理解するために地理学的視点から総合的に紹介しようと、11名の様々な分野の専門家が纏めた地誌。1.総論-発展と地域的多様性、2.多様な自然環境と環境問題、3.都市の形成と発展、4.多人種多民族社会の形成と課題、5.宗教の多様性と宗教風土の変容、6.音楽の多様性とその文化的背景、7.アグリビジネスの発展と課題-大豆・バイオ燃料生産の事例、8.観光の発展とその課題、9.日本移民、10.日本の中のブラジル社会、11.ブラジルと世界、そして日本という内容を網羅し、それぞれの章により好奇心をそそるコラムを添えている。

大学等での教科書としての活用を想定し、巻末に参考図書、統計資料、人名・事項索引も付けてあり、ブラジルを総合的に把握する基礎資料としてきわめて有用である。 〔桜井 敏浩〕 
                   

〔『ラテンアメリカ時報』 2013/14年冬号掲載 ()ラテン・アメリカ協会発行〕

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南・北アメリカの比較史的研究 -南・北アメリカ社会の相違の歴史的根源
 

宮野 啓二 御茶の水書房 201310月 366頁 7,600円+税


米国経済史を長年専門としてきた著者(広島大学名誉教授)が、南北戦争に見られる北部の保護貿易論に対する南部の奴隷所有プランターとの対立という経済基盤の解明を進めていくうちに、先住民・黒人への人種問題にも関心をもち、南北米州での奴隷制の相違、さらには植民者本国の社会・文化の相違に遡って追求したこれまでの論考を集大成したもの。

第一部南北アメリカの比較史では、英国の「プロテスタント的植民者」「定住型植民地」とスペインの「カトリック的征服者」「搾取型植民地」の相違ととらえ、第二部新大陸におけるスペインの植民地政策では、アステカ社会におけるカルプリと呼ばれた先住民共同体の実態、ラティフンディオ(大土地所有制)と先住民共同体、アシエンダ(大農園)型の形成過程を土地所有と労働力から、修道士による信仰村への集住がやがて植民地行政による集住政策に継承された例をメキシコはじめペルー、グアテマラで、征服の拠点が都市から始まり周辺農村へ発展したため騎士的市民(都市貴族-官僚、聖職者、大地主、鉱山主)が支配し集まった寄生都市となり、西欧都市のように都市ブルジョアジー(商工業者)の都市に成長しなかったことなどを考察している。

スペインとだけの関係で見ることが多いラテンアメリカ研究者にとって、北米や非ラテン西欧の経済史との比較を念頭に置いた大いに興味深い論考集である。 〔桜井 敏浩〕

   
〔『ラテンアメリカ時報』 2013/14年冬号掲載 ()ラテン・アメリカ協会発行〕

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スペシャリテ2013 別冊専門料理 SPECIALITES -南米ガストロミーの衝撃
 

木村 真季編 柴田書店 20139月 177頁 3,000円+税

    
ペルー、ブラジルの料理界は今大きな変容を遂げている。これまでの伝統的な食材と調理方法から熱帯果実やアマゾンの食材や西欧・日本料理などの取り入れを辞さない意欲的な料理人が、エスニック料理というジャンルを超えこれまでになかった新しい料理、これまでにない斬新なレストランを世界に展開しているのである。

登場する料理人とそのレストランは、ペルーで大統領並みの有名人といわれ、ペルー料理を世界に認めさせた先駆者 Gaston Acurio"Astrid y Gaston"をはじめとして、アマゾンの食遺産に光りを当てるPedro Miguel Schiaffino"Malabar"、ガストンに続いてペルー料理を世界にアピールするVirgilio Martínez"Central"を紹介し、さらにペルー料理の代表的前菜であるセビーチェ(魚介のマリネー)に様々な工夫をする現代ペルー料理店として"Huanchaco"、北部都市チクラヨからリマに進出してきた"Fiesta"、アルゼンチン人オーナーの庶民的な店"Canta Rana"、ペルーで1970年代に初めて本格的な寿司を創った小西紀郎の"Toshiro's"、北部の都市ピウラの庶民的な家族経営の名残を感じさせる"Paisana"、あくまでペルー伝統料理を基盤に置くアフリカ系女性が始めた"El Rincón que no Conoces"、第二の都市アンデス麓のアレキパ料理の"La Nueva Palomino"から屋台料理である牛の心臓の串焼きアンティクーチョや豚の皮のフライ、豊富な果実ジューススタンドに至るまで、ペルーの美食を紹介している。

一方、ブラジル料理については、アマゾンの食材を積極的に使って、南米料理ブームを興したAlex Atala"D.O.M."を筆頭に、フェジョアーダやムケカ、マンジョカを使った料理を洗練したアレンジで提案するブラジル女性Helena Rizzoとスペイン人であるDaniel Redondo夫妻の"Maní"、サンパウロ州の田舎料理を自称するJefferson Rueda"Attimo"、サンパウロ郊外でブラジル北東部料理を出すRodrigo Oliveila"Mocotó"A4版で71頁にわたって沢山のカラーによって紹介している。加えてスペインのバルセロナ"PAKTA"とマドリードにある"Nikkei225"という新感覚のペルーニッケイ料理をも紹介し、さらに巻末に登場した料理写真のうち37皿のレシピをも付けてあるという、さすが料理本・料理店等の月刊誌や専門解説書を出している出版社ならではの充実した内容になっている。

ペルー、ブラジルから世界に発信されている南米ガストロミーの現在の料理、それを担う料理人とその店が臨場感をもって姿を見せ、美味いものに関心ある読者の食欲をそそる。〔桜井 敏浩〕
 

〔『ラテンアメリカ時報』 2013/14年冬号掲載 ()ラテン・アメリカ協会発行〕

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ビジネス用語集
Glossário de Termos de Negósios 日本語/EnglishPortuguês 』『Doing Deals in Brazil(日本語版)』 

PWC 2013年 667頁・105頁 非売品


世界中で会計監査、税理、経営アドバイザーを行っている
PWC(プライスウォーターハウスクーパース)のブラジルデスクが出した3カ国語のビジネス用語集とブラジル投資手引きの小冊子。用語集は8,000の語彙を日本語・英語・ポルトガル語とポルトガル語・英語・日本語から牽くことが出来る。後者はブラジル投資と課題、経済環境、M&Aおよび企業投資活動から文化、会計原則および監査要求、税務、労働力と人件費、環境問題を簡単に解説している。 〔桜井 敏浩〕
 

(問い合わせは、kazue.kataoka@jp.pwc.com または電話 03-3546-8508 へ連絡を。同社ではこれらのほか『会計用語集 -日英葡語』を出している。)

                                 

〔『ラテンアメリカ時報』 2013/14年冬号掲載 ()ラテン・アメリカ協会発行〕
 

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新興国家の世界水準大学戦略 -世界水準をめざすアジア・中南米と日本
 

フィリップ・G.アルトバック、ホルヘ・バラン 光澤彰純監訳 東信堂 20135月 386頁 4,800円+税


ほぼすべての学術システム、知の創造、伝達の中核をなす存在であるのが研究大学であり、アジア、ラテンアメリカの多くの国々で資金・人材・伝統等の制約の中で世界水準の研究大学構築に挑戦している実態を知らしめてくれる。

特に西洋の教育の伝統を持たなかったにもかかわらず、高等教育の発展を実現した日本に関しては特に原著になかった1章を増補している。第1部「新興国家の大学戦略と日本」では、研究大学の歴史、試練、発展途上国における目標と現実、アジアとラテンアメリカでの高等教育政策と研究大学、日本の「世界水準大学」政策の行方を論じている。第2部 「世界水準をめざすアジア・中南米のトップ大学」は、主要途上国での研究大学の実態と世界水準への試み、展望を、中国、インド、韓国、ブラジル、メキシコ、チリ、アルゼンチンの例を詳細に記述している。

ブラジル最古の総合大学USP(サンパウロ州立大学)の位置づけ、ブラジルの高等教育システムと大学院教育、国家建設大学としてのUNAM(メキシコ国立自治大学)の独自性と研究大学の役割、チリに研究大学はあるかと問いかける市場競争原理の下での試行など、中所得国における研究大学構築への挑戦の例としてブエノスアアイレス大学の事例など、ラテンアメリカの大学の今日的意義が分析されている興味深い論考集。15人の執筆者は、米国、チリ、アルゼンチン、メキシコ、ブラジル、インド、中国、韓国の研究者・大学教職者。  〔桜井 敏浩〕
                            

〔『ラテンアメリカ時報』 2013/14年冬号掲載 ()ラテン・アメリカ協会発行〕

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るるぶ情報板 C ⑨ ブラジル・アルゼンチン』 
 

JTBパブリッシング 20141月 95頁 1,500円+税

  
全編カラーページで、多岐な情報・写真・資料を満載したビジュアルな雑誌風旅行ガイド。ブラジル(
771頁)およびアルゼンチン(7388頁)に、ポルトガル語とスペイン語超基礎単語、旅の情報、イグアスの滝や両国観光スポットの市内地図も付いている。

ブラジルはイグアスの滝、レンソイス、アマゾン、リオデジャネイロ、サンパウロ、サルヴァドールの案内にブラジル料理、土産、リオのカーニバルなどが、アルゼンチンはブエノスアイレスに絞ってこの魅力的な都市での観光案内に、料理やカフェ、土産、タンゴなどナイト・スポットほかのお薦めスポットが、それぞれ現地事情に通じた多くの執筆者によって紹介されており、眺めていると思わず南米へ飛びたくなる楽しいガイドブック。 〔桜井 敏浩〕
               

〔(社)ラテンアメリカ協会 Webサイト「掲示板」→ 「図書案内」に収録〕

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国際理解に役立つ 世界のお金図鑑 ③北米・中南米・アフリカ 

 

佐藤英人協力、平田美咲編 汐文社 201310月 47頁 2,300円+税

  
世界各国の通貨単位と紙幣のカラー写真を、その国の面積、人口、首都、言語、民族、主な産業の箇条書きと
Check!という簡単なコメントとともに1ページで紹介しており、中南米からはアルゼンチン、キューバ、コスタリカ、コロンビア、ジャマイカ、チリ、ドミニカ共和国、パラグアイ、ブラジル、ベネズエラ、ペルー、ボリビア、メキシコの13か国が取り上げられ、それぞれの単位紙幣の写真には、図柄の由来、説明がごく簡単に付いている。〔桜井 敏浩〕
 

〔(社)ラテンアメリカ協会 Webサイト「掲示板」→ 「図書案内」に収録〕

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世界のともだち
03 ブラジル -陽気なカリオカ ミゲル』 
 

永武 ひかる 偕成社 201312月 40頁 1,800円+税

写真絵本シリーズのブラジル編で、リオデジャネイロに母と姉と暮らすミゲル少年11歳の一年間に寄り添った写真家が撮影したもの。

ブラジルの中間層(母は労働裁判所勤務の公務員)の生活ぶりが、時々訪れる離婚した音楽家の父とその再婚相手をも含めたゆるやかな交流も含めて、家族とのほのぼのとした関係がよく伝わってくる。大好きな海岸、真夏のクリスマス、学校生活、ご飯、友だちとの遊び、歯医者や理髪店にも行く暮らし、未来の希望などを、リオデジャネイロの町やカーニバル、人種のるつぼであるブラジルのあらましとともに、美しい写真と文章で綴っている。小学校高学年以上の子ども向きの本だが、大人が見ても楽しい。〔桜井 敏浩〕


〔(社)ラテンアメリカ協会 Webサイト「掲示板」→ 「図書案内」に収録〕

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AMAZON DOLPHIN アマゾンのピンクドルフィン』 
 

水口 博也 シータス発行 丸善出版発売 201311月 95頁 1,600円+税



アマゾン河上流のペルーのパカヤ・サミリア国立保護区、エクアドルのヤスニ国立公園、ブラジルのアマゾン支流のネグロ川の熱帯雨林、浸水林にアマゾン川イルカ -明るいピンク色の体色のため“ピンクイルカ”とも呼ばれている-の姿を追った写真集。

 もともと海の鯨類仲間であったイルカが、南米大陸の隆起による地形変化によって海と断ち切られて内陸河川での生活に順応し進化したものだが、撮影者は京都大学理学部動物学科を卒業し海棲哺乳類の研究と撮影を行ってきただけに、各地のカワイルカの頭骨の写真も示してその種類の違いや生態などについての解説も付している。カワイルカは、森林伐採、ダム工事による生息水系の分断と水質悪化、刺し網漁での混獲、漁具を傷つける邪魔者としての排斥などにより過酷な状況の中で生きているが、撮影者は優しい眼差しでアマゾンカワイルカがピンク色の妖艶な姿態で泳ぐ姿を実に美しく撮っている。 
〔桜井
敏浩〕   

   
〔(社)ラテンアメリカ協会 Webサイト「掲示板」→ 「図書案内」に収録〕

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旅の深層 -行き着くところが、行きたいところ アフリカ、ブラジル、ダバオ回遊-
 

組原 洋 学文社 2013年10月 204頁 1,000円+税


著者は沖縄大学法経学部の教員を30年余勤め、その間比較法文明論をも研究してきたが、その研究を意識しながら行ったアフリカ、ブラジル、フィリピンの旅と現地の生活記。

ブラジルについてはうち77頁を当て、1984年に沖縄から移住した移民を曾祖父にもつ日系ブラジル人からポルトガル語を学び、大学を休職して85年5月にブラジルへ渡り、サンパウロから知人の住むテイシェイラ・デ・フレイタス(サルバドールとヴィトリアの中間にある町)のマモンの栽培農家の日系人達と付き合い、テイシェイラとサンパウロを拠点にサルバドール、ビザ更新のためにパラグアイのアスンシオン、ベレン、ブラジリア、レシーフェなどへ行き、年末に帰国するまでの日々の生活と旅の様子、交流した日系人とその周囲のブラジル人との人間関係を淡々と綴っている。  〔桜井 敏浩〕
 

〔(社)ラテンアメリカ協会 Webサイト「掲示板」→ 「図書案内」に収録〕
 

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Vovô Ostra e Shiguebo(カキじいさんとしげぼう)』 
 

畠山 重篤 エレナ・ヒサコ・トイダ訳 カキの森書房 2013年6月 71頁 1,200円+税

海浜の養殖場の牡蛎が育つには、流れ込む川の上流の樹齢の長いブナやクヌギヤナラの林があってきれいな川の水が海の水に混じり合い、豊富な餌となるプランクトンが豊富にあることが必要だが、森林の伐採により川の水が汚れ、プランクトンの数も減り、川の鮎や鰍、溯行して産卵する鮭、海に出る鰻や海岸の貝類に至るまで、海に生きる生き物すべてに悪影響をもたらす。

この森と海の関連を、海岸に住む牡蛎じいさんと父が養魚場を営むしげぼうの会話で明らかにし、浜の人たちが山に行って植林することによって、川と海の本来の良い関係が再び戻り海は守られることになる。

本書は、「森は海の恋人」と「牡蛎の森を慕う会」を結成し、漁民による植林活動を続けている著者が子ども向けに森の大切さを説いた『カキじいさんとしげぼう』(講談社 2005年、カキの森書房 2012年再版)を、日系二世で上智大学でポルトガル語を講じる訳者の手になる良書。   〔桜井 敏浩〕
 

(yukikoko@muf.biglobe.ne.jp に申し込めば事前振り込みで 1,200円+税のみで発送)

 

〔(社)ラテンアメリカ協会 Webサイト「掲示板」→ 「図書案内」に収録〕

 

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ブラジル日本移民百年史  全5巻 4分冊                 


第一巻 農業編 トッパン・プレス 2012年12月724頁、
第二巻 産業編 トッパン・プレス 2013年1月 498頁、
第三巻 生活と文化編(1) 風響社 2010年10月 638頁、
第四巻 生活と文化編(2) 648頁・第五巻 総論・社会史編 206頁 トッパン・プレス2013年3月

ブラジル日本移民百周年記念協会、ブラジル日本移民百周年史編纂・刊行委員会編



日系社会有識者100余人により取りまとめられた、105年間の歴史、体験を後世に伝える総合的な移民全史。

「農業編」は、コーヒー経済勃興と鉄道建設の進展に日本人移民の渡航が始まった戦前、国策移民政策として送り込まれた戦後移民の始まりと終焉の間の移民会社、農業協同組合の設立、セラード農業開発、サンフランシスコ川流域開発プロジェクトへの参画に至る歴史、日系人が多大な貢献をした農林牧業生産品とその生産地別の功績、地域別農業者の紹介と現状を詳細に記述し、最後にブラジルの農業研究・技術部門への日本人の貢献を述べている。

「産業編」は、商工活動の先駆者たち、海外移住組合法とブラジル拓殖組合、日系銀行等の盛衰、日本からの進出企業史とナショナル・プロジェクト、日本企業16社の興亡、日本からみた事業地としてのブラジル、ブラジルから見た日本ブラジル関係など、今後の日本産業界のブラジルとの付き合い方についての示唆に富んだ解説と実例集になっている。

「生活と文化編(1)」は本サイトで紹介した( http://www.bizpoint.com.br/jp/reports/sakurai/sk15_c.htm#ブラジル日本人移民百年史 第三巻 生活と文化編(1))。

「生活と文化編(2)」は、笠戸丸以来の移民が持ち込み、育んできた日本の俗謡、演劇、芸能からクラシック、ポピュラー音楽、邦楽、それに茶道やカラオケほかの娯楽、多くの移民を擁する沖縄芸能、さらにスポーツや舞踊、映画、美術などの芸術、さらに日本人移民の各派宗教、雑誌・新聞等の出版に至るまで、幅広く論じている。これと合本で出された最後の取りまとめというべき「総論・社会史編」は、ブラジル日本移民の位置と意義をあらためて問う移民史概観、戦前・戦後の保健衛生・福祉・慈善活動の歴史と現状を詳しく述べている。終章は交流史で、日本への就労者(デカセギ)の増大にともなう日系社会の文化、両国民間の交流などから百周年の交流の中で日本人が伝えてきたこと、日本におけるこれからの日本・ブラジル交流を論じ、地図・年表・索引などの資料を付している。

ブラジル日本人移住史と日系社会について、日本語でこれだけの内容を総合的に網羅、集成した刊行物は、恐らく今後二度と纏められないだろうと思われ、日本でブラジル移民史に関心ある研究機関や公共図書館で是非揃えて欲しい貴重な労作である。〔桜井 敏浩〕
                


日本ブラジル中央協会では全巻4冊セットを送料込み32,000円で受託販売を行っているので、入手ご希望の方は同協会事務局へ http://nipo-brasil.org/siryou.htm



〔『ラテンアメリカ時報』 2013年秋号掲載 (社)ラテン・アメリカ協会発行〕
 

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共生の大地 アリアンサ -ブラジルに協同の夢を求めた日本人
 

木村 快 同時代社 2013年8月 350頁 3,500円+税


ブラジル各地で移住者の帰郷を扱った演劇「もくれんのうた」を上演してきた筆者が、農業生産と農民バレエ等の文化活動を実践する弓場農場とアリアンサ村の人たちとの出会いをきっかけに、アリアンサ移住地の戦前戦後の両国に残る資料を調査し、関係者に聞き取りを行って纏めたもの。

1924年(大正13年)にアリアンサ移住地を開設するまでの日本力行会の永田稠と輪湖俊午郎の活動、信濃海外協会の設立と移住地建設の動き。日本国内では海外移住組合法等の国策移住法制定と海外移住組合連合会の出現、その専務理事梅谷光貞と輪湖俊午郎によるブラジル拓殖組合の設立やその後の国策移住地と全アリアンサ統合の経過。一方で太平洋戦争の勃発とブラジルでの敵性国民取り締まり、アリアンサ防衛のための弓場勇らによる産青連運動。日本敗戦後の混乱を経て無一文になった弓場農場の再建と芸術拠点の建設による「創造する百姓」の活動が知られるようになったが、弓場勇は1976年に70歳で亡くなり、後継者に託された。他方、コチア農協や南米銀行の消滅など、1990年代以降日系社会は激動の時代を迎え、弓場農場は公益法人化するなどの変容があったが、「コムニダーデ・ユバ」の文化芸術活動はブラジル政府にも多民族文化共生と評価されるに至った。ブラジル日本人移住史からは抹殺されながらも、自分たちの村の歴史にこだわり続けた、ブラジル奥地のアリアンサ(協同)精神の歴史を綴った労作である。   〔桜井 敏浩〕


〔『ラテンアメリカ時報』 2013年秋号掲載 (社)ラテン・アメリカ協会発行〕

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ラテンアメリカ鉄道の旅 -情熱の地を走る列車に乗って
 

さかぐちとおる 彩流社 2013年7月 310頁 2,200円+税


ラテンアメリカはじめ世界各地の旅行ガイド記事や世界の鉄道についての記述も多いライターによる、ラテンアメリカ11カ国の鉄道に乗る旅の紀行記。

ブエノスアイレス、サンチャゴの地下鉄、両国南端のパタゴニア、大平原や雲の上を走る山岳鉄道に至るまでのアルゼンチン、チリの鉄道、リオデジャネイロの路面電車や登山電車、サンパウロの地下鉄から広大な大地を走る鉄鉱石輸送の路線を走る長距離鉄道のあるブラジル、南米最古の鉄道のあるパラグアイ、インカ帝国の旧都クスコからマチュピチュやティティカカ湖に向かうアンデス高地鉄道、ボリビア低地サンタクルスからブラジル国境へ、高地オルーロからウユニ塩原を経てアルゼンチン国境へ向かうボリビア鉄道、ラテンアメリカの多くの国と同じく道路整備を優先しバスと自動車に取って替わられごく短区間の鉄道運行しか残っていないエクアドルとコロンビア、かつて中米横断の要路だったパナマ運河沿いの鉄道、東西幹線鉄道網はあっても、米国の経済制裁と砂糖産業の劣化、物資の不足で極度に保守が悪化しているキューバの鉄道、世界で最も標高が高い地下鉄が発達したメキシコ市とテキーラ、チワワでそれぞれ工夫を凝らして運行されている観光列車などなど、ラテンアメリカ各地の鉄道を乗っての数々のエピソードに、その国の鉄道運営の問題点の指摘やスペイン語やアルゼンチン民俗舞踊も習ったという著者と乗り合わせた乗客との対話が散りばめられている。口絵の9枚以外の写真はサイズも小さくモノクロなのが残念。   〔桜井 敏浩〕
  

〔『ラテンアメリカ時報』 2013年秋号掲載 (社)ラテン・アメリカ協会発行〕
 

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アマゾン 日本人移住八十周年
ポルトガル語書名:
“Amazônia 1929-2009  - 80 anos de Imigração Japonesa na Amazônia”
   

ニッケイ新聞編集局報道部編 ニッケイ新聞社 2012年8月 276頁。
日本では(公財)海外日系人協会が3,500円+送料で受託販売。申し込みは電話045-211-1780 info@jadesas.or.jp へ)

1929年に129人のブラジル移住から始まったアマゾン移民の歴史を、数多くの写真(一部カラー)とともに記録し、全編を日本語・ポルトガル語で記している貴重な文献。

発刊について「挨拶」、節目の年、新たな一歩をというアマゾン各地での「式典編」、9箇所の移住地を訪ねて、それぞれの地であった移民の困苦の歴史、活躍とアマゾン開発とブラジル社会への貢献の多くのエピソードを、関係者へのインタビューと収集した資料・写真から綴った「移住地を訪ねて 連載編」、そしてアマゾンへの日本人入植の歩みを年表で示した「成功を支えた人々 表彰、歴史編」から構成されている。 〔桜井 敏浩〕

〔(社)ラテンアメリカ協会 Webサイト「掲示板」→「図書案内」に収録〕

 

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移民画家 半田知雄 -その生涯
 

 田中 慎二 サンパウロ人文科学研究所(ブラジル日本移民百周年記念 『人文研研究叢書』第9号) 2013年5月 492頁

  

ブラジルの風物と移民の生活をテーマに描くとともに、『移民の生活の歴史』(家の光社 1970年)はじめ評論や著作においても活躍した日系コロニアの良心といわれる画家の生涯。

11歳の時に栃木県から家族と移民、伯剌西爾時報社に入社し、聖州(サンパウロ州)義塾で多くの仲間たちとの交流を経て感化を受け、画家への道を歩みはじめ、日系画壇聖美会を結成し、さらに文化運動と活躍の場を拡げる。しかし太平洋戦争の勃発と敵国となったブラジルでの日系社会の暗黒時代を迎え、戦後の勝ち負け抗争などの混乱期を経て刊行物の発行に関わり、その後美術活動を再開、文化振興会を設立し、サンパウロ市400年祭のパビリオンとしてイビラプエラ公園に日本館を建設することに美術展示場主任として参画、1956年に初めて日本に帰国して、東京の三越はじめ各地で個展を開くことが出来、帰途欧州を周った。ブラジルに戻ってすぐサンパウロ日本文化協会(文協)の設立があり、1965年に設立されたサンパウロ人文科学研究所(人文研)には、専門委員、2年後に日本に帰ったアンドウ・ゼンパチ氏の後を受けて専任研究員となり、人文研の日本人移民史、日系社会についての調査研究の多くに執筆者として関わっている。

その後も画家としての活動とともに、戦前移民の物品資料収集・保存の必要性を訴え、1978年の皇太子ご夫妻(現天皇皇后両陛下)のブラジルご訪問時に文協ビルに「移民史料館」の開所に漕ぎ着けた。その後も1996年に90歳で没するまで、夫人に先立たれながらも画作を続け、個展を開催し、日系社会の将来について考察、開陳し、多くの人達からコロニアの良心と慕われた生涯を、膨大な資料の検証と関係者へのインタビューで纏めた労作。 〔桜井 敏浩〕

(入手の問い合わせは同研究所 contato@cenb.org.br
  

〔(社)ラテンアメリカ協会 Webサイト「掲示板」→ 「図書案内」に収録〕
 

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マリアナ先生の多文化共生レッスン -ブラジルに生まれ、日本で育った少女の物語り

 
右田マリアナ春美  明石書店 2013年7月 254頁 1,800円+税


熊本県からの日本移民とブラジル人女性との結婚で生まれたマリアナは9歳の時にデカセギ家族として来日、滋賀県で小学校3年生に編入されたが、日本語がまったく通じない彼女にとって周囲の人とのコミュニケーションが出来ず孤立感に苦しむが、大変な努力で徐々に学力もつき、時に陥る挫折感を乗り越えて中学、高校に進学する。ラテンアメリカの少女が幼児の時から当たり前に付けているピアスを、単に学校の規則を理由に一律禁じるなどの文化のギャップや、ブラジル人とのハーフであることの周囲の違和感などは相変わらず経験するが、アルバイトで外国人(ブラジル人)子女の相談員をしたことをきっかけに教員になるべく短大に入学、国語の教員資格を取るべく教育実習はかつての母校の中学に赴く。22歳で日本国籍を取得(ブラジル国籍を破棄する届けを出すことにほかならなかった)、愛知県で語学相談員に就き、在日外国人の様々な事例の相談に応じている。

マリアナが日本に来た日から強烈に感じたカルチャーショック、学校や地域社会での外国人に対する理解、包容力のなさ、現場で苦闘する教師などの中で、家族の就労や周囲との関係の変化の苦しみが率直に綴られている。家族や周囲の教師等に支えられて、自分のやりたい仕事を見つけ、今ではかつての自分の姿にも似た、学校で困惑、苦労、迷っている外国人の子供たちの相談に情熱を傾けているが、随所にブラジル系のみならず在日外国人の問題が触れられ、日本国内での外国人の置かれている境遇への理解を深めさせてくれる。  〔桜井 敏浩〕

 

〔(社)ラテンアメリカ協会 Webサイト「掲示板」→ 「図書案内」に収録〕
 

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天使見た街 A sedução dos anjos (写真集)
 

原 芳市 Place M 2013年8月 83頁 4,600円+税

   

リオデジャネイロのカーニバルに惹かれ、2004年から06年の間、毎年リオに通い、現地の人達と積極的に交流して撮った写真の中から厳選した55点のカラー写真集。

カルナバルのチームの行進の大集団の中で踊りに没頭する踊り子たちが天使に見え、エスコーラ・ジ・サンバ(サンバ学校と約すよりはサンバ連の方が適切)に入り込んで、街で出会った女たち、男たち、子供たちを写真に収めていくうちに、聖書の「わたしたちは見えるものではなく、見えないものに目を注ぎます。見えるものは過ぎ去りますが、見えないものは永遠に存続するからです。」(コリントの使徒への手紙Ⅱ第4章18節)の思いになってきた、リオの街で天使に導かれていたと思うようになったという。

写真家のこういった心情に至るリオ滞在のエピソードは、巻末に6頁にわたる「あとがき」で日本語だけに留まらず、ポルトガル語、英語の全訳付きで綴られているが、書名のとおり取り上げられた写真、特に少女や踊り子を撮った写真の表情は、確かに天使を見たという書名のとおり、実によい顔をしている。 〔桜井 敏浩〕
 

〔(社)ラテンアメリカ協会 Webサイト「掲示板」→ 「図書案内」に収録〕
 

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文化資本としてのデザイン活動 -ラテンアメリカ諸国の新潮流
 

鈴木 美和子 水曜社 2013 年 7 月 193 頁 2,500 円+税


「デザインには社会を変える力がある」という観点から、デザイナー達の実践は社会に変化を与え、持続可能な社会への転換にデザインは何が出来るかを、ブラジル、コスタリカ、アルゼンチンの事例から日本でのデザインの実践の教訓を 得ようと試みた、著者の博士論文を基にその後の調査結果を加えたものである。

デザインを無形文化資本として捉え、それが活用されることによって社会が変化し、持続可能な社会の構築に貢献する様子を描くとして、まず工芸活性化とデザインの工芸化が結びつき、振興政策が行われているブラジルの事例、著者もか つて青年海外協力隊員としてコスタリカ工科大学でのインダストリアルデザイン活動の経験を踏まえて、国内産業育成、起業のためのデザイン活動、地域連携や ネットワーク化が進むアルゼンチンのデザイン活動の事例を見た後に、それぞれからデザイン活動の意味と役割を比較して、持続可能な社会形成のためのデザイン活動とその政策のあり方を導きだそうとしている。  〔桜井 敏浩〕
        

〔『ラテンアメリカ時報』 2013年夏号掲載 (社)ラテンアメリカ協会発行〕

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ブラジル略語集 ポ日両語 - 2013 年度版
 

ブラジル日本商工会議所・サンパウロ新聞・ニッケイ新聞・PWC(会計用語集)編 ブラジル日本商工会議所発行 2013 年 3 月 332 頁


ブラジルのメディアでよく使われている政党名、税金、経済、IT用語の略語約 2,000 を収集し、原語と簡単な説明を付した初版(2002 年)から 10 年が経過し、この間に新たに使われるようになった用語を加え、使われなくなった用語は削 り、既掲載用語の見直しを行って計 2,600 語を取り上げたもの。合わせ「会計用語集」もポ日語と日ポ語が付けてあり、いずれもブラジル語で実務に携わる者には極めて有用な辞典である。    〔桜井 敏浩〕


日本での入手問い合わせは、
サンパウロ新聞東京支社へ。
電話(03)5663-7596、Fax 5633-7597 spshimbun@tokyo.email.ne.jp
頒布価 7,000 円+送料

 

 

〔『ラテンアメリカ時報』 2013年夏号掲載 (社)ラテンアメリカ協会発行〕

 

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ボサノヴァの真実 -その知られざるエピソード
 

ウィリー・ヲゥーパー 彩流社 2013 年 2 月 462 頁 3,000 円+税

 

いまや日本でもあちこちで、ブラジルとは無関係の思いがけないところでも流さ れているボサノヴァは、実はブラジル庶民の伝統的な音楽ではなく、1958年に創られたといわれる。リオデジャネイロの中産階級の音楽家の間から生まれ、ブラ ジル各地の音楽や米国でジャズやラテン音楽などの影響を受け、盛衰の歴史を超えて半世紀を経た現在、ボサノヴァはいまや世界的な市民権を得て多くのファンが いる。

本書はボサノヴァに魅せられブラジル音楽評論の道に入って 10 余年の著者が、 ある程度はボサノヴァについての認識を持っている読者に、あらためて「ボサノヴァはブラジルの音楽である」という原点に立ってブラジルからの視点でボサノ ヴァの生まれた背景、定義、分類を詳述し、トム・ジョビン、ジョアン・ジルベルト、ヴィニシウス・ヂ・モライスの3人の出会いがボサノヴァを誕生させたという通説 に対する見解をはじめ、有名のみならず無名でも評価すべきボサノヴィスタたちの活動、米国はじめ海外に渡ったボサノヴァの作曲家、演奏家、歌手たちとブラジル との往来、世界に広がったボサノヴァ(中にはブラジル人が知らないボサノヴァのスタンダード曲もあるという)、ボサノヴァをはじめいろいろなジャンルの音楽を 融合する MPB(ブラジル・ポピュラー音楽)の中に昇華されていること、1964年の軍政の始まった前後と時を同じくしていったん衰退したボサノヴァが 70 年代 後半に復活し、今日に至り活躍している現役、直系、継承者やブラジル国外で活躍しているミュージシャンたち、ボサノヴァの新解釈、他ジャンルとの融合の試みに まで言及している。最後に日本におけるボサノヴァの歴史を、60 年フランス、ブラジル、イタリア合作映画『黒いオルフェ』の挿入歌「カルナバルの朝」「フェリシダーヂ」の大ヒットでボサノヴァが知られるようになり、ブラジルからのミュージシャンの来日、渡辺貞夫はじめ自身のジャズ等にボサノヴァを取り入れ始める日 本人ミュージシャンが出始めた黎明期、本格的にブラジル・日本のボサノヴァ・ミ ュージシャンが往来するようになった 70年代の普及期、アントニオ・カルロス・ ジョビンの最初で最後の来日公演や小野リサのデビューに象徴される 80 年代の 発展期、シュハスカリア(ブラジル風焼き肉レストラン)の開店が相次ぎ、サッカー等を通じてブラジルへの関心が広まって、ブラジルのボサノヴァ・ミュージシャ ンの来訪や日本人ミュージシャンのブラジル渡航が盛んになった 90 年代の多様期、ジョアン・ジルベルトの来日公演、ブラジルでボサノヴァの後継者と評価され るまでに認められている臼田道成はじめ、小野リサ以外にも多くの実力あるボサノ ヴァ・ミュージシャンが輩出し、さまざまな店でBGM で流されるようになった円 熟期の 2000 年代に至るまで、日本でのボサノヴァの流れを概観している。

全編にわたってボサノヴァについての実に豊富かつ様々な事象の蘊蓄が満載されていて、ボサノヴァの全容を知るうえで貴重な文献だが、それと同時にブラジルをボサノヴァを通じて理解するためにもきわめて有用な手引き書である。 〔桜井 敏浩〕
 

〔『ラテンアメリカ時報』 2013年夏号掲載 (社)ラテンアメリカ協会発行〕

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日系ブラジル移民文学 Ⅱ -日本語の長い旅 [評論]
 

細川 周平 みすず書房 2013 年 2 月 784 頁 15,000 円+税)

これまで日系ブラジル文化の音楽、映画、芸能等について論じた書物を出してきた著者による、既紹介の第Ⅰ巻に続く日系ブラジル移民文学の大部な総合的研 究書の第Ⅱ巻。第Ⅰ巻では日系ブラジル人による文芸の 100 年の軌跡をジャンル別に追った「歴史」編だったが、この第Ⅱ巻では概念、同人誌、題材、作品、 人物などを個別にあたり「、耕す」では戦前の農村文学を詩歌、川柳、都々逸を例に、「争う」では戦後間もない勝ち組・負け組抗争の文学と論争的な『コロニア文学』 (1966 ~ 77 年 ) の創刊から移住の終わりかける時期の文学を、「流れる」では、移民の移動体験、居場所のなさを戦前戦後の数編から、「乱れる」では奔放な女 性の性遍歴を扱った2編を取り上げ、「渡る」では海を渡った移民が、日本の風土で生まれた俳句、短歌をいかに移植したかを、最後に付論「対蹠地にて」では、 かの石川達三の『蒼氓』ほか2編の日本での小説により論じている。

日系ブラジル移民の文学に関わる膨大な資料に目を通して、その全容を記録しようとした、著者の 20 年にわたる調査の貴重な記録と解析の集大成であり、偉大なる労作である。 〔桜井 敏浩〕
 

〔『ラテンアメリカ時報』 2013年夏号掲載 (社)ラテンアメリカ協会発行〕

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ラテン・クラシックの情熱 スペイン・中南米・ギタ ー・リュート

渡辺 和彦 水曜社 2013年5月 253頁 2,300円+税


表題は、スペイン、中南米音楽とギター、リュートのクラシック系音楽の総称としての著者の造語である。クラッシク・ギターの専門誌『現代ギター』に連載したエッセィから選び加筆した31編、第一章は「スペインを聴く」、第二章は「中南米を聴く」、第三章は「ギターとリュートを聴く」から成る。

「中南米を聴く」では、半分の5編がブラジルの生んだ偉大な“知られざる作曲家”ヴィラ=ロボス(1887~1959年)に当てられている。彼の讃から始まり、ギター協奏曲、ショーロス、弦楽四重奏曲、交響曲、ピアノ曲、ピアノ協奏曲などの作曲された経緯や特筆、欧州等の音楽家との交遊のエピソードや作品についての著者の評価が紹介されている。

続けてアルゼンチン・タンゴの異端児といわれたアストル・ピアソラを指導したアルゼンチンの作曲家アルベルト・ヒナステラに、最初は歌曲でヴァイオリン協奏曲になりジャズにまでなった名曲「エストレリータ」が有名になってしまったメキシコのポンセ(1882~1948年)を取り上げた後、指揮者ドゥダネル等数々の世界で活躍する演奏家を輩出した、ベネズエラの音楽教育と貧困脱出プログラムを併せもった「エル・システマ」の活動やベネズエラの音楽家について述べ、ピアソラを日本で積極的に紹介した演奏家小松真知子(ピアノ)勝(ギター)と亮太(バンドネオン)一家、特にいまや日本を代表するバンドネオン奏者になった小松亮太やチェリストのヨーヨー・マの「プレイズ・ピアソラ」などの演奏により広がった日本のピアソラ受容史、さらには「ムード・ラテン音楽」の思い出に至るまで、実に多岐な音楽談義になっている。〔桜井 敏浩〕
                       
                       
〔(社)ラテンアメリカ協会 Webサイト「掲示板」→ 「図書案内」に収録〕
 

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旅立つ理由

旦 敬介 岩波書店 2013年3月 201頁 2,300円+税

 

本書はANAグループの機内誌『翼の王国』2008年4月号から10年3月号に連絡された作品に加筆修正したもの。「熱帯の恋愛詩」(ベリーズ)、「カポエイリスタの日常」(ブラジルのバイーア)、「マンディンガの潜水少年たち」(メキシコのベラクルス)、「初めてのフェイジョアーダ」(バイーア)、「ハンモックを吊る場所」(メキシコのメリダ)、「本当のキューバを捜して」(キューバのハバナ)、「ラ・プラタの遁走曲」(ウルグアイのモンテビデオ)、「眺めのいい窓」(バイーア)、「キューバからの二通の手紙」(キューバのシエゴ・デ・アビラ)、「一番よく守られている秘密」(メキシコ・シティ)、「歩く生活の始まり」(バイーア)と、ラテンアメリカが舞台の掌編が21編中11編も入っている。

ウガンダ人の女性とケニアで結婚し、子どもをもうけた日本人の「彼」が、家族とバイーアで暫く生活し、その後別れて世界のあちこちを訪れるという設定のように思えるが、とにかく上記の土地と東アフリカなどで生きる人々の生活、離郷、旅、生きる表情を、それぞれ8頁前後で綴り、各編に原色の美しいイラストレーション(門内ユキエ)が配されている。

著者は、メキシコ、スペイン、ブラジル、ケニアに住んだことがあるラテンアメリカ文学研究者。バルガス=リョサの『世界終末戦争』(新潮社、1988年)やガルシア・マルケスの『生きて語り伝える』(新潮社、2009年)、コエーリョの『11分間』(角川文庫、206年)などの訳書がある。 〔桜井 敏浩〕

〔(社)ラテンアメリカ協会 Webサイト「掲示板」→ 「図書案内」に収録〕

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世界の絶景アルバム101 南米・カリブの旅
 

武居 台三(写真・文) ダイヤモンド・ビッグ社発行 ダイヤモンド社発売 2013年3月 
255頁 950円+税


写真家が選んだ南米とカリブ海諸国25か国にある101に点在する世界の絶景を、世界自然遺産・文化遺産を主に、全ページ美しいカラー写真で紹介したアルバムと呼んでよい一冊。

沢山の写真を載せた旅行本や世界遺産紹介の写真集が巷に溢れているなかで、敢えて刊行された本書だが、撮影者の腕のよさか、どれを見ても絶景!と感じさせる実に美しい写真ばかりで、見ていくうちにまだ地球上にこんな風景があったのかと感動を与え、現地を訪れたいという旅心を催させる。                        〔桜井 敏浩〕
 

〔(社)ラテンアメリカ協会 Webサイト「掲示板」→ 「図書案内」に収録〕

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ブラジルにおける公教育の民主化 -参加をめぐる学校とコミュニティの関係
 

山元 一洋 上智大学イベロアメリカ研究所 2012年12月 52頁 -
(問い合わせは ibero@sophia.ac.jp Fax03-3228-3229へ)


ブラジルでは、公立小中学校の運営に教師、生徒、保護者、地域住民、教育専門家が関与することで民主化を図る公教育が試みられてきたが、その歴史、枠組み、サンパウロの初等学校での運営の実態を分析している。著者は上智大学大学院の地域研究専攻博士課程を修了し、現在は外務省勤務。 〔桜井 敏浩〕

〔(社)ラテンアメリカ協会 Webサイト「掲示板」→ 「図書案内」に収録〕


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[新版]ラテンアメリカを知る事典

大貫良夫、落合一泰、国本伊代、恒川恵市、松下洋、福嶋正徳編 平凡社 2013年3月 694頁 7,000円+税


1987年に初版が出て、99年に新訂増補版が発行されて以来、四半世紀ぶり久々の改訂版である。80年代後半のラテンアメリカ経済危機、累積債務問題による長期経済成長の停滞の時期は、軍政から民政への転換、左右勢力の凄まじい中米での内戦が終結する一方で、ペルー、コロンビアでの左翼武装ゲリラの暗躍、ベネズエラでのチャベス政権の発足などがあった90年代に続く21世紀のラテンアメリカとカリブ諸国の多くで劇的な変化を生じている現在、13年振りに50名の執筆者によりいくつかの新項目と33か国それぞれの政治、経済の記述を加筆し、資料編・索引を充実させた改訂版が出たことは大いに歓迎される。

数多くの専門家を動員し、ラテンアメリカに関わるこれだけの基礎資料集を纏め、大部になって価格も決して安くない事典を上梓することは、旧版に加筆することを中心にせざるを得なかったとはいえ、編者、執筆者、出版者にとって大変なことであり、ラテンアメリカを総合的に知る類書が無い(かつてラテン・アメリカ協会から『ラテン・アメリカ事典』が1996年版まで刊行されていた)今となっては、極めて有用な手元に置いておきたい手引き、情報源である。

 構成は、「総論」として「多様性と創造性の世界」(大貫)、「イメージから対話へ」(落合)、五十音順で428頁を当てた「項目編」、3地域と33か国の自然・地理、住民・社会、歴史、政治、経済、日本との関係等の概要が分かる「地域・国名編」、そして基本的なデータ、略年表、文献リスト、URLリスト、世界遺産一覧表の「資料編」、「索引」から成る。〔桜井敏浩〕

〔『ラテンアメリカ時報』 2013年春号掲載 (社)ラテン・アメリカ協会発行〕

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地球時代の日本の多文化共生政策-南北アメリカ日系社会との連携を目指して

浅香 幸枝 明石書店 2013年3月 251頁 2,600円+税

   
南北アメリカの日系移民を文化を運ぶ人と捉え、彼らの移動、漂泊と定住、そのトランスナショナル・エスニシティを考察することで、地球時代の日本人の海外発展のあり方の中から多文化共生政策を提案しようとする研究書で、著者の名古屋大学に提出した博士論文である。

第1部で日本とラテンアメリカ関係145年の歴史的背景をみて、第2部では各地の日系社会の概要と組織的形成の中心になったパンアメリカン日系協会と海外日系人協会の歴史、果たした役割を紹介している。第3部では日本の多文化共生概念の発生、事例を述べた後、多文化共生政策の決定過程を検証し、その問題を挙げている。特に1990年の「出入国管理法」の改訂がもたらした南北アメリカの日系社会の大きな変化、日系人の流入増大によって日本社会も多文化共生を考えねばならなくなったこと、その中でインターネット時代の組織と機能を活かしたネットワーク作りなどを挙げて、日本での多文化共生による新たな文化・社会の創造を目指す試みが進んでいることを論述し、個人・家族・地域社会・国民国家・国際レベル、そしてインターネットレベルそれぞれでの21世紀の日本の多文化共生政策を提言している。〔桜井敏浩〕
 

〔『ラテンアメリカ時報』 2013年春号掲載 (社)ラテン・アメリカ協会発行〕

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進化する政治経済学 -途上国経済研究ノート
 

山崎 圭一 レイライン 2013年3月 383頁 2,500円+税


ブラジル経済、財政、環境問題についての研究成果(例えば『リオのビーチから経済学』(新日本出版社 2006年など)も多い気鋭の開発経済学者が、大学での講義用テキストとして、また途上国政治経済学に関心をもつ一般読者向けとして纏めた総合的内容をもつ解説書。

第Ⅰ部の経済学の基礎理論、途上国開発論、環境の経済理論に続く第Ⅱ部では、途上国経済政治社会の実態を南アフリカ等アフリカとブラジル経済、アジア各国素描で、第Ⅲ部政策論では著者がこれまで研究してきたブラジル、メキシコの都市問題とラテンアメリカの汚職・腐敗、さらにはODAや外国人労働者問題に至るまで多岐に論じている。 〔桜井敏浩〕


〔『ラテンアメリカ時報』 2013年春号掲載 (社)ラテン・アメリカ協会発行〕

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実業家とブラジル移住

渋沢栄一記念財団研究部編 不二出版 2012年8月 277頁 3,800円+税


第Ⅰ部では、19世紀後半から20世紀初頭にかけてブラジル移住を推進した4人の実業家、すなわち岩崎久彌がブラジル東山農場を創設(柳田利夫)、渋沢栄一の日本人植民地の開設への関わり(黒瀬郁二)、武藤山治の移住は民間資金によるべきとの持論からの南米拓殖会社設立(山本長次)、貿易拡大などの日伯交流基盤構築に努めた平生釟三郎(栗田政彦)の業績をみることによって、単に移住を余剰農村人口の捌け口ではなく国策として育てようとする雄大な構想を描いた先駆者たちを紹介している。

第Ⅱ部は、ブラジル移住事業を支えた金融・海運・国際関係として、移民を取り巻く金融制度の問題(高嶋雅明)、大阪商船の積極経営にも拘わらず業績は良好でなかった南米航路(谷ヶ城秀吉)、日本のブラジル移住開始の背景にあった米国との関係(木村昌人)という、日本人のブラジル移住でほとんど取り上げられてこなかった部分を検証しており、移住史の新たな、貴重な研究である。〔桜井敏浩〕

〔『ラテンアメリカ時報』 2013年春号掲載 (社)ラテン・アメリカ協会発行〕

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千鳥足の弁証法 -マシャード文学から読み解くブラジル世界

武田 千香 東京外国語大学出版会 2013年3月 325頁 2,800円+税

 

ブラジルで最も高い評価を受けている文豪であるばかりでなく、19世紀世界の、またラテンアメリカ最高の作家とも評されている、マシャード・ジ・アシス(1839~1908年)の文学を、その代表作『ブラス・クーバスの死後の回想』(武田訳光文社古典新訳文庫 2012年)の物語世界を細部に至るまで独自の視点で読み解き、背景にあるブラジルの歴史、人、社会、文化を考察することによって、西洋と非西洋を合わせもつブラジル世界を総合的に読み解こうとした、ユニークなブラジル文化論。

著者は『ブラス・クーバスの死後の回想』には、ブラジルの人、文化、社会を理解する"公式"が隠されている。それは歴史、社会ばかりでなくブラジル人の社会遊泳術("ジェイチーニョ"-ブラジル・サッカー選手が審判の目を盗んで要領よく立ち回るのもその一例)や、サンバ等の音楽、カルナバル、さらにはカポエイラ(奴隷黒人から生まれた武芸)などに至る、代表的なブラジルの文化事象の特質まで見事に解き明かしているという。日本でもブラジル文化について知られるようになってきたとはいえ、まだ表面的にしか見ていないものが多い中で、著者の20余年のブラジル文学研究が生んだ独創的な切り口のブラジル文化論でもある。〔桜井敏浩〕

〔『ラテンアメリカ時報』 2013年春号掲載 (社)ラテン・アメリカ協会発行〕

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日系ブラジル移民文学 Ⅰ -日本語の長い旅 [歴史]』 

 

細川 周平 みすず書房 2012年12月 825頁 15,000円+税


これまで日系ブラジル文化の音楽、映画、芸能等について論じた書物を出してきた著者による日系ブラジル移民文学の大部な総合的研究書の第1巻で、この後Ⅱも刊行されている。100余年のブラジル日本人移民史の中で、様々な土地、歴史の中で刊行された同人誌や邦字紙の文芸欄等に投稿された小説、詩、俳句、短歌、川柳、歌謡を丹念に追ってひたすら読み込み、6つの期間に区分して、それらの背景、時代の経過にともなう変化などを紹介し、文学史のみならずブラジル日系社会における全文学活動を詳しく解説している。

また後半の593~809頁は、ブラジル日系社会の3つの文学賞の入選作の出版年、作者名、作品の題名、あらすじ、賞の内容を網羅したもので、その後の1906年から2011年の間の文学年表、人名索引とともに、日系ブラジル移民の文学の全容を記録しようとした、著者の20年にわたる調査の集大成であり、大変な労作である。  〔桜井敏浩〕

〔『ラテンアメリカ時報』 2013年春号掲載 (社)ラテン・アメリカ協会発行〕

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日本からブラジルへ-移住100年の歩み』 

日伯協会編 財団法人日伯協会 2012年12月  80頁 1,500円+送料 (問い合わせは info@nippaku-k.or.jp Tel/Fax 078-230-2891 へ)

 

2011年に神戸で開催した「知られざるブラジル移住の歴史展」の内容を取りまとめた写真による解説。第1期は笠戸丸渡航とそれに先立つ4人の先駆者たち(1803~1927年)、第2期は移住の成熟期を支えた人々(1928~45年)、第3期は戦後の移住と日系人の活躍(1946~2008年)に分けた展示内容を、貴重な写真多数とともに取りまとめたもの。 〔桜井敏浩〕

〔『ラテンアメリカ時報』 2013年春号掲載 (社)ラテン・アメリカ協会発行〕


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ブラジルの日本人 日本のブラジル人
 

中桐 規碩 丸善書店岡山出版サービスセンター 20128  214頁 2,500円+税


著者はくらしき作陽大学で社会学を講じた後、在日ブラジル人子弟の教育活動を行っていた「エスコーラ・モモタロウ・オカヤマ」に、2010年に始まった文部科学省の「虹の架け橋教室」事業にそれが吸収されるまで、ボランティアで参加し活動していたが、その間折に触れ日本人のブラジル移民のことを調べ、書きためてきた。

日本人移民史、移民のブラジルでの生活、コーヒー栽培体制の変革、ブラジルの岡山県人の実態、海外移民の背景としての明治初期の農村の家計調査、さらに日本へのブラジル人デカセギが増えたことから、ブラジル人学校の設立の経緯や在ブラジル日本人と在日ブラジル人の移住過程の比較考察に至るまでを綴っている。
〔桜井 敏浩〕
                       

〔(社)ラテンアメリカ協会 Webサイト「掲示板」 「図書案内」に収録〕
 

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アマゾンばか』 
 

中東 照雄著・水口 謙二編 地球丸 20132月 144頁 1,800円+税


プロ魚釣り師と元釣り専門誌編集長のコンビによる、アマゾンの大物魚釣り紀行。著者の子供時代に従兄弟からルアー釣りの面白さを教わり、熱帯魚店の店員になって様々な知識と扱い方を覚え、扱う魚の約8割が南米原産と知りアマゾン行きを決行する。開高 健の『オーパ!』の釣り旅行に同行したブラジル在住の作家醍醐麻沙夫氏と会って、開高も自分も使ったというルアーを贈られ、以後8年毎年のブラジル釣り旅行にのめり込んだという。

続く第二章「ジャングルのスター」は、もちろんアマゾン河のスター、ツクナレ、ドラド、ピラニア、ピラルクなどを釣り上げるに至った旅、巨大魚との格闘から食した味まで、プロを自称するだけに迫力ある釣りの描写とこれでもかと展開する度アップした写真の迫力が素晴らしい。第三章は著編者ならではの
アマゾン釣り用道具・装備解説。LureRodReelという釣り具から、人の指をいとも簡単に食いちぎる鋭い歯と強い顎をもつ魚を釣った時に針を外す工具、豪雨や激流に耐える服装や装備、アマゾン釣りに合った漁具の使い方などの蘊蓄も載っている。


釣りもここまでやるかと思わせる、文字どおりのアマゾンばかの快著。 
〔桜井 敏浩〕  

             

〔(社)ラテンアメリカ協会 Webサイト「掲示板」「図書案内」に収録〕 

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大きな音が聞こえるか』 

坂本 司 角川書店 2012年11月 602頁 1,900円+税


ブラジルのアマゾン河中流域で毎年3月頃に出現する河水の大逆流ポロロッカでサーフィンをすることを夢みた高校生が、ついに実現するまでを描いた長編小説。

母の弟の剛が製薬会社のメディスン・ハンター(将来の薬原料・ヒントとなる植物等の収集専門家)としてベレンに赴任し、メールのやり取りでアマゾン河に関心をもった主人公の泳は、必死にアルバイトに励んで資金を貯め、28時間かかってロサンジェルス、サンパウロ経由ベレンに到達、日系ヤマモト家の世話になりつつ、マナウス近くでポロロッカのコマーシャル映像を撮りに来た米国人チームに加わることになり、ついに二度にわたって逆流の大波に乗る。

全体の半分は自宅での両親にブラジル行きを納得させるまでのやり取り、学校での友人たちとの付き合い、湘南の海へのサーフン通いなどの描写だが、それが泳の終わらない波ポロロッカ(大きな声の意味)に乗ることを実現するための必然的な伏線になっている。

ベレンで初めて見たブラジル社会の新鮮な印象、血は日本人でもブラジル人の価値観・道徳観を合わせもつ3世の子供たち、米国とブラジル人の混成グループに加わった泳と剛との愉快な交流などの描写もあって、サーフィン実現を通してブラジルの片鱗も見せてくれる、楽しい青春小説。〔桜井 敏浩〕

〔(社)ラテン・アメリカ協会 Webサイト「掲示板」→「図書案内」に収録〕
 

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世界の作家32人によるワールドカップ教室
 

マット・ウィランド、ショーン・ウィルシー 越川芳明、柳下毅一郎監 訳 白水社 499頁 
2,800円+税


本書の原題は
Thinking Fans Guide on the World Cup、主に英語圏の作家達が書いた2006年のドイツ大会に出場する32か国のサッカー文化、歴史などの文章とドイツ大会のグループリーグと決勝トーナメントの日程、1930年~2002年のワールドカップの1~4位の国の試合数、ゴール数、観客動員数や、世界69の国・地域の通算成績表のデータを付けたものである。国別では、結果的に優勝したイタリアをはじめフランス、ドイツ、ポルトガルや予選リーグで敗退した日本、韓国を含む国々に、ラテンアメリカからはコスタリカ、エクアドル、パラグアイ、トリニダード・トバゴ、アルゼンチン、メキシコ、ブラジルについて記述されている。各国別記述の後に、後書きに代えてグローバリゼーションの時代におけるサッカーを読み取る『ワールドカップで勝つ方法』という項があり、これもまた面白い。 

各項はそれぞれの執筆者が自由に書いており、構成も内容も様々であるが、熱烈なサッカー好きが書いた各国選抜チームの選手の紹介や戦術の解説を期待すると大きな間違いで、サッカーを切り口にその国の政治・経済・社会構造がこうだから戦績はこうなのだといったような解説や、政治、南北問題、移民問題との関係についての言及もあって、サッカーフアンのみならず世界情勢に関心のある者にも興味深い論集である。 〔桜井 敏浩〕


〔(社)ラテン・アメリカ協会 Webサイト「掲示板」→「図書案内」に収録〕

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言葉図鑑 にほんご・えいご・ポルトガルご・スペインご
 

五味 太郎 偕成社 2013年3月 各2,200円+税

  
①なまえのことばとくらしのことば 68頁
②うごきのことばとかざることば  72頁


いろいろな物の日本語名と挨拶の言葉を中心に「暮らしの言葉」(①)と、人、動物・物などの形や有様を表す「飾る言葉」(②)から構成され、言葉の意味を絵で知り、日本語の面白さや奥の深さとともに、それを他の3ヵ国語でどういうかを一覧で見ることが出来る。それぞれに掲載語の索引と日本語五十音表が付いている。

言葉を絵で意味を知り、言葉を覚え、指指しで会話を試みることなどで、日本語を母語とする子供たちとスペイン語、ポルトガル語を母語とする子供たちのコミュニケーションの架け橋に使われて欲しいとの願いも込められて刊行された美しい絵本。 〔桜井 敏浩〕


〔(社)ラテン・アメリカ協会 Webサイト「掲示板」→「図書案内」に収録〕

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ピダハン -「言語本能」を超える文化と世界観
 

ダニエル・L・エヴェレット 屋代通子訳 みすず書房 20123 408 3,400円+税

 
アマゾン奥地にひっそりと住むピダハン族とその周辺の部族への布教のため
1977年に入り、その後30年にわたり研究を続けた言語人類学者による研究の記録と成果。 

ピダハンはアマゾンの奥地に暮らす400人を割るという少数民族だが、ピダハンの文化には、「右」「左」や数の概念、色の名前さえも存在せず、世界のほとんどの民族が持っている「神」の概念も部族の創世神話もなく、しがたいそれらを表現する言葉もない。生き抜くためには必要でない言葉、表現を持たず、神話や信仰などに関心を示さないが、十分満たされた生活と豊かな精神世界をもつ彼らの社会は、これまでの言語学の定説をも覆すものであり、彼らの文化が数百年も外部の文明の影響に抵抗できたのはまさしくそれが理由だったとのではないかと考えさせられる。我々が知らず知らずに身についた西欧的な普遍性からの見方、価値観が、それとはまったく異にする頑固な哲学をもったいわゆる“未開文明”であるピダハンの世界観に崩される過程を、著者は30年続いた奮闘も交えて、驚きと笑いで語っているが、そもそもは、キリスト教の新教福音派の伝道師として彼らの集落に入った著者であるが、ついには信仰を見失い無神論者になってしまうという衝撃的な内容をもつ。 〔桜井 敏浩〕
                           

〔『ラテンアメリカ時報』 2012/13年冬号掲載 (社)ラテンアメリカ協会発行〕 

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ブラジル・カルチャー図鑑 -ファッションから食文化をめぐる旅』 
 

麻生 雅人・山本 綾子編著 スペースシャワーブックス 201212 175 1,800円+税

  
ブラジルの生活や文化、さらに
2014年のワールドカップの開催12都市のガイドブックをサッカースタジアムの姿を含め、600点以上のカラー写真と図版で見せる図鑑。現在のブラジルを理解するために有用であり、かつ眺めているだけで楽しい。

ファッション、アート・民芸品、建築・都市、食・飲み物、祭り・踊り・音楽の554の項目に加えて、コラムでエコロジー社会に向けたグリーン・エコノミー・グッズとブラジル大手の鶏肉等食品メーカーの戦略を4編、サンパウロはじめ5都市のライフスタイルの事例もついている。〔桜井 敏浩〕
 

〔『ラテンアメリカ時報』 2012/13年冬号掲載 (社)ラテンアメリカ協会発行〕

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遠い声 -ブラジル日本人作家 松井太郎小説選・続
 

松井 太郎 西 成彦・細川周平編 松籟社 20127月 333頁 1,900円+税

   
1917
年神戸市に生まれ、36年父の失業を機に一家でブラジル移住、サンパウロ州奥地で農業に従事していたが、隠居後長年親しんできた文芸活動に邁進し、コロニアの新聞・同人誌に投稿しており、2010年に同社から『うつろ舟 ブラジル日本人作家松井太郎作品選』が出ている〔協会Webサイト「掲示板」→「図書案内」で紹介〕。

続編の本書も、日本人移民の息子と娘が駆け落ちして原生林の開拓に挑むが出産とマラリアで妻子を失い、寡夫はやがて研ぎ屋として日系人移住地を旅する果てに亡妻の弟とめぐり合う「ある移民の生涯」をはじめとする日本人移民の辛酸をなめた生業と生活の挿話を綴った短編と、上記前書に収録されている「堂守ひとり語り」とともに、著者が関心をもった東北部の夜盗・殺人者を題材に描いた「野盗懺悔」「野盗一代」の東北ブラジルもの三部作と、同地で今なお人気が高いシセロ神父を称えたコルデール版(韻を踏んだ吟遊詩人語り節)の訳詞「ジュアゼイロの聖者」に至る、幅広い著作の中から選ばれた15編の短編小説が収録されており、優れたコロニア文学作家の集大成である。〔桜井 敏浩〕
                                  

〔『ラテンアメリカ時報』 2012/13年冬号掲載 (社)ラテンアメリカ協会発行〕

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トランスナショナルな「日系人」の教育・言語・文化 -過去から未来に向かって』 
 

森本豊富・根川幸男編著 明石書店 20126 262頁 3,400円+税

 
海外在住日系人がいる日本語教育、言語、文化について、
32名からなる研究者の論考13編と11のコラムで構成した総合的な論考集で、具体的にはブラジルはじめカナダ、米国・ハワイ、フィリピンを取り上げている。

本書の大きな部分は、ブラジル移民と日系在日ブラジル人について割かれており、1930年代サンパウロにおける日系社会での言語使用状況と日本語教育、内陸農村地帯の日系社会子弟教育、日本語学校とそこでの教育の変遷、そして戦後多くなったバイリンガルと80年代以降の日本へのデカセギとの関連、日本での外国人のこども達の言語教育の環境、ブラジル学校の日本への進出、日本内地からの移民と異なる沖縄移民の郷里との連繋、2008年に行われたブラジル日本移民100周年記念行事にみる新たな文化の創造、日本移民史料館の記録保全への取り組みなど、さまざまな切り口での分析がなされている。巻末のハワイ、米国、カナダ、ブラジルおよび日本での日系教育史年表(18681960)も有用な資料である。〔桜井 敏浩〕
                             

〔『ラテンアメリカ時報』 2012/13年冬号掲載 (社)ラテンアメリカ協会発行〕

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日本のエスニック・ビジネス
 

樋口 直人編 世界思想社 201211月 286頁 2,800円+税

  
日本でエスニック・マイノリティが営むビジネスの実情を紹介している。浜松等で興ったブラジル人相手のビジネスの動機、機会構造、変遷(片岡博美)、在日ブラジル系メディアの担い手と興亡(アンジェロ・イシ)、鶴見など京浜工業地帯でのボリビア、ペルー等南米系の電気工事業者の起業(樋口直人)を紹介していて、身近な存在になりつつある“外国人”のビジネスの進展と変容の一端を知ることができる。〔桜井
敏浩〕                                

〔(社)ラテンアメリカ協会 Webサイト「掲示板」→「図書案内」に収録〕

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「移民列島」ニッポン -多文化共存社会に生きる』 
 

藤巻 秀樹 藤原書店 201210月 315頁 3,000円+税

  
欧米諸国等に比して外国人の割合が極めて低く、同質社会の馴れ合いでやってきた日本で、好むと好まざるにかかわらず外国人受け入れが増大している。東京だけ見ても池袋(中国人)、西葛西(インド人)、高田馬場のミヤンマー人、韓国人をはじめ多国籍の街といわれる大久保などがあり、愛知県の保見団地等にはブラジル系等の南米の日系人が多く住む。また農家へのアジア各国からの花嫁が嫁いでいる新潟県南魚沼市のような例もある。

本書は、まず日本の各地、様々な仕事に入ってきている移民たちの存在、彼らの渡航目的、分布を紹介し、次いで日本人と外国人の共生には何が必要かを、実際に保見団地、大久保、南魚沼市に著者(日本経済新聞記者)が住んでみての記録と、日本各の取材を通じて聞いた移民たちの肉声を伝えようとするものである。
最終章では1990年の入管法改正をきっかけに増大した外国人に対応する政府や政党の移民政策の試行錯誤などを振り返り、これからの日本の移民政策と脱「同質社会」への道を提言している。巻末には、戦後日本の移民受け入れに関する年表(19512012年)や参考文献リスト、本書に登場する店舗・団体・人物の一覧も付けてあり、日本における外国出身者との共存を考える上で有用な情報を提示している。〔桜井 敏浩〕
                               

〔(社)ラテンアメリカ協会 Webサイト「掲示板」→「図書案内」に収録〕

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カンタ・エン・エスパニョール! -現代イベロアメリカ音楽の綺羅星たち
 

ホセ・ルイス・カバッサ 八重樫克彦・由貴子訳 新評論 201210月 211頁 2,200円+税

 
アルゼンチンで活躍するジャーナリスト、コラムニストである著者による、アルゼンチンをはじめウルグアイ、キューバ、スペイン、米国、ペルー、ブラジルから来た
22人のミュージシャンへのインタビュー集。
ここで取り上げられた歌手、作曲家、ギターやバンドネオン等の演奏家、シンガーソングライター、詩人たちは、ポピュラー、ジャズ、フォルクローレ、タンゴ、レゲー、ロックなどさまざまな分野にわたっており、いずれも現代のミュージシャンとして評価され、スペイン語で歌い語っていることが共通している。
アルゼンチンの音楽というとタンゴやフォルクローレと思われており、本書にもメルセデス・ソーサも登場するが、むしろジャズ系やスペイン語で歌うロックが近年注目を集めている。日本では、本書でも取り上げられているブラジルのエグベルト・ジスモンチや同じくポピュラー音楽(MPB)のカエターノ・ヴェローゾ、ロックのヒタ・リーなど以外でもブラジルのボサノバやMPBについての紹介書や音楽記事が多いが、あまり知られていないスペイン語で活躍する現代のミュージシャンの実像を、巧みなインタビューで彼らの生き様やそれぞれの音楽に賭けてきた人生を語らせており、新しい音楽動向を知ることができる。〔桜井 敏浩〕
                                 
〔(社)ラテンアメリカ協会 Webサイト「掲示板」→「図書案内」に収録〕

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ブラジル 跳躍の軌跡』 
 

堀坂 浩太郎  岩波書古(新書) 2012年8月 218頁 800円+税

 

1980 年代半ば、21 年間に及んだ軍事政権から文民政権に移行したものの、ハイパーインフレや対外債務危機で経済危機に陥り混酸していたブラジルが、今は「新興国」の雄ともて噺され、BRICS の中でも最も政治リスクの小さ い国として評価されている。

1964 年の軍事政権の発足とテクノクラートに主導された経済発展と破綻による軍部の退出、80 年代から 90 年代前半にかけての文民政権時代の政治混乱と経済危機を経て、中道左派のカルドーゾ政権によりインフレを克服して現在の成長軌道の基礎を作ったが、その後継政権が左派労働者党ルーラ大統領であったにもかかわらず、財政政策、対外経済関係は維持され、著しい経済発展を実現して2期8年の最後まで高い支持率のまま任期を終え、その政権を支えてきたジルマ・ルセフ女性大統領が継承して好調を維持している。その背景には、民政移管当時から国のかたち、選挙制度、文民統制、民営化、外資導入や金融安定化システムの構築、政府・企業・市民社会の協働。貧困克服策の実施、教育改革等の制度設計改革が積み重ねられてきたことを指摘している。さらに姿を変えた資源大国として、国際プレゼンスが高まり、国際化が進展するブラジルの現在を生き生きと描き、終章で遠くても近い国にと日本・ブラ ジルの重層的関係と相互補完関係を超えた新たな結合を提起している。

本書は 1978 年からの日本経済新聞サンパウロ特派員から上智大学に転じ、一貫してブラジル政経を研究してきた 著者が、この四半世紀に民主化、債務国から債権国への転換、1995年以来3代にわたる大統領の下で劇的な変化を 遂げた発展の軌跡を、政治、経済、社会そして対外関係から分析し、分かりやすく解説したもので、変容著しい現在のブラジルを正確に理解するために、コンパクトながら核心をもれなく明らかにした優れた手引きである。 〔桜井 敏浩〕
 

〔『ラテンアメリカ時報』 2012年秋号掲載 (社)ラテン・アメリカ協会発行〕

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地球時代の「ソフトパワー」一 内発力と平和のための知恵』 

浅香 幸枝  行路社 2012年3月 362頁 2,800 円+税


国際社会における米国の影響力が低下し、もはや軍事力や経済力というハードパワーだけで相手を圧倒する時代ではなくなったとの反省から、1989 年にハーバード大学のジョセフ・ナイ教授が提唱したのは、 相手が従いたくなるような文化、政治的価値、外交政策の3資源から構成されるソフトな力でというソフトパワーという概念だった。本書はこれを多文化共生と平和構築のために、南北アメリカ地域と日本を分 析対象に「平和構築jを目指して、経済力と文化力の2側面から政治・経済・社会・文化・哲学・教育・国際関係と多角的にソフトパワーによる平和構築の可能性を考察しようとしたものである。

人間安全保障を調う ODA を含む日本独自のソフトなパワーの源泉から始まり、ハードパワーを認識し ながらもソフトなパワーが優勢となるような地球社会の枠組み、スペイン・ポルトガルと旧植民地の文化的つながりを考察し、合弁事業や技術協力を通じたブラジル、考古学調査を通じてのペルー、タンゴを通 じてのアルゼンチンとの関係を紹介した後、ソフトなパワーとしての日系人の役割をメキシコ、ブラジル、アルゼンチンの日系人が明らかにしている。日本が不平等条約改定交渉で苦労している時に初めから平等条約を締結してくれたメキシコ、アルゼンチン、ペル一、チリの駐日大使が外交関係を通じての平和構築を述べ、最後に編者がソフトなパワ一による対等な関係で互いの文化を尊重して平和への知恵を出すことを提唱している。      〔桜井 敏浩〕
 

〔『ラテンアメリカ時報』 2012年秋号掲載 (社)ラテン・アメリカ協会発行〕

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VIVA O BRASIL! -アミーゴからの贈り物 
 

桑嶋 周次  文芸社 2011年9月 254頁 1,500円+税


ブラジル諸事情、ブラジルでの体験に基づく見聞、ブラジルならびに日本でのブラジル人との交流で得た実に様々な分野の事項について、約190項目もの著者の見聞録、解説、所感を集大成したもの。

 「これがブラジル」「これぞブラジル人」「交通事情」「観光」「土産」スポーツと娯楽」「料理とデザート」「飲み物」という項目分類に、新日本製鉄で長く海外技術協力業務に携わり、特にブラジルへは26回も渡航したという著者が引退後に綴った短文集。著者独特の解釈による「授業では教えてくれないポルトガル語」の解説も付いているが、著者の見聞の広さ、好奇心の旺盛さは見事である。 〔桜井 敏浩〕


〔(社)ラテン・アメリカ協会 Webサイト「掲示板」→「図書案内」に収録〕

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楽々サンパウロ 2011/2012』 
 

布施 直佐  Editora Kojiro Ltda. 2011年12月 A4版224頁 定価 3,500円 (税・国内送料込み) 申込は Brazil Business Consulting 担当 倉智まで。 メール:rakurakusp@gmail.com 電話:042-400-0327)

 

サンパウロでの生活に有用な、食、ショッピング、鑑賞・エンターテイメント、観光、ホテル、スポーツ、生活準備・ソーシャルライフ、住居、交通、郵便・電話等のサービス、メディア、教育、美容、医療やビジネス事情などの情報を網羅し、さらに最低限必要な日本語・ポルトガル語の用語集や語句表現例文も載せるなども付いており、ビジネスや観光でサンパウロに住み、あるいは観光で訪れる人たちに必要な情報を網羅した便利なガイドブック。   〔桜井 敏浩〕


〔(社)ラテン・アメリカ協会 Webサイト「掲示板」→「図書案内」に収録〕

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ドゥラードスの記憶 -ブラジル・南マット・グロッソ州 ドゥラードス市滞在記
 

中村 四郎 文芸社 2012年5月 163頁 1,000円+税

    
長く公立小学校に勤務した著者が旧JICAの移住シニア専門家(現シニア海外ボランティア)として1993年から2年間、ブラジル南西部のカンポグランデ南方200数十キロの町に滞在し、同州の日本語学校の指導に当たった際の現地日本語教育状況と著者の家族との生活、日系社会の簡単な歴史と著者の感想、さらに2003年7月に2週間ほど再訪した旅の思い出を綴っている。

ドゥラードス市の日本語モデル校を拠点に、周辺の日本語学校を巡回し、それぞれの学校の日本語授業を参観し、先生たちと授業の進め方や指導の工夫を話し合っていくうちに、それぞれの日系社会状況、子弟教育の環境、日本語学校運営や日本語教師養成の課題、日本語教育の将来需要などの問題点が浮かび上がってきたことについても述べている。〔桜井 敏浩〕

          

〔(社)ラテン・アメリカ協会 Webサイト「掲示板」→「図書案内」に収録〕
 

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ラテンアメリカ・オセアニア 世界政治叢書6

菊池 努・畑 恵子編著 ミネルヴァ書房 2012年4月 279頁 3,500円+税

    
これまで国家主権を前提にしてきた政治学が、21世紀に入って世界の政治潮流の変化により政治経済・対外関係がどう変わり、今後どうなるかを展望するシリーズのラテンアメリカ編。グローバル化の進展と地域主義の進展で、ラテンアメリカがどう変化しつつあるかを理解するのを助けてくれる解説書。  

グローバル化の進展と地域化の推進による「周縁化」からの脱却を論じた序章から始まり、第1章ラテンアメリカの「民主化・市場経済化と新しい地域主義」(畑恵子)では、グローバリズム、汎米主義と地域主義、政治体制の変遷、民主化の進展と1980年代の経済危機、民主主義の発展と新自由主義、市場経済化、新たな地域主義とその課題を、第2章「ラテンアメリカの地域主義」(堀坂浩太郎)では地域の概念に続いて第2次世界大戦後の流れの古い地域主義と、経済の国際化、域内外の市場統合の動きをともなう新しい地域主義を論じている。第3章「中米・カリブの地域主義」(松本八重子)では、その歴史的変化と発展、米国や国際政治との関係を、第4章「安全保障問題と米州地域関係」(浦部浩之)では、米州安全保障秩序の歴史と東西冷戦後の転換、暴力・麻薬・テロに対するに脆弱な民主主義、米国から離れての新たな枠組みの動きを、第5章「グローバリズムと反グローバリズム」(新木秀和)では、反グローバリズム運動の登場と新たな展開をサパティスタ運動やチャベスのボリーバル革命等を例に、その特徴と課題を論じている。   〔桜井 敏浩〕
 

〔『ラテンアメリカ時報』 2012年夏号掲載 (社)ラテン・アメリカ協会発行〕

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ブラジルの不毛の大地「セラード」開発の奇跡 -日伯国際協力で実現した農業革命の記録

本郷 豊・細野 昭雄 ダイヤモンド社 2012年7月 252頁 1,600円+税

   
1973年の世界的な大豆不足を契機に、当時の日本政府・民間経済界に資源・食料の安定供給源を確保する動きが加速、国際協力事業団(現JICAの前身の一つ)も設立され、ブラジル国土の約1/4を占める不毛の大地セラード農業開発への協力も始まった。

本書は、1979年日伯農業開発協力社(CAMPO)への出向以来、このプロジェクトに関わってきたブラジルへの協力専門家と、JICA研究所長が纏めた両国協力による壮大な農業革命の記録である。

ブラジル熱帯サバンナでずっと農業不適地といわれてきたセラードが、土壌改良や熱帯性気候に適応した大豆等作物品種の開発、流通インフラ整備の進展により、両国の協力により試験的実施から入植者を募り、事業地を拡大し、ついには世界有数の穀倉地帯に変貌させるまで、様々な技術、営農、流通などの課題に挑戦し、尽力した多くの関係者へのインタビューによって、“セラードの奇跡”を可能ならしめた人と組織を明らかにしている。

今やセラードが世界の食料供給と価格の安定に大きな役割を果たしている一方で、生態系・環境保全に最大限の配慮をしていること、単に農業開発に留まらず、多様なアグリビジネスを発展させてブラジルの成長にも大いに貢献していることも、詳細に記述されており、我が国の長期かつ最大の協力事業であるセラード農業開発の歴史と全貌を理解する上で極めて有用な記録である。  〔桜井 敏浩〕            

〔『ラテンアメリカ時報』 2012年夏号掲載 (社)ラテン・アメリカ協会発行〕
 

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南米日系人と多文化共生 -移民100年・・・その子孫たちと現代社会への提言

福井 千鶴 沖縄観光速報社 2010年5月 266頁  2,000円+税

 

日本人の多くは出稼ぎに来ている南米日系人をみて、現地の日系人やその社会を思い描いていることが多いが、その歴史、生活、生業、そして現地でも日本でも抱える問題点についての知識が欠け、多くのご認識、誤解がまかり通っている。

本書は、ボリビアの移住地を初め南米各地の日本人移住地やその社会をも訪れ、移住の歴史、現代の移住地や日系人社会の様相を紹介するとともに、現地日系移住地・日系社会で生じている若者の都会への移動による空洞化や農業等の後継者不足等から衰退が進む姿を明らかにし、移住地活性化のための方策を提起している。

それとともに、南米から日本への大量の出稼ぎの背景、日本に来ての日本人社会と南米日系人との連携、日本での南米人集住地域で起きている様々な問題を明らかにし、より良い地域社会を築くための具体的な解決策を提言している。

日本国内、現地での実情を取材した上で、南米日系人社会の問題を掘り下げて、それぞれの地での地域社会での共生の推進方策を提言していて、南米日系人社会を知る上できわめて参考になる労作であり、一読を勧めたい。著者は、日本大学国際関係学部准教授。                 〔桜井 敏浩〕

〔(社)ラテン・アメリカ協会 Webサイト「掲示板」→「図書案内」に収録〕

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次なる経済大国 -世界経済を繁栄させるのは BRICsだけではない
 

ジム・オニール 北川知子訳 ダイヤモンド社 2012年2月 261頁  1,800円+税)


ゴールドマン・サックスのチーフエコノミストとして、2001年に発表したG7諸国と主な新興国との関係を分析したレポートの中で、人口が多く経済的に有望なブラジル、ロシア、インド、中国の4カ国の成長が、今後数十年の世界経済の牽引役になるとして、その頭文字を取って“BRICs”と名付けたのが著者だが、そのレポートを出す前後の経緯や著者の半生を交え、この4カ国とそれに続くインドネシア、韓国、メキシコ、トルコを「成長国市場」とし、さらにエジプト、イラン、ナイジェリア、バングラデシュ、パキスタン、フィリピン、ベトナムを加えた「ネクスト11」の提起を含め、現在から今後の世界経済の展望を解説したのが本書である。

発表当時ブラジルを入れたのは語呂がいいからではといわれ、事実4カ国の中でブラジル経済についてはほとんど展望がないように見えたが、それでも2011年にはGDPがイタリアにほぼ並ぶとの予測は、2010年にイタリアを追い抜いたことで証明された。現在ブラジル通貨レアルは、BRICsの中では最も過大評価されているが、長期的に見ればインフレ抑制策の維持によって成長は持続可能としている。2010年にリオデジャネイロを訪れた際にスラム街にある旅行代理店を見たことも、ブラジル経済のデータの見方に彩りを与えてくれたという挿話を交え、ブラジルは投資という観点からは、BRICsの中で最も欧米に近く、民主的で国内資本市場が確立されていると高く評価しているが、すべてが順調に見えると欧米日の個人投資家の人気があまりに高いことは、リスクや機会、価値は常に比較評価しなければならないと指摘している。

中国の資産バブルやブラジルのレアル高による成長持続の危惧を否定するなど、全般的に楽観的すぎるきらいがあるが、グローバル化された世界経済の新たな潮流を説いていて分かりやすい。
〔桜井 敏浩〕
 

〔(社)ラテン・アメリカ協会 Webサイト「掲示板」→「図書案内」に収録〕

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ブラジルの民族系民間企業 -経済成長下、力をつける企業アクター』 
                          

堀坂 浩太郎・内多 允(財)国際貿易投資研究所 2011年3月 61頁 頒価2,000円(申し込みは同研究所


国際貿易投資研究所(ITI)では、平成20年度から「ブラジル研究会」(委員長-堀坂上智大学教授)を設け、一連のブラジル分析を行ってきたが、本書は平成22年度の成果を纏めたものである。ちなみに、これまで出された報告書は、『ブラジルにおける成長産業の動向と消費社会の到来』(2008年3月)、『ブラジルの消費市場と新中間層の形成』(09年3月)、『新興国ブラジルの対外関係-世界金融危機を踏まえて』(10年3月)で、本書は4本目に当たる。

国営企業と外資系企業が産業の中で大きな役割を果たしてきたとの印象が強いブラジルだが、近年は民族系民間企業が合併・買収なども活発に行い規模を拡大し、国内市場のみならず国際市場においても日本企業のライバルとなり、あるいはパートナーとなる事例も出てきており、軽視出来ない存在になってきている。

本書は、このブラジル民族系企業の現代の姿を焦点に、第1章でその概要と展開を概説し、ブラジルの産業が政府系企業と外資系企業、民族系企業の「3つの脚」で支えられていたのが、近年の公営企業民営化によって「2つの脚」になったこと、企業ランキング調査結果からの主要企業の交替、さらに世界金融危機以降のM&A件数などに見る変容を示し、最後にBNDES(国立経済社会開発銀行)の主要部門投資予測とPDP(生産性開発計画)における強化分野を例に将来の姿を示している。第2章ではブラジル企業の海外戦略を取り上げ、ブラジル企業の急速な国際化、海外事業戦略を紹介し、いまやラテンアメリカ最大の石油メジャーとなったPetrobras、M&Aを繰り返して今や食肉メジャーに躍進したJBS、世界第3位の旅客機メーカーに成長したエンブラエール、これもラテンアメリカ最大のバス車体メーカーのマルコポーロ、南米のみならずアフリカへも進出している建設大手のオデブレヒトを事例として紹介している。参考資料として32社からなる「企業ファイル」をつけているが、多国籍企業化しつつある民族系企業を中心に主要政府系3社を加え、企業規模、沿革、国内内事業活動、経営の特色、主な子会社群を同じ様式で列記していて、極めて有用なデータである。〔桜井 敏浩〕

   
〔『ラテンアメリカ時報』 2012年春号掲載 (社)ラテン・アメリカ協会発行〕

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ブラジル経済の基礎知識 第2版
 

二宮 康史 ジェトロ(日本貿易振興機構) 2011年7月 208頁 1,600円+税

日本貿易振興機構(JETRO)サンパウロ事務所勤務の後、本部中南米課でブラジルを担当するブラジル専門家による総合的なブラジルのマクロ経済、主要産業の成長の可能性と企業の動向、外交・通商政策の概要と、ビジネスアプローチに必要な税務・会計、労務、会社設立、ビザ取得、資金調達と送金、貿易システム、知的財産問題についての総合的な解説書。

2007年に発行された初版の後、ルーラ政権第2期の米国発金融危機を乗り越え、IMFへの資金拠出による「債権国」化し、世界的な資源価格上昇によって経済発展を順調なものとして、同じ与党のルセフ大統領に引き継ぐまでの経済の概況を前半で判りやすく解説しており、後半ではこの成長がまだ続くブラジル市場への参入に必要な実務知識を概説していて、この1冊でブラジル経済の基礎と実務に必要な知識が得られるよう、よく工夫された構成になっている。〔桜井 敏浩〕

   
〔『ラテンアメリカ時報』 2012年春号掲載 (社)ラテン・アメリカ協会発行〕

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グローバル化の中で生きるとは 日系ブラジル人のトランスナショナルな暮らし
 

三田 千代子編著 上智大学出版(発行)、ぎょうせい(発売) 2011年10月 332頁 1,905円+税


2009年に立ち上げた、大学の歴史学、経済学、教育学、社会学、宗教学、人類学の研究者と地方自治体や公益法人で対応している10人の専門家がアンケート調査も含め行った調査研究の結果を取り纏めたもの。

日系ブラジル人の就労に関わる日本企業の雇用政策、特に集住地での地方自治体の多文化共生に向けての対応、在日ブラジル人子弟教育とブラジル人学校、移動にともなうアイデンティティ形成、宗教生活とともに、送り出し国であるブラジルとの関係、在日ブラジル人と在日ペルー人との生活戦略の違い、在日第二世代のホームランド選択と受け入れるホスト社会の問題点の研究に加えてアンケート調査結果による解説も付して総合的に考察している。 〔桜井 敏浩〕

  
〔『ラテンアメリカ時報』 2012年春号掲載 (社)ラテン・アメリカ協会発行〕

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バイオエネルギー大国ブラジルの挑戦
 

小泉 達治 日本経済新聞出版社 2012年1月 253頁 1,800円+税


著者は、農水省農林水産政策研究所で早くからブラジルのバイオマスエネルギー源と食料生産に着目してきた研究官。ブラジルは、1970年代から自動車燃料としてアルコール(エタノール)の大規模生産と使用に邁進してきた実績があり、現在国家戦略としてバイオエタノール、バイオディーゼル、バイオ電力を3本柱とし、再生可能燃料で世界をリードしている。

これまでブラジルといえばとかくバイオエタノールが注目されてきたが、本書はバイオ電力産業の育成、バイオ燃料の普及、ならびにバイオエネルギーの将来と食料需給に与える影響に至るまでを解説し、電力供給に不安を抱える日本が学ぶべき政策を示唆している。〔桜井 敏浩〕

     
〔『ラテンアメリカ時報』 2012年春号掲載 (社)ラテン・アメリカ協会発行〕

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パンタナール -南米大湿原の豊穣と脆弱
 

丸山 浩明編著 海青社 2011年9月 295頁 3,800円+税


ブラジル、パラグアイ、ボリビアにまたがる世界最大級の熱帯低層湿原パンタナールの多用な生態系の包括的な保全と、地域社会の持続可能な発展について、人文地理、自然地理、農・獣医学の5人の専門家が地元の研究者と協力して10年間にわたって行った実証研究の成果。

ブラジル領南パンタナールを中心に調査を行い、第Ⅰ部自然環境ではパンタナールの形成史、地形・気候と水文環境、自然環境条件の違いにともなう生物多様性分布、それらを支える生息環境、地表水と地下水の複雑な交流環境を論証している。第Ⅱ部では、先住民と17~18世紀前半に侵入した欧州人の植民による開発の歴史、導入された牧畜の盛衰と文化、エコツーリズムの発展とそれによるスポーツフィッシングにより翻弄される漁民、第Ⅲ部では伝統的ファゼンダ(農牧場)経営や粗放的牧畜経営を事例により解明し、人間による自然堤防の破壊などによる水の流れの変化の伝統的な生態学的知識と科学的知識の相克を分析し、この調査結果のまとめとして生態系破壊の諸相、環境保全への取り組みと課題、持続可能な発展への取り組みを提言している。 〔桜井 敏浩〕


〔『ラテンアメリカ時報』 2012年春号掲載 (社)ラテン・アメリカ協会発行〕

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写真は語る 南アメリカ・ブラジル・アマゾンの魅力
 

 松本 栄次 二宮書店 2012年4月 190頁 3,800円+税


ラテンアメリカ、特にブラジルを中心に地理学、地域論を研究してきた著者が、現地調査の際に撮りためた沢山のカラー写真を駆使し、第Ⅰ部「南アメリカの自然と産業」、第Ⅱ部「ブラジル 動き出した南米の大国」、第Ⅲ部「アマゾン 開発と保全の焦点」を判りやすく解説している。

各地の自然の成り立ち、地下資源や農牧業等の産業や開発の歴史、都市の姿、人々の多様な生活の背景などがよく理解出来る構成になっていて、あたかも著者の案内でエクスカーション(巡検旅行)に加わり周遊しているようであり、これまでの地理概説書にはない、視覚でも現地の状況が把握出来るように工夫されていて、手元に置けば南米・ブラジルの各地の姿を知るのに極めて有用なデータベースとなろう。なお、それぞれの写真には撮影位置についてのGPS情報が付記されていて、Google Earthで検索すると撮影場所と方向を確かめることが出来る。 〔桜井 敏浩〕

   
〔『ラテンアメリカ時報』 2012年春号掲載 (社)ラテン・アメリカ協会発行〕

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ラテンアメリカにおける従属と発展 -グローバライゼーションの歴史社会学
 

フェルナンド・エンリケ・カルドーゾ、エンソ・ファレット、鈴木 茂、受田宏之、宮地隆廣訳 
東京外国語大学出版会 2012年4月 348頁 2,800円+税

   
ブラジルの財務相としてレアル・プランを主導してパイパーインフレを終息し、1995年から2002年年に大統領を務めたカルドーゾは、本来社会学者であり、軍部クーデタの翌年1964年にチリに亡命しチリ大学で教鞭をとっていた際に、チリの歴史学者ファレットとともに纏めた「従属論」の古典書である。欧米中心国の搾取が周辺国を低開発に留めているとする従属論者も多いが、それでは将来も悲観的にならざるを得ない。しかしカルドーゾの従属論は途上国内部構造に着目し、中心・周辺関係だけに運命づけられない、社会集団の構造のもたらす制約と機会により構造は維持・変化するのであるから、個々の国・地域ごとに歴史的・具体的に分析しなければならないと説き、ブラジルを含む途上国が近年の成長路線に乗ることを予見していた。

本書の初版は1969年、その後出た英語版等の加筆修正も適宜取り込み、著者自身の日本語版序、恒川惠市政策研究大学院大学副学長による解説により、40年後にあらためて本書を訳出したことの今日的意味を明らかにしている。〔桜井 敏浩〕

  
〔『ラテンアメリカ時報』 2012年春号掲載 (社)ラテン・アメリカ協会発行〕

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ブラジル文学序説 -文学を通して見えてくる この国のかたちと国民心理
 

田所 清克・伊藤 奈希砂 国際語学社 2011年6月 320頁 2,500円+税

   
日本でラテンアメリカ文学の訳書はかなり多く刊行されているが、そのほとんどはスペイン語圏のものであり、ブラジル文学の翻訳出版はかなり少ない。しかもブラジル文学全般について概観した解説書となるとほとんど見かける機会はなかった。本書は二人のブラジル国立フスミネンセ大学留学経験をもち、精力的にブラジル文学を紹介してきた研究者と翻訳者が、ブラジルの文学を、ブラジルの歴史からその起源、欧州の模倣であるバロック主義、ロマン主義との過渡期であるアルカディズム主義、奴隷解放と帝政崩壊の兆しを背景にした自然主義・写実主義、19世紀末の共和制樹立を背景に優れた詩人を出した高踏・象徴主義、カヌードス戦争勃発を背景に20世紀の幕開けとなる前近代主義、二度の世界大戦の合間に各地で多くの小説家、戯曲作家を生んだ近代主義、第二次大戦後から現在に至る新近代主義・ポストモダン以後の現代ブラジル文学の特色から文学と映画・テレビに至るまで、ブラジル史の展開に対応した文学の変容を詳細に解説したブラジル文学小史と、アレンカール、マシャード・デ・アシス、ジョルジェ・アマード、グラシリアーノ・ラーモスという4人の作家を選んで考察している。

 巻末に文学史年表、日本での主要翻訳作品案内とポルトガル語・日本語索引を付けてあり、ブラジル文学の概観を歴史的に知りたい読者には便利な解説書である。〔桜井 敏浩〕
 

〔『ラテンアメリカ時報』 2012年春号掲載 (社)ラテン・アメリカ協会発行〕

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アマゾン、シングーへ続く森の道』  
 

白石 絢子 ほんの木 2012年3月 227頁 1,500円+税


ブラジル・アマゾンのシングー川流域の熱帯林保全と先住民の生活存続支援を主目的に1989年に創られた特定非営利活動法人「熱帯林保護団体」(RFJ)スタッフによる現地往訪記と活動の紹介。同団体の南 研子代表による『アマゾン、インディオからの伝言』『アマゾン、森の精霊からの声』がすでに同じ出版社から出ているが、著者は大学院生時代の2004年からRFJに参画し、現在も専従スタッフとして活動を続けていて、すでに7回現地へ南代表とともに赴いている。

 熱帯雨林の残る保護区の境界線にまで牧場や農場開発が迫っていて、森とともに生きる先住民の生活を脅かしている。先住民の抗議運動への関わり、インディオ長老の日本招待、開発とともに頻発するようになった山火事の実態、電力不足への対策としてブラジル政府が計画しているベロ・モンチ水力発電計画への反対署名活動、経済自立のためFUNAIが始めた養蜂への支援などの現地活動の様子を紹介し、活動を通じての問題点などを明らかにしている。〔桜井 敏浩〕
                              

〔(社)ラテン・アメリカ協会 Webサイト「掲示板」→「図書案内」に収録〕

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開高健とオーパ!を歩く』 
 

菊池 治男 河出書房新社 2012年2月 222頁 1,800  円+税

   

1977年から78年にかけて集英社から出ている『月刊プレイボーイ』に連載された小説家開高 健のアマゾン、パンタナール釣りルポルタージュに、入社3年目の著者は開高健担当の編集者として65日間同行した。気鋭の若手写真家も同行して、当時としては空前のスケールの旅のノンフィクションは評判となり、多くの写真とともに綴られた大判単行本はかなり売れ、その後開高健による釣魚旅行はアマゾンの再訪やアラスカ、カナダからコスタリカ、スリランカ、モンゴルへとシリーズ化された。

この1977年の旅を、編集者が同行して見た小説家開高健との旅の記憶、その後十数年にわたった日本や海外への旅などを通じての開高健の言動や姿の記憶、33年後に著者があらためてブラジルを訪れている記憶を綴ったのが本書である。羽田空港からニューヨークで乗り換えリオデジャネイロ経由サンパウロに着き、一行はブラジル在住の作家醍醐麻沙夫氏の出迎えを受け、東京とシンガポールとほぼ同じ距離があるベレンへ飛び、マラジョ島を訪れ、アマゾン河を遡航してサンタレンで約3週間のアマゾンでの釣りに耽った後、陸路クイヤバへの街道を南下してパンタナールに入り、ドラド釣りに挑戦する。

2週間の滞在後ブラジリアへ寄ってサンパウロから帰国した。この間の様々なエピソード、鋭い観察眼と特異な表現力で不思議な魅力をもつ小説家の言動などが盛り込まれており、釣りを中心にした海外紀行文学を創りだし、多くの読者を魅了した開高健という作家の魅力をあらためて知らしめてくれる。〔桜井 敏浩〕 

〔(社)ラテン・アメリカ協会 Webサイト「掲示板」→「図書案内」に収録〕


 

ブラジルに流れる「日本人の心の大河」
 

丸山 康則 モラロジー研究所発行、廣池学園事業部発売 2011年12月 303 頁 
1,700円+税


前著『ジャポネーズ・ガランチード -希望のブラジル、日本の未来』(2010年同所発行) 等に続く、ブラジル日系人、日本のブラジルとつなぐ施設・組織の訪問記。

著者は国鉄勤務を経て横浜国立大学、麗澤大学で交通心理学などを講じた後、2005年以来ブラジルを訪れて、各地で日系人を訪ねてその感銘を著している。

今回は、パラ州のベレン、トメアスなどのアマゾンに入植した移民の奮闘の記録、胡椒栽培の挫折からアグロフォレストリーに活路を見出した篤農家などを、南部のサンタカタリーナ州で林檎栽培を劇的に改良した日系農家、リオグランデドスル州ポルトアレグレの老年医学研究所で多くの人材を育てた医師、サンパウロでの様々な分野で活躍した人達や、稲森盛和塾長(京セラ創業者)に師事するブラジル盛和会の活動、首都ブラジリアでセラード農業開発に挑戦する日系人などを訪ねる。 そして日本では、鐘紡創業者で私財を投じて大阪に國民會館建て、南米拓殖会社の設立にも携わった武藤山治氏の業績に触れ、多くの南米移民を送り出した神戸の旧国立移民収容所を、山形県鶴岡市で世界でも有数のアマゾンの民俗資料コレクションを持つアマゾン民族資料館を立ち上げた山口吉彦氏を、最後に日系ブラジル人等外国人子弟において、「鈴鹿モデル」といわれるほどになった鈴鹿市の元教育長を訪ねている。

開拓、連帯、創造、忍耐、人を育てる力を発揮し、名もなき人々による「常民文化の日本」の姿を、ブラジルの日系人との出会いの中で見つけようとする著者の熱意が感じられる記録。 〔桜井 敏浩〕
 

〔(社)ラテン・アメリカ協会 Webサイト「掲示板」→「図書案内」に収録〕
 

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ブラジルを識る100キーワード  “100 palavras para conhecer melhor o Brasil”

ブラジル連邦共和国政府 文化省 編集主幹:アルナウド・ニスキエ 2011年318頁 非売品

2008年の日本人ブラジル移住100周年を記念して、アンドレ・アマド駐日大使(当時)の発案で、日本人のブラジルの理解を深めるための基本的な事項解説書を日本語・ポルトガル語対訳で刊行することになり、BNDES(国立経済社会開発銀行)やブラジル銀行の後援を受けて実現にこぎ着けたのが本書である。

ブラジルの多様性と風俗、習慣、文化の潤沢さで示す100のキーワードを、シセロ・サンドロニ ブラジル文学アカデミー会長はじめ各界の著名な識者が執筆している。内容としては、歴史、自然環境・開発、文学・芸術、民俗・文化、現代社会とブラジル人とは?などに大別されるが、まさしくブラジルの多様性と統一性を同時に達成し、人種・文化の混淆性、多彩な地域主義を網羅している(三田千代子 上智大学教授の出版記念会での解説)。

ブラジルの奥深さを、贅沢な執筆陣がそれぞれの蘊蓄で記述していて、各項毎の扉写真も装丁も素晴らしいが、ブラジルの文化、社会にある程度通じた者でないと理解が難しいかもしれない。〔桜井 敏浩〕

                       


駐日ブラジル大使館では、余部がある限  り 配布可能としているので、入手希望は大使館文化広報部 brasemb@brasemb.or.jp へ照会を

〔(社)ラテン・アメリカ協会 Webサイト「掲示板」→「図書案内」に収録〕

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日本小百科 ブラジル語版 “JAPAO MINI ENCICLOPEDIA DO JAPAO
 

日本・ブラジル文化交流実行委員会編・刊 2011年3月 264頁 非売品

 

日本人ブラジル移民100周年を機に、これからの日本・ブラジル関係を担う日系を含むブラジル人子弟に、日本についての正しい理解を深めてもらうために作られたブラジル語版「子どものための日本小百科」。

日本について、概説、地理、歴史、文化、産業、暮らし、歳事から遊び、食べ物、地方毎の様子や特色などに至る項目を、簡単な説明と多くのカラー写真で、分かりやすいように編まれている。

実行委員会有志の尽力で企業等からの協賛と、国際交流基金の一部助成などを受けて1万部刷り、9千部がブラジルに送られて在ブラジル日本大使館・総領事館などから学校や公的機関に配布されたという。

日本においても、特にブラジル人集住地域の学校や図書館、地方自治体などに置けば、大いに有用な図書であるが、日頃ブラジル人と接する機会がある内外在住の日本人にとっても、日本のことを説明する上で大いに役立つだろう。

入手は、(社)日本ブラジル中央協会が実行委員会に協力して頒布しているので、協会事務局へメール、Faxで。頒布価4,000円(実行委員会・協会への寄付、協会事務手数料および日本の国内送料込み http://nipo-brasil.org/siryou.htm 〔桜井 敏浩〕
    

〔(社)ラテン・アメリカ協会 Webサイト「掲示板」→「図書案内」に収録〕

 

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大アマゾンを翔る』   

大野 義明 栄光出版社 2011年6月 279頁 1,500円+税

1961年に23歳で技術者としてブラジルに移住、5年間滞在し、その後一旦帰国したが1967年に再度ブラジルに渡って、以後約20年余のブラジル・フォルクスワーゲン(VWB)勤務をはじめ、GM、フォード、クライスラーと自動車産業で働いてきた著者によるブラジル渡航と仕事や生活の記憶。

「長く現地で暮らした著者が綴った日本人の知らないブラジル」と表紙に副題があるが、アマゾンについての記述は旅行やVWBが経営した大牧場訪問、金採掘ラッシュなどごく一部で、最初の渡航と帰国、二度目の船旅の詳細な記録が半分近くを占める。その他、ブラジルでの仕事とVWBでのQC運動担当時のアルゼンチン、チリ出張の思い出、ブラジル人の生活ぶり、日本人と大きく異なるブラジル人気質と比べた最近の日本人の意識・発想に対する私感なども交えた雑感記。 〔桜井 敏浩〕
   

〔(社)ラテン・アメリカ協会 Webサイト「掲示板」→ 「図書案内」に収録〕

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現代ラテンアメリカ経済論

西島 章次・小池 洋一編著 ミネルヴァ書房 20011年4月  279頁 3,500円+税

  
開発途上国の中でも最も早く、最も徹底して市場経済化とグローバル化、経済の新自由主義改革を試みたラテンアメリカの多用な問題と政策を、12人のラテンアメリカ研究者が総合的に解説している。変貌する経済の発展過程と今日的課題の導入部から、グローバリゼーションを市場自由化、マクロ経済問題、金融、地域統合やFTA戦略から考察し、産業と企業の発展、資源輸出の増大、農業産品輸出、開発にともなう環境保全の問題、貧困と所得分配の不平等、社会保障・扶助政策への取り組み、地方分権化の進展と課題、経済自由化政策が多くの左派政権を誕生させた政治変化を論じ、最後にラテンアメリカのポストネオリベラリズムの課題を提起している。

各章の冒頭に要旨を整理して掲げ、多くの図表やコラムによる事例や事項解説、巻末の基礎統計、年表なども理解を助ける構成になっており、この1冊を通読すれば、現代ラテンアメリカ経済開発の構造と問題、課題とそれを克服しようとする政策が概観出来る。  〔桜井 敏浩〕
  

〔『ラテンアメリカ時報』 2011年夏号掲載 (社)ラテン・アメリカ協会発行〕

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ブラジル日本人移民百年史 第三巻 生活と文化編(1)

ブラジル日本移民百周年記念協会・ブラジル日本移民百年史  編纂委員会編 風響社 2010年12月 638頁 8,000円+税

   

2008年の日本人ブラジル移住100周年を記念して、1世紀にわたる日本移民の体験・経験を後世に残す全5巻と別巻1の『ブラジル日本移民百年史』が編まれている。本書は、その第3冊目として、これまでの移民史では周辺的な位置づけであった生活の営みと文化を取り上げている。

日系ブラジル文学史(細川周平)、日系メディア史(深沢正雪)、ブラジルにおける子弟教育(日本語教育)の歴史(森脇礼之・古杉征己・森幸一)、ブラジル日本移民の女性史(中田みちよ・高山儀子)、ブラジル日本移民・日系人の食生活と日系食文化の歴史(森幸一)の5章と地図・年表、索引、写真・図表一覧から構成されている。記述はサンパウロ州・市が中心になっているが、可能な限り各地の事情も言及しており、それぞれの章の内容、質、量とも極めて充実した労作揃いであり、画期的な歴史文献と評価されるべき移民史料である。 〔桜井 敏浩〕

    
〔『ラテンアメリカ時報』 2011年夏号掲載 (社)ラテン・アメリカ協会発行〕

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ブラジルにおける経済自由化の実証研究』 

西島 章次・浜口 伸明   神戸大学経済経営研究所 2011年3月 159頁 非売品

 

1980年代のブラジルといえばハイパーインフレーションと対外債務累積問題をかかえる国、政府が経済や産業に介入し、自国産業の保護を行っている国という記憶が強いが、1990年代の経済改革によって、市場メカニズム重視の経済政策に劇的に転換し、貿易、資本の自由化を行い、公営企業の民営化、規制緩和、金融改革を実行し、為替の変動相場制に移行したことが、資源輸出の拡大と相俟って近年の好調な経済を実現したことの基盤になっている。

本書はブラジルの経済改革と貿易自由化の効果を経済成長との関係、生産性と産業賃金への影響、国内人口移動と成長地域、事例としての砂糖黍産業における機械化と雇用、そしてインフレ収束にともない爆発的に拡大した国内市場の姿を自動車需要から消費者金融の役割を分析した、計7本の研究論文から構成されている。

資源輸出の拡大と旺盛な国内市場の拡大を背景に、世界的に注目を浴びているブラジル経済のパフォーマンスが、今後も継続出来るのか? 社会的公正を担保した経済成長を実現出来るのか? その制約はどこにあるのか? という問題意識の基としての優れた実証研究の試みであるが、非売品であり大学等の図書館でしか見られないのは残念であるが、幸い神戸大学経済経営研究所のサイトから、全編のpdfファイルが閲覧出来るようになった。 〔桜井 敏浩〕

   
〔(社)ラテン・アメリカ協会 Webサイト「掲示板」→「図書案内」に収録〕

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ブラジル人生徒と日本人教員の異文化コミュニケーション

西田 ひろ子編著 風間書房 2011年2月 245頁 2,800円+税

 

日本有数のブラジル人集住地域の一つである静岡県西部で暮らし、日本の公立学校やブラジル政府認可・非認可のブラジル人学校に通っている児童生徒を対象に調査データを収集し、児童や教員、保護者や、周囲の養護教諭、日本人ボランティア、日系ブラジル人通訳たちがどのような問題を抱えているかを整理し、異文化間コミュニケーション問題解消のためのトレーニング・プログラムを提示している。

児童たちの日本語習得の難しさ、学科や生活面での悩み、教える教員の児童や保護者と接する中での問題、ブラジル人保護者の学校への要望など、様々な面からの調査を整理した結果を示しており、問題の所在を詳細に明らかにしている。最後にそれら質問票・インタビュー調査結果を踏まえて、ブラジル人と日本人が互いに理解を深めるためのトレーニング・プログラムの具体例を示して提案している。

まだまだ身近にある異文化への想像力と包容力が乏しい日本社会と、そこで生活し教育を受けるブラジル人たちが日本のルールを知らないことで起きている、教育現場での行き違いの実情を理解する上でも有用な調査報告である。 〔桜井 敏浩〕
                   

〔(社)ラテン・アメリカ協会 Webサイト「掲示板」→「図書案内」に収録〕

 

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南アメリカの街角にて -青春随想録』 
 

和田 進 東洋出版 2010年10月 290頁 1,600円+税

 

著者は石川島播磨重工業(現IHI)で32年間海外業務に就いたが、うち2年間をレシーフェでのポルトガル語研修とリオデジャネイロでの同社の合弁事業ISHIBRAS造船所での研修を体験した。2005年に退職後、港湾設備関連会社を立ち上げるとともに、自分史の一部としてかつて滞在したブラジルの実情と南米の素描をあらためて多くの文献を読み解き纏めたものである。

冒頭の「南アメリカなるもの」では、多様な自然環境によりいくつもの顔をもつ大陸として、長い植民地時代を経て独立し、ラテンの血を主に多くの人種と言語、文化と社会の多様性をもっていることを概説している。次いで「ブラジル、その日々」でポルトガル語勉強の体験、住んでみて見えてくるブラジル人の気質、人々の人生の一部になっているサッカーへの情熱、日系社会の状況と、レシーフェ、リオ、サンパウロ、サルバドール、ポルトアレグレ、ベロオリゾンテ、ブラジリア、マナウスの主要都市を紹介し、著者なりに秩序ある混乱の国ブラジルを素描している。後半の「南アメリカ諸国紀行」は、ベネズエラ、コロンビア、エクアドル、ペルー、ボリビア、パラグアイ、チリ、アルゼンチン、ウルグアイ各国の歴史、文化、現状とそれぞれの問題などを詳しく解説している。

南アメリカの知られざる側面を日本で紹介したいと、丹念にラテンアメリカ関係図書(2005年までに発行されたもの)を読破し、整理したもので、南米の概要を知るための入門書としては分かりやすくよく網羅している。〔桜井 敏浩〕

                      

〔(社)ラテン・アメリカ協会 Webサイト「掲示板」→「図書案内」に収録〕


ポ日英医学用語辞典
 

セルジオ・隆三・土肥編著 二宮正人編訳 2010年1月 サンパウロ 861頁


医学術語を3カ国語で引ける用語辞典。収録総語数約2万語で、ポルトガル語から日本語・英語が出る第1部“Vocabulários de A a Z”(627頁)と日本語からポルトガル語を引く第2部“Glossário” (230頁)から成る。日本語にはすべて漢字とローマ字を並記し、難しい術語も読めるのは便利である。

ブラジル在住で40年前に肝臓移植をやり遂げた土肥医学博士が、10数年間にわたってにこつこつと編んだ3カ国語辞典を、博士の急死後に遺族の懇請で弁護士である訳者が止むにやまれず後を引き受け、全面的に見直して新用語を取り込み、編纂、監修を行ったもので、「編者はしがき」に述べられているように、出版に至るまでは大変な困難がともなった労作である。編訳者は、CIATE(国外就労者情報援護センター)理事長をはじめとして、在日ブラジル人就労者に対する支援活動を長く行っているだけに、それら日本語が十分出来ない人たちにも使いやすい工夫がなされており、日本あるいはブラジルで医療・保健や介護等の分野で仕事をする人たちにとって大いに有用な辞典といえる。〔桜井 敏浩〕
 

(社)日本ブラジル中央協会で受託販売中  9,000円(税込)+送料。 
申し込みは同協会事務局
 

〔(社)ラテン・アメリカ協会 Webサイト「掲示板」→「図書案内」に収録〕

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ブラジルの人種的不平等 -多人種国家における偏見と差別の構造

 

エドワード・E・テルズ 伊藤明仁・富野幹雄訳 明石書店 2011年1月 452頁 5,200円+税

  

近年の研究で米国等の同じ移民国家と比較して、人種差別はないといわれてきたブラジルでも、いろいろな形で人種問題を抱えていることが明らかになってきた。

米国プリンストン大学教授で、サンパウロ州立カンピーナス大学、バイア連邦大学で研究したこともある社会学者が、米国の人種問題の構造と比較しながらブラジルの人種問題の特質を分析している。白人至上主義から人種民主主義、人種民主主義からアファーマティヴ・アクション(積極的差別是正措)の構築への推移、人種の分類、人種的不平等と発展、人種差別について論じ、異人種間の婚姻、

居住地の分離という現代社会が抱える問題を指摘して、ブラジルの人種関係の再検討を行った後に、差別問題解決のために適切な政策立案を提言している。 〔桜井 敏浩〕


〔『ラテンアメリカ時報』 2011年春号掲載 (社)ラテン・アメリカ協会発行〕
 

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ブラジルの流儀 -なぜ「21世紀の主役」なのか

 

和田 昌親編著 中央公論新社(中公新書) 2011年2月 252頁 820円+税


ブラジルがハイパーインフレ、対外債務問題などを抱える"経済破綻の国"であったのは、つい10余年前までであった。それが今や21世紀の勝ち組といわれるまでに成長し、風格ある大国に生まれ変わろうとしている。では「ブラジルはどういう国なのか?」 人によって様々な「なぜ?」が知りたいが、本書は国民性を知るうえでの社会・生活から始まり、日本とは異なるビジネス常識を知るための経済・産業、ブラジル流とは?を知るための文化・歴史的背景、ブラジルといえばサッカー、その強さの秘密、そして途上国と先進国の両方の顔をもつ独特の政治・外交に至るまで、67の「なぜ~なのか?」という設問に対して筆者(元日本経済新聞サンパウロ特派員、国際担当常務等歴任)なりの答えを挙げている。

ブラジルにある程度通じた者でも専門家でもすぐには答えられないテーマ -それには堅いものだけではなく、ブラジルへ行き、生活すれば身近に転がっているような疑問も多く含まれているが、それらを解いていくことによって「ブラジルの流儀」をあぶり出すことを意図している。それぞれのQ&Aと4つのコラムを面白がって読んでいくうちに、知らず知らずにブラジルの実態への理解が進む好読本である。
〔桜井 敏浩〕

 

〔『ラテンアメリカ時報』 2011年春号掲載 (社)ラテン・アメリカ協会発行〕

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